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第16話 後悔

しばらくウィル達の様子を伺っていたカルデは、扉の前で控えていたハニエルをチラッと見た。

「それでは続きは食事をしながら話すとしよう。ハニエル、席に案内してくれ。」

「はい。それではトーマスさんとアリスさんはこちらへ。ラスクちゃんはわたくしがお預かりしますね。」

ハニエルはトーマスからラスクを受け取ると自分も席に着き、太ももの上にラスクを座らせた。

ラスクは座り心地を確かめる様に、何度か背もたれ代わりのハニエルの大きな胸の感触を上半身を揺らし確かめると、満足気にもたれかかった。

大広間にいる男達がラスクを羨ましそうに見ていると数人の従者が食事を運んできた。

「そういえばウィルにはハニエルの紹介がまだだったな。ハニエル、そのままで良いからウィルに挨拶を。」

「あらっ?ワタクシとしたことがウィルさんとは昨晩裸の付き合いをしましたので、既に終わっているものと勘違いしておりましたわ。ウフフ。」

ハニエルの突拍子も無い言葉に大広間にいる、全ての人の動きが止まり次の瞬間、アリスとカルデが立ち上がる。

「ええーっ!?ハ、ハニエル様!裸の付き合いってどういう事ですか!?」

「あらっ?そのままの意味なのだけど言ってはいけなかったのかしら?」

アリスは顔を真っ赤にしながら問い詰めるが、ハニエルは色っぽい笑みを浮かべながら飄々と返した。

「こらっ!ハニエル、誤解を与えるような言い方をするな!ただ単に、ボロボロになった服を脱がせて身体を拭いただけではないか!」

今度はカルデが誤解を解こうと必死に説明するが、ハニエルは更に楽しそうな笑みを浮かべた。

「でも、裸の付き合いである事には変わりはありませんもの。それに誤解とはどの様な誤解でしょうか?」

「ど、ど、どの様なと言われても、そのなんだ…あれだ…。」

「あれって、どれの事でしょうか?」

いくらこの短期間でトレンディドラマやウィルとのキスでそういった免疫を獲得したとはいえ、元々の恋愛偏差値が小学3年生程度だったものが中学1年生程度になったに過ぎず、カルデは言葉に詰まった。

「うぐっ…えーい!もうよいっ!そ、その話は終わりだ!とっとと挨拶をしろ!」

カルデが話を打ち切るとハニエルは一瞬残念そうにしながらも、ウィルの方を見て再び色っぽい笑みを浮かべた。

「ウフフ。では改めて、わたくしは大天使ハニエル。カルデ様にお仕えしておりますの。ヨロシクね。」

ウィルは大広間にいる神殿騎士達の殺気のこもった視線が一段と強くなるのを感じながらも口を開いた。

「あっ、はい。俺はウィル・バークリー・サウストンです。昨日は面倒をおかけしてしまったようですみませんでした。それから、ありがとうございました。」

「いえ、お気になさらず。ウフフ。」

ウィルはハニエルがカルデを楽しそうにからかうのを見て、この人だけは間違っても敵に回すのはよそうと思うのであった。


そうこうしているうちに、円卓の上には様々な料理やフルーツが並べられていた。

「良い食事を!」

カルデの食事の挨拶に全員が復唱し食事が始まった。

料理は親しみのあるマクグラン王国の伝統的なものばかりだったが、どれも美味しく料理が得意なアリスが舌を巻くほどだった。

ラスクはハニエルが細かく切ったものを仏頂面のままひたすら食べ続け、満腹になるとハニエルの太ももの上で寝てしまった。

食事がひと段落した頃、カルデが本題に触れた。

「それでトーマス。昨晩我が行くまで何があった?」

全員の視線がトーマスに集まる。

トーマスが悔しげな表情を浮かべ黙り込んでいるのを見たアリスが何かを言おうとするが、トーマスが意を決したように昨晩のミカエルの襲撃について語り出した。

「昨晩、家族みんなで食事をした後、

私はララとラスクと離れに戻り休んでいたのですが…。」

トーマスの話をまとめるとこうだった。

トーマス達が離れに戻り休んでいると、突然、窓の外が光り数十人の赤い鎧をまとった騎士とジェレミエル、そしてミカエルが現れた。

最初はトーマスとララでなんとか応戦し、その後異変に気付いたブライト、メリー、クラスティ、更にアリスが加勢し互角以上に渡り合っていたものの、隙を突かれ子供部屋で寝ていたラスクを人質に捕られてしまい、引き換えにララの身柄を要求されララがこれに応じたとの事だった。

そして、ジェレミエルがララを眠らせ一足先にボルケニアに帰還しようと転移結晶を使った瞬間、クラスティがララを助けようと光の中に飛び込み、そのまま3人は転移してしまった。

その直後、トーマスが一矢報いようと超級魔法剣を放ち赤い鎧の騎士たちを全滅させたが、それに激怒したミカエルが魔法を唱えると巨大な門が出現し、ブライトとメリーが吸い込まれ次の瞬間、大爆発が起きた。

トーマスは死を覚悟するが、突如アリスに抱かれていたラスクが赤い光に包み込まれ、ラスクを中心に防御障壁が展開し大爆発の衝撃が軽減されたおかげで助かったという事だった。

「…結局、私はララを守れなかったばかりか、家族を危険な目に合わせ、父上と母上も…私は…。」

トーマスがうつむきながら悔しさや情けなさといった様々な思いに身体を震わせていると、いつのまにか目を覚ましたラスクがハニエルの太ももから降りてトーマスに近づくと、仏頂面のまま優しくその頭をポンポンとした。

それは「親父、気にするな!」と言っているようにウィルには思えた。

「ラスク…。ありがとう…。」

そんなラスクを強く抱きしめながらトーマスは泣き崩れるのであった。



大天使ハニエル

女性 ??歳

カルデに仕える大天使。淡いピンク色の長い髪をした色っぽい美女。

マクグラン王国ではカルデと双璧をなす絶世の美女として知られ、神殿騎士団を中心とした熱狂的なファンクラブが存在した。

性格は一見おっとりしていて優しいがドS。

趣味はカルデをからかう事らしい。


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