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5話
「あっ‼忘れる所だった。マフラー返すよ。ありがとう、風邪はひいたけど」
マフラーを受けとると、しっかりと洗濯をしてあるのか、良い香りがした。
「それなら、振り返さないように」
少しばかり鼻声になっているむつに、返して貰ったばかりのマフラーを、くるくるとまいた。
「冷えてきたもんな、家まで送るよ…あぁっ‼忘れた‼」
「なっ何を?」
「弁当箱、家だ」
「そんな事か。また今度でいいよ、口実があれば仕事以外で誘いやすいわ」
むつは笑いながら歩き出した。
「誘う?」
「ご飯とかさ。しろーちゃん仕事以外で会ってくんないじゃん?」
次は冬四郎が耳を赤くしていた。