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第89話 ガーデンフレイ辺境伯領

ウィルが特別中立領改めガーデンフレイ辺境伯領の領主になってから2ヶ月が過ぎていた。

ガーデンフレイ辺境伯領はマクグラン王国の南東部にあった旧フライヤー伯爵領とボルケニア帝国の南西部にあった旧カーチス侯爵領の一部から成っている。

領地面積は約2200平方kmで、これは東京都の面積とほぼ同じである。

領地内には領主直営の農村や漁村が6つと城塞都市が3つあり、それらを合わせた総人口は約10万人である。

領地の地形的な特徴としては東部にシチリーン火山の火山性地滑りによって出来たアミヤキ谷と呼ばれる地熱地帯、西部にクリスプ半島の付け根部分に広がる牧草地帯、南部にテムズ海を臨む海岸地帯、北部にポテット山の裾野に広がる森林地帯、そして中央部にはテッパー平野が広がっていた。

領地の規模としては、マクグラン王国の貴族の平均的な領地面積が約7000平方kmで平均人口が約100万人である事を考えるとその経済規模はかなり小さかった。


ウィルは割譲式の後、色々あって南部の海岸地帯にある人口1000人程の漁村をフレイと改名し、そこの古びた洋館に居を構えていた。

ここは、洋館にあるウィルの書斎。

ウィルはフライヤー争乱後に王宮騎士団を辞めて家臣となった財務担当のクリフから領地の租税に関する調査報告を受けていた。

「…という訳で、人頭税、地代、施設使用料やその他の名目を全て合わせて、直営の農村や漁村からの1年間の税収見込みは白金貨12600枚で、これに城塞都市からの1年間の上納金の見込みである白金貨13600枚を足しますと、ガーデンフレイ辺境伯領の1年間の歳入見込みは白金貨26200枚となります。」

「なるほど、報告ありがとうございます。それにしても、人口の9割が城塞都市に集中してるのに上納金が随分と少ないですね?」

ガーデンフレイ辺境伯領の人口分布は、領主直営の6つの農村や漁村を合わせて約1万人なのに対して、西部の城塞都市タツタが3万人、東部の城塞都市ライタが4万人、北部の城塞都市ポテコロが2万人と3つの城塞都市に人口が集中していた。

城塞都市とは領主から特許権を与えられた自由市民ブルジョワが自治している町の事で、領主はそこで集められた税収の一部を上納金という名目で徴収していた。

「はい。フライヤーは召喚魔法の研究資金が足りずポテコロとタツタの名主に借金をしていた事もあり、その穴埋めの為に上納金は税収の1割に設定していたようです。

ライタは、そこの名主がボルザード叔父…カーチスと妾との間に出来た息子という事もあり、色々と優遇していたようです。こちらも上納金は税収の1割に設定されています。このおかげもあってかそれぞれの城塞都市の名主やその取り巻きは相当潤っているようです。」

「ずぶずぶだった訳ですね。」

「ウィル様、何故城塞都市を直営にしないのですか?特許権はウィル様が領主になった時点で失効しているはずです。直営にすればそれら3つの町からの税収は白金貨136000枚になりますので財政も潤うと思うのですが?」

「それは新参者がいきなり直営にするって言っても反感を煽るだけですし、今すぐ直営にしても手が回りませんよ。それにこの間挨拶回りした感じだとどの名主も俺に良い印象は持ってなかったようだし、今の所はそっとしておきましょう。」

「あんな礼儀も知らない馬鹿な名主どもに気を使われなくても良いと思いますよ!」

ウィルは割譲式の前にミツハと共に城塞都市の名主に挨拶回りをしていたが、どの名主からも良い反応は得られず、それどころかミツハが怒りのあまり剣を抜くほどに冷たく遇らわれていた。

また、ウィルが辺境伯になっても挨拶に訪れる訳でも祝辞を送って来る訳でもなく、挙げ句の果てにクリフの税務調査に対しても非協力的だった。

「ははは、それよりさっきの話だと直営も城塞都市も労働人口の割合は総人口の7割だと言ってましたけど、年代別で見ると直営の農村や漁村の方が若年層の割合が少ないですね?」

