竜の神様、許しを請う。
スマホのアラームが鳴って、目をそっと開ける。
「朝、か‥」
スマホをタップしてから、ムクッと久々に床の上で寝ていた私は顔をあげると、オミさんがローテーブルに頬杖をつきながら私をじっと見ている。
朝陽を浴びつつ、こちらを見る神様‥。
なんか朝から面白いな。
「‥おはようございます」
「おう、早く許せ」
「朝一番の挨拶がそれか」
「守るのに、不便だろ!」
「ドライヤーで髪をちゃんと乾かしてくれるし、すぐ起きれていいんで不便ではないですね」
私がそう言って、寝袋から出てくるけどオミさんはそれを聞いて、ブスッとして私を睨むように見ている。朝からメンチを切らないでくれ‥。
今日は早く起きれたし、お弁当作れるな。
ちょっと伸びをしてから、寝袋を片付けて身支度してから朝ご飯を作る傍ら、簡単にお弁当を作る。ウインナーと卵焼きと冷凍のほうれん草をチンして、ちょっとめんつゆで和えた。十分な出来だ。
適当なタッパーにオミさんはご飯を多めに詰めておくと、まじまじとお弁当を見る。
「‥なんだこれ」
「お弁当です。パン代も高くつくし、作って持っていった方が安いですから」
「‥‥弁当」
ボソッと呟くオミさん。
なんだ?中身に文句あるの?フライパンを洗ってからオミさんを睨もうと、シンクから顔を上げると、オミさんはちょっとニマニマしながらお弁当を見ている。
なっ。
なんだ、その顔。
思わず口をポカンと開けてオミさんを見ると、オミさんは私の視線に気付いて「アホヅラ」って言うので、ギロッと睨んだ。一瞬、可愛いと思ったのに‥相変わらず口が悪い!
「‥オミさん用に野菜をもっとたっぷり入れれば良かった」
「肉だけでいいぞ」
「ダメですよ!メタボまっしぐらです」
「メタボ?」
「体に良くないって事ですね」
「‥‥‥ふーん」
なんだ、その「ふーん」は?
お弁当を包んで、ただの白いバッグに私とオミさんのお弁当を入れる。よし、準備完了!!
「じゃ、オミさん朝食食べたらすぐ行きますよ」
急いで行かないと!そう思って、振り返るとオミさんがローテーブルの前でブスッとしつつ、
「‥髪やれ」
「「ああもぉおおお!!!」」
触れないでしょうに!!
自分でやるんだってば〜〜!!
「ほら、許せばすぐ髪も結えるぞ」
「「自分でやるんです!!はい、髪ゴム!私がやってみるから、真似して下さい」」
「はぁああ??なんで俺が?!」
「それはこっちのセリフです!!ほら、見て!」
そういって、私がオミさんに背中を向けて髪を上に搔き上げる。
オミさんは急に静かになって、私をじっと見ているのか首元になんかすごい視線を感じて、ちょっと照れ臭い。
「オミさん、見てます?」
「‥見て、る」
「真似、するんですよ?」
「‥‥分かってる」
上の方で一つに束ねて、髪ゴムを指に引っ掛けて、クルリと髪に絡めるように結ぶ。なるべくゆっくりやって覚えてもらおう。「こうして、引っ張りつつやるんですよ?」って言って、私はポニーテールにする。
ちゃんと見てたかな?
やったかな?
クルッと後ろを振り返ると、オミさんは未だ髪を下ろしたまま目元を赤くして、私の方をじっと見ている。
「‥なんでやってないんですか?」
「できない!!だから、許せ!!」
そう言って、プイッと横を向くオミさん。
も〜〜〜!!!この神様はなんて手が掛かるんだ!!
でっかい体は飾りなのか?!中身が子供じゃ困るんだけど‥。
「シャボン玉でも負けたのに‥」
「次は勝つ!!!やり方を知らなかっただけだ!」
負けた‥というワードに、グリッとこっちを向いて悔しそうにするオミさん。
そういえばこの人は一体いくつなんだろう。
「‥だから、許せよ‥」
悔しそうに口を尖らせていじけるオミさんが、なんか可愛い‥。
そう思ってしまう私は相当絆されているのかもしれない。思わず無言になってしまうと、「はやくしろよ!」ってクレームが入った。え〜〜〜、強制されるものなの??




