竜の神様、ようやくご機嫌。
早く許して、俺の髪を結べ!って神様に言われる私‥。
龍の神様、言の葉の神様、なぜ私はこんな目に遭っているのでしょう?朝から頭が痛いのですが‥。
オミさんはなかなか許さない私を歯噛みして見ていたかと思うと、
急に立ち上がった。
「オミさん?」
「お前、飯食っておけ!!すぐ戻るから、ここに絶対いろ!!」
「え、ええ??」
力を使って、パーカーとパンツの姿に変化したオミさんは昨日私がプレゼントした財布を掴むと、長い足をドスドスと勢いよく動かして出て行ってしまった‥。
え、
どこに行くの?
っていうか、私から離れても大丈夫なのか?
昨日離れたが為に、襲われたんですけど‥。まぁ、家の中なら大丈夫か?そう思って、朝食のパンを食べるけど‥。
どこ行ったんだろう。
何しに行ったんだろう。
相手は神様だし、子供みたいだけど大人だし、大丈夫。きっと大丈夫‥そう思うんだけど、パンを咀嚼する音が響く頭の中で、迷子になるとか、どっかで喧嘩してるとか、何かに巻き込まれてるみたいな姿しか思い浮かばなくて、パンの味がしない。
「「嗚呼、もぉおおお〜〜〜!!!!」」
勢いよく立ち上がって、部屋の鍵を掴んで急いで外へ行ってオミさんを探そうと玄関のドアノブに手を伸ばした途端、扉が勢いよく開く。
「あ、テメェどこ行こうとしてんだよ!!」
「へ?」
顔を上げると、息を切らせたオミさんが目の前に立っている。
無事に帰ってきた‥。
思わずホッとした私に、オミさんは私の顔の前にビニール袋を突きつける。
「「もう一回勝負だ!!!」」
「‥‥何を?」
オミさんは私に触れないので、こっちへ来いと靴を雑に脱ぎ散らかしてベランダへ私を呼ぶ。
もう、忙しいのになんだよ〜〜。
私は無事に帰ってきてホッとしたし、朝食を安心して食べたいのに‥。
オミさんは、ビニール袋からシャボン玉セットを出して、急いでパッケージを破り捨てて私に一つ差し出す。
「「長くシャボン玉残せたら、許せ!!」」
いきなりストライク来た。
っぐ‥!!!
可愛いなって思っちゃったじゃないか。
思わず口を噤んだまま、オミさんを触らないようにそっとシャボン玉に手を伸ばすと、オミさんが嬉しそうに笑うのでツーストライクだった。まずい、あともう一回ストライクだけは貰わないようにしないと。
ベランダを開けて、オミさんが裸足で出ると大きな指でそっと蓋を開けて、吹き棒をそっと液につけている。
「ほら!青葉、勝負だ!!」
「え、これ何回勝負ですか?」
「「俺が勝つまでだ!!」」
「ズルい!!神様なのにズルい!!!」」
私がそう言うと、オミさんはニヤッと笑ってそっとシャボン玉を吹こうとするので、私も慌ててシャボン玉を「せーの‥」と言う掛け声で、そっと吹く。
朝陽に照らされて、私とオミさんのくシャボン玉が空に飛んでいく。
なかなか綺麗だなぁと、見ていると‥
私のシャボン玉が先にパチンと割れて、
オミさんのシャボン玉がふわふわ飛んで、向かいの電信柱の手前で割れた。
あ、オミさんが勝った。
オミさんは嬉しそうな顔をして、シャボン玉を指差して私を見る。
「「見たか、青葉!!」」
「はいはい見ましたよ」
「「俺が勝った!!だから‥」」
「はいはい、許しますよ」
「そうだ、許せ‥ん?許し、許す?」
混乱してるぞオミさん。
ぷっと吹き出すと、オミさんはあれ?とちょっと考えている。
「オミさん、許しますよ。お仕置きはおしまいです」
そう言うと、オミさんの体からパチンと音がする。
‥えーと、術が解けたのかな?
私はオミさんを見上げると、オミさんは自分の体をまじまじと見て、それから私を見る。そうして、ニヤリと笑うとシャボン玉の吹き棒をもう一度液につけて、今度は私に勢いよく吹き付ける。
「「こ、こら!!!いきなり何するんですか!!」」
「へっ、勝ったぞ!!青葉!!」
「わかってますよ!!!」
私も悔しいので、オミさんに勢いよくシャボン玉を吹き付けてやった。
負けてたまるか!!
‥結局、シャボン玉の液がなくなるまで、吹き続けた為に朝の登校時間がギリギリになったけど、オミさんは私に髪を無事(?)結んで貰って、大変ご機嫌だった‥。