「はい。やはり収入の少なさが影響しているのだと思います。先立つものが無ければ子を持つ事も出来ませんからね。必然的に労働人口に占める若年層の割合も減る訳です。」

「なるほど、少子高齢化が進んでるという訳ですね。税率は直営も城塞都市も収入の6割ですよね?」

「はい。直営と城塞都市では徴収名目が異なりますが、全て合わせると大体収入の6割を税として徴収しています。それと、これとは別に10分の1税があります。」

10分の1税は教会が徴収する税金で領地内の住民から収入の10分の1を徴収する事からそう呼ばれていた。

教会はこの資金を元手に教会の維持や布教活動を行ったり、時には貴族に貸したりして裏で操っていた。

「そうすると収入の7割が税金ですか…。高いですね。10分の1税は今度カルデに相談するとして、とりあえず直営の農村と漁村の税割合は3割以下になるように見直しをお願いします。城塞都市はその反応を見てから検討しましょう。」

「さ、3割ですか!?マクグラン王国の平均でも5割ですよ!それでは税収がかなり減ってしまいますが宜しいのですか!?」

「今は直営の農村や漁村の少子高齢化対策が優先です。それに税割合が減れば他の領地からの移民も期待出来るでしょうし、そうすれば税収も増えてきますよ。」

「は、はあ…。承知致しました。」

ウィルとクリフが話をしていると扉をノックする音がして、アリスが部屋に入って来た。

「ウィル様、クリフさん、お昼ですよー。」

アリスはウィルが新調した、どこぞのカフェの店員が着ている様な、胸が強調されたメイド服を着ていた。

「あっ、もうそんな時間だったんだ。クリフさん、続きはまた今度にしてご飯を食べに行きましょう。」

「はい。」

「ほら、皆さん食堂で待ってますよ!」

ウィルがアリスに引っ張られながら食堂に入ると、そこには大きな楕円形のテーブルを囲むように皆が座っていた。


ここで改めてガーデンフレイ辺境伯領の愉快な仲間達の紹介である。

「ウィル、いつまでアリスと手を繋いている?早くここに座れ。」

風の神カルデ。

マクグラン王国を加護する女神。ウィルがガーデンフレイ辺境伯になった事であまり会えなくなると思い、勝手にウィルの館を自分の別邸に指定した挙げ句、相談役を名乗り居座っている。

マクグラン城には分身体を置いてそちらが本体だと周囲には言い張っているがウィルとグリドールにはバレている。

「カルデ様だって昨日ウィル様と手を繋いでたじゃないですか!?というか、何で居候のカルデ様が主人席に座ってるんですか!?」

アリス・ミラーズ。

元サウストン伯爵家のメイド。今はサウストン伯爵家のメイドをやめて、ウィルの世話役兼ガーデンフレイ辺境伯家の従者長として仕えている。

最近、ウィルに新調してもらったばかりのメイド服の胸の部分がキツくなり困っている。

「アリス、落ち着いて下さい。また胸のボタンが飛んでしまいますよ。ちなみに手じゃなくて、か、顔を踏むのは問題ないですよね?」

ミツハ・クロロッソ・マッカラン。

マクグラン王国王宮騎士団筆頭騎士。今は出向という形でウィルの護衛役として仕えている。というのは表向きの理由で花嫁修行をする為にやって来た。

夜な夜なウィルの寝室に忍び込んでは寝ているウィルの顔を踏みつけて快感を味わっている。

「ミツハ様、ご主人様の顔は踏んだらダメなんだよー!この間、学校の先生がやるなら顔じゃなくてボディにしときなって言ってたよ?」

マロン・キュリアス・キャスタニー。

ウィルがポテパで出会った少女。今はガーデンフレイ辺境伯家のメイド見習いとして仕えているが、ウィルには実の妹のように可愛がられている。

最近通い始めた小学校では早くもマドンナ的なポジションに着き、変な虫が付かないかとウィルを心配させている。

「マロン嬢、そりゃあ喧嘩する時の話ですぜい!俺っちが若ぇ時は喧嘩はボルケニアの華って言ってな。そりゃあ派手にやったもんだ!」

ゲント・モーリス・ダイクーン。

元アルティーネ子爵家お抱えの大工。ボルケニア城の修復工事の責任者をしていたが工事が早く終わり、残り短い人生でもうひと花咲かせたいとアルティーネ子爵家を辞め、建設担当としてウィルに仕える事になった。

