いざ逝け冥土道、悪夢の追憶 終幕
返してくれよぉ!!エルピィと神子イヴ!
ようやっと戦闘パート終わった……
「『新界超越』!」
加速して退避し2人の元へ。
アリスの目の前には影で出来た門が出現。少しずつ開き始め、中からは明らかにヤバそうな影が溢れ始める。
「やり過ごせます?」
天眼を使うまでもなく心眼で予測線が見える。赤一色、どこにも逃げ場がない。
「無理ですね」
位置取りが最悪だった。せめて門の裏側に回れれば………
「ねえファケリーちゃん、あのなんか凄い攻撃、何発まで撃てるんだっけ?」
今聞くことか……?
「1キルあたり7発です」
バフ重ねてワンチャンに賭けて走る?いや、短距離ワープレベルの速度じゃないときつい。それともイチバチで魔弾7連射?いや、アリス以前に門が邪魔で射線が通らない。
「出来れば最後まで見届けたかったんだけどねぇ……」
お姉さんが大楯以外の装備を仕舞って前に歩いていく。
「ファケリーちゃん、1発ぐらいならあっしは防げるからあとは頼んだよ」
「え?」
影の門が完全に開放され、納めていた影が溢れ出す。
「『万象断絶せよ─────』ッ!!」
それに併せてお姉さんもスキルを発動準備する。考えろ。時間が少しだけ出来た訳だ。無駄にしてはいけない。
影そのものは攻撃すれば多少は逸らせる。とはいえケチった拡散砲撃では焼石に水。貫通砲撃の『竜穿』では逸らさずに撃ち抜いてしまう可能性がある。HPを削って放つ『命灼』は連発できない。
「『神威光盾』ッ!!あふん!?」
お姉さんがやられた。とはいえ第一波は彼女のおかげで凌げた。
何か有用なスキルは無いか、ステータスを確認。それと同時にある情報が目に入る。雑魚狩りの経験値で『魔弾射手』にある要素が追加されたようだ。だが、今から使うようではあの魔法が俺をデスペナルティに追い込む方が早い。
「ファケリー、来ますよ」
第二波が来るとエクリプスに声をかけられる。エクリプス?
そうだ。エクリプスだ。俺よりHPの多い前衛職のエクリプスがいる。
「エクリプス、身代わりとか持ってますか?」「先程、1つ渡されましたが」
準備がいいなお姉さん。死んだあとまでしっかり考えてんのか。
「『機走破』『臨壊機動』『命脈踏破』『アンチグラビティ』『Lightning Boost』─────エクリプス」
自己バフを掛けてから彼女に近づく。
「なんでしょう?」
基本的に俺はリアルのことは持ち込まない。故にミスコン関連の事はリアルで報復する。とはいえ、こいつにはあの魔窟に放り込まれているし借りがある。それに、
「一度言ってみたかったのですよ」「何を?」
満面の笑みでエクリプスに対して言い放つ。
「近くに居た、お前が悪い」「は?」
エクリプスの首根っこを掴む。STRはAGI程じゃあないが振ってるので体格差も殆ど関係ない。そのまま振り向き、門から来る影の奔流に対しての壁にする。
「ガッ!?」
直ぐに削り切れたみたいだ。まあ想定内。
ジェリンドのブレスで俺が消し飛んだ時みたいに、身代わり、蘇生が発動した場合、殺された攻撃に対してのダメージ計算は2回行われない。多段ヒット攻撃みたく無理やり押し通すならまだしも、この影の奔流ではエクリプスは『2回死ねない』。つまり、最強の盾となる訳だ。
「『真界超越』」
抜けた。影の門を完全に突破した。
アリスが驚愕の表情でこちらを見ている。惚けてていいのか?
「砲撃形態移行──────『魔弾射手』」
砲身を突きつけるのはアリス───────ではなく、エクリプスの後頭部。
「貴女、覚えて────ッ!?」
あ、振り向いた。もう遅いけどな。
魔弾がエクリプスの顔面を撃ち抜き、7発分補充される。残弾13発。
「ッ!」『ァ!』
門がこちらをジリジリと向き始め、同時に影の鞭をアリスが振るう。
1発、アリスに射撃、鞭を逸らすのに更に2発。
アリスの胸部を狙った魔弾はアリス自身が動くことによって回避された。影の鞭を逸らすのは成功。残弾10発。門は既に45°ほど回転している。
今までアリスは影の鞭を使ってて防御することや不定形の体を利用して回避することはあっても彼女自身が動いて回避することはなかった。
つまり、彼女自身が動いて回避せざるを得ないという事であり、不定形にはもうなれないのだろう。
MPはあとスキル1発分しか残っていない。MPドレインの装備に切り替える暇なんてある訳無い。
自己バフは生きてる。何とか近づいて急所に1発ぶち込んでやる他ない。
「シィッ!」『ラァッ!!』
走って接近。左右から同時に影のムチ。右側に射撃して逸らし、2つの隙間を飛び越える。残弾9発。砲身になっていない方の腕から転がってそのまま体勢を建て直し、アリスに向かって走る。
『ッ!!!』
砲身をアリスに向けると鞭ふたつを体の周りでとぐろを巻くようにして体を守る。門は既に90°以上回転している。ここに来て時間稼ぎ……!
5発連射、残弾5!
『───ッ!?』
影の鞭を使った壁は破壊出来た。
もう時間が無い。
4連射。
「これで……!」
その瞬間、俺の足元から影の鞭が出てくる。
思考に空白。身代わりが発動、『バキリ……!』とアクセサリー『エスケープゴート』が破損する音がする。想定外の位置から出てきた鞭は無慈悲に俺の両脚を奪って行く。
咄嗟にAIMを修正。しかし崩れた姿勢での射撃なんて練習してる訳ではない。4発の弾はブレ、腕、足、太腿、手に着弾。
終わり?いや。
「当機の勝ちだ」
影の鞭そのものの体積は俺の足を奪っていった分だけ減っており、彼女の体を覆いきりつつ魔弾を耐えきる程の厚みはもう出ない。故に、彼女は俺と彼女を遮るように影の盾を作り上げた。
もうすぐ門が完全にこちらを向き切る。
でも、こっちの方が早い。
残弾は1。
「『過剰収束』…………」
もう、狙う必要はない。
「最後の1発は特別製でね……」
砲身を彼女がいるであろう方向に向ける。
『魔弾の射手』のオペラに出てくる必中の魔弾についているその名は…………
「『七滅魔弾』!!」
その特性は文字通りの必中、追尾性能に7段ヒット。
ガードも身代わりも削り殺す必滅の一射。
魔弾は影の盾を最短で迂回し、少女の核を貫いた。
同時に、門が完全にこちらを向き、影の奔流が俺を呑み込む。
視界の端の、魔弾のカウントが0から7に変わると同時に、俺のHPもゼロになった。
今回のデス数4(特殊状態異常『永眠』を踏む、影の槍の側面に触れダメージ発生、影の鞭による脚部破壊のダメージ、幻葬冥門に被弾)
ちなみに機械王は没収済みなのでファケリーは本当に死にました。
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