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第73話 マクグラン王国

ここは、風の神カルデが加護するマクグラン王国。

国土は天地界に存在する4大陸の中でも最大の面積を誇るテームガルド大陸の中央に位置し、東に火の神オグニイーナの加護するボルケニア帝国、西に水の神トラロックの加護するイカントリ共和国、南にテムズ海、北をハーデ海に囲まれている。

人口は約1億5000万人。王都はナゲッタ。

主要産業は農林水産業、繊維産業、製薬産業などがあげられ、国内で生産される食料、衣料、薬は天地界全体で生産される約7割を占めている。

王都ナゲッタは国土のほぼ中央に位置し石造りの建物が立ち並ぶ天地界でも1、2を競う大都市であり歴代の国王の善政により人々は豊かに暮らしていた。

ちなみに、ウィルの父であるブライトが治めるサウストン男爵領は国土の南部にあるクリスプ半島のフルーリー山脈を越えた僻地にあり、王都ナゲッタからだと徒歩であれば1ヶ月以上かかる、ど田舎である。


ウィルはハーディス神教国へと向かったテスカ、アリエル、レオナルドの3人と別れ、カルデ、トーマス、ララ、ラスク、アリスの5人と共にマクグラン王国の国王であるグリドールの呼び出しに応じてマクグラン城へと来ていた。

ウィル達がマクグラン城の敷地を取り囲むように建てられた城壁の門を通り抜けると、そこには色鮮やかな花々が咲き誇る広大な庭園が広がり、少し離れた小高い丘の上にはバチカンの有名な大聖堂に塔を数本足したような巨大な城が聳えていた。

ウィル達のいる場所から城までは数百メートルは離れている。

「すごい広い庭園ですね。それにあの城ってボルケニア城の倍近くあるんじゃないですか?」

「んっ?ウィルは初めて来たのか?」

「いえ、小さい頃に来てるみたいなんですけど、ほとんど記憶が残ってなくて。」

「そうだな。ウィルは大きくなってからは家族で王都に行くってなってもついて来なかったからな。もしかしてアリスも初めてだったかな?」

「はい。ワタシも初めてです。すごい綺麗な庭園ですね。あっ!あれはマッカラン様ではないでしょうか?」

ウィル達が話していると城の方からウィルの心の友でありカルデ神殿騎士団長であるマッカランが操る大きな馬車が近付いて来た。

マッカランは馬車をウィル達の前で止めるとカルデの前で敬礼をした。

「カルデ様、おかえりなさいませなのである!」

「うむ、ご苦労。しかし何故おぬしが馬車を操縦している。御者はどうした?」

「ウィル殿が来ると聞いて御者に代わってもらったのである。ややっ!?ウィル殿、その胸当ての色は!?そ、それに短剣は柄しか無いのである!これは一体!?」

「い、いや、その、これは…。」

マッカランからレンタルした胸当てと短剣は温泉で銀色から黒へと変色し、更に短剣はスライムによって刀身が溶かされ柄だけとなっていた。

そんなマッカラン公爵家の家宝の変わり果てた姿にマッカランが目を丸くしていると、それを誤魔化すようにカルデが咳払いをした。

「コホンッ!マッカラン、おぬしララとラスクに挨拶もせずに放っておくとは非礼が過ぎるのではないか?ララとラスクはサウストン男爵家に籍はあっても今やボルケニア帝国のれっきとした皇族だぞ。」

「おっと!これは失礼したのである。ララ殿、お久しぶりである。相変わらずお美しいのである。ラスク殿もまさか皇帝候補とは驚いたのである。わっはっはっ!」

「マッカラン様、そんなお気を使って頂かなくても大丈夫ですわ。今まで通りでお願いします。」

「そうはいかないのである。しかし、シルバリオン公爵家の1人娘というだけでも驚いたのに、まさか王女様だったとはな。トーマスも、とんだ嫁をもらったものなのだ。これならカサンドラの奴も諦めがつくのだ。わっはっはっ!」

「マ、マッカラン様!カサンドラ副団長の話はやめてください!」

カサンドラという名前にトーマスの顔が一瞬にして蒼ざめる。

それもそのはず、カサンドラとはトーマスがかつて所属していた王宮騎士団の副団長であり、トーマスに惚れ込むあまり、勝手にトーマスの部屋に侵入し、全裸でベッドの中に隠れていたり、トーマスの下着を度々盗んでは額縁に飾り鑑賞していたり、トーマスが休みの時も執拗に監視魔法で行動を追跡したりといった悪質な違法行為を幾度となく繰り返し、トーマスを追い詰めた変態である。