「親方、誰も話聞いてねぇです。あー、腹減った!ウィルの旦那、早く食いましょうよ!」

ムスク・ギャン・ヘイルマン。

元オグニイーナ神殿騎士団員。ボルケニア内乱で処罰を受け、ボルケニア城の修復工事の強制労働を課されていたがいつしか一流の職人であるゲンに憧れを抱くようになり、ゲンの一番弟子となった。

今は建設副担当としてウィルに仕えている。

「ムスク、つまみ食いをするんじゃない。まったく行儀の悪さは神殿騎士の頃から変わらないな。…むっ?これはピーマンとニンジンか…。」

オルトレット・モルゴース・ウィリアム。

元オグニイーナ神殿騎士団長。ボルケニア内乱で処罰を受けたもののトーマスの働きかけにより、ウィリアム伯爵家の爵位の没収は免れたが自ら爵位を甥に譲り、恩人であるトーマスからの弟を支えて欲しいとの言葉に応え、今は軍事担当兼ガーデンフレイ騎士団長としてウィルに仕えている。

「団長、さりげなくピーマンとニンジンをワタシのお皿に避けないで下さい。好き嫌いはダメですよ。」

ミレーヌ・アレミラ・ウィリアム。

元オグニイーナ神殿騎士団副団長。ボルケニア内乱後、オルトレットと結婚し妻となる。

オルトレットと共にウィルの家臣となり、総務担当となった。

未だにオルトレットを名前で呼べず団長と呼んでいる。

「ミレーヌさん、まだ名前で呼べないのかい?初々しいねぇ。あー、アタシもイイ男いないかなぁー。」

アスティ・クリープ・ベイルマン。

元フライヤー伯爵屋敷の警備兵。ウィルに命を救われ玉の輿に乗ろうとやってきたが、カルデをはじめとするウィルに好意を寄せる女性陣を見て玉の輿に乗る事を諦め館の警備責任者としてウィルに仕える事になった。

「ア、アスティさんならきっと良い人が見つかりますよ。ち、ちなみに私のここ空いてますよ!なんちゃって、あははは!」

ゴンズ・ベーリー・ボルボット

元マクグラン王国王宮騎士団員。フライヤー争乱の時にアスティに一目惚れし、王宮騎士団を辞めて追いかけてきた。

元々、実家がこの辺りで農業を営んでいた事から農産担当としてウィルに仕える事になった。

「ゴンズさん、まだ諦めてないのかニャー?しつこいと嫌われるニャー?ねっ、ペルシャ?」

シャペル・ブルーム・モフリーン。

元マクグラン王国王宮騎士団員。ウィルに水産担当を探して欲しいとお願いされたゴンズから、毎日美味しい刺身が食べられると言われあっさり王宮騎士団を辞め、今は水産担当としてウィルに仕えている。

「でもゴンズさん、こないだミツハ様に顔を踏みつけられて喜んでたニャー。」

ペルシャ・ブルーム・モフリーン。

元マクグラン王国王宮騎士団員。

シャペル同様にゴンズから毎日美味しい焼き魚が食べれると言われ、あっさり王宮騎士団を辞めて、今は水産副担当としてウィルに仕えている。

「ペルシャ、それはいつですか!?あー、俺も踏まれたかったなー!」

クリフ・カーチス・モルガン。

元マクグラン王国王宮騎士団員。

フライヤー争乱の際にウィルに救われ、恩返しの為に王宮騎士団を辞め財務担当としてウィルに仕える事になった。ボルケニア内乱で失脚したカーチス元大蔵大臣は叔父にあたる。

「またクリフさんったら変な事言って、奥さんに怒られますよ。さあ、今日のお昼は今度にゃんにゃん軒のマクグラン王国1号店で出す予定の、テムズ海産煮干でダシを取った野菜もりもりラーメンですよー!」

サーシャ・サルサート・アルティーネ。

アルティーネ子爵家当主兼にゃんにゃん軒オーナー。

にゃんにゃん軒をマクグラン王国でもチェーン展開する為にウィルの館に居候している。

そのお礼に自ら厨房担当を買って出て自慢のウデを振るっている。


ウィルは席に着くとテーブルの上にあったグラスを手に持った。

「それじゃあ、良い食事を!」

「良い食事を!!!」

こうして、ウィルの食事の挨拶と共に愉快な仲間達は乾杯し、賑やかな昼食が始まるのだった。


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