「トーマス兄さん、顔色が悪いですけど、その方と何かあったんですか?」

「ウィル、頼むから勘弁してくれ。…うぷっ!?」

トーマスの脳裏にカサンドラからされた悪夢のような仕打ちが蘇り思わず吐き気がこみ上げると、それに気付いたララが心配そうにその背中をさすった。

「わっはっはっはっ!トーマスは相当カサンドラにやり込められたからな!」

ウィル達がその場でしばらく談笑していると、城の方から馬にまたがった1人の王宮騎士がやって来た。

思わずトーマスの顔から冷や汗が吹き出すが、その王宮騎士の胸にある勲章が副団長のものではなく、筆頭騎士のものである事に気付くと、トーマスは胸をなでおろした。

王宮騎士はウィル達の前まで来ると馬から降りてフルフェイスのヘルムを外した。

腰まである艶やかな黒髪と尖った耳、そして切れ長の青い瞳が特徴的な美しい顔が露わになると女はカルデに敬礼をした。

「カルデ様、おかえりなさいませ。」

「ああ、ミツハか。出迎えご苦労。」

この黒髪の美女は、ミツハ・クロロッソ・マッカラン。

マッカラン公爵家の1人娘であり、王宮騎士団筆頭騎士である。

ミツハはララ、トーマス、アリスに挨拶をすると、ウィルの前で立ち止まり睨み付けた。

「貴方がウィル様ですね。私はミツハ・クロロッソ・マッカランと申します。王宮騎士団で筆頭騎士を務めております。」

「こ、これはご丁寧に。俺はウィル・バークリー・

サウストンです…。あれ?マッカランって…。」

何故、自分が睨み付けられているのか訳もわからずウィルが困惑していると、ミツハが突然ウィルの顔をビシッと指差した。

「私は貴方との結婚など認めてませんから、そのおつもりで!それでも私を望むのであれば決闘で私に勝ってからにして下さい!」

「へっ…?ええーーーっ!?け、結婚って何ですか!?」

ウィルを始めカルデ達も驚きの声を上げていると、そこへ満面の笑みを浮かべたマッカランが近付いて来た。

「わっはっはっはっ!ウィル殿、一体何を驚いているのだ?つい先日、ボルケニア帝国に出発する際にミツハとの結婚を約束したではないか?」

「そんな約束してませんから!」

マッカランの捏造した話にウィルが困惑していると、そこにカルデが慌てて割って入る。

「そ、そうだ!我もその場にいたがそれは貴様が勝手にほざいていただけで、ウィルは約束などしておらぬぞ!勝手な事をぬかすでないわ!」

「むむっ!?カルデ様は最近耳が遠くなられたのだ。結婚の約束をした証拠にウィル殿はマッカラン公爵家の家宝であるオリハルコンの胸当てと短剣を装備しているのだ!わっはっはっはっ!」

「マッカランさん、これは借りただけでもらった訳じゃないですよ!」

「ウィルの言う通りだ!貴様こそそのパイナップル頭が腐り始めたのではないか!?」

「むむっ!?それなら百歩譲って貸したでも良いのだ!だがしかし!貸した家宝をこんなにされては我輩もタダで許す訳にはいかないのだ!許して欲しければミツハと結婚するのだ!わっはっはっはっ!」

「そ、そんな…。」

「おのれぇ!マッカラン、貴様謀ったな!?」

「謀ったとは人聞きが悪いのだ!我輩は何も知らないのだ!わっはっはっはっはっ!!!」

マッカランが両手を腰に当て分厚い胸板を張り出すように笑っていると、その首元にミツハの抜き放った剣先が突きつけられマッカランは笑うのをやめた。

「ややっ!?ミ、ミツハ、何をするのだ?パピーにこんな事をしてはダメ…。」

「父上、喋らないで下さい。手元が狂って刺してしまいますよ。この話の流れだと結婚の話は父上の狂言だったようですね。少し前に突然夜中に帰って来て放置してあったボロボロの胸当てと短剣に銀メッキをかけ出して、何をしてるかと思えば、ウィル様を欺く為だったのですね?」

「ボロボロ!?マッカランさん、どういう事ですか!?」

「そ、それは…。」

「マッカラン!貴様、最初からメッキが剥がれる事を見越してウィルに貸し出したな!この愚弄めが!」

「ううっ、そ、それはあまりに汚かったから綺麗にしようと…。」

ウィルとカルデが詰め寄るとマッカランは冷や汗をかきながら首を横に振っている。

「とにかく、今回の件は母上に報告します。父上はお仕置きを覚悟していて下さい。」

その瞳は氷のように冷たく蔑むようにマッカランを睨みつけている。

「ミツハ、そ、それは勘弁して欲しいのだ!」

「ダメです。ほらっ、父上は馬車に戻って下さい。それともここに埋められたいのですか?」

「ヒィッ!?わ、わかったのである…。」

マッカランはミツハに首元を剣先でツンツンされると怯えながら馬車の操縦席へと乗り込んだ。

そんな2人のやり取りにウィルが呆気にとられているとミツハが頭を下げた。

「ウィル様、先程は大変失礼しました。どうかお許し下さい。」

「いえ、気にしないで下さい。誤解が解けて良かったです。」

「ありがとうございます。それでは、皆様、馬車にお乗り下さい。グリドール国王陛下の元までお送り致します。」

こうして、マクグラン王国に着いて早々一悶着ありながらも、ウィル達は馬車へと乗り込みグリドールの元へと向かうのだった。



ミツハ・クロロッソ・マッカラン

女性 19歳

マクグラン王宮騎士団筆頭騎士であり、マッカラン公爵家の1人娘。腰まである艶やかな黒髪と尖った耳、そして切れ長の青い瞳が特徴的な美女。

サディスティックな一面があるものの、根は優しく真面目。

人族の父マッカランとエルフ族の母ラムとの間に生まれたハーフエルフ。



明けましておめでとうございます^_^

新年一発目から新章スタートです!

今までお読みくださっている方も初めてお読みくださった方も、新年のお年玉という事で何卒ブクマ、評価、感想頂けたら嬉しいです^_^

今年はこの作品が沢山の方々に読んでもらえますように!そして、皆様が楽しく過ごせる一年になりますように!!!

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