2話
冬四朗と共に車に乗り込んだむつは、何を話すでもなく、ゆったりと座席で外の景色をながめていた。そして時折、冬四朗の方をチラリと見ては、また視線を外に向けた。
「あそこの神社ってさ」
「ん?」
突然、何かを思い出したかのように、むつがボソボソと話を始めた。
「宮司が」
「ああ、狐さんなんだろ?」
「えぇっ‼知ってたの?」
「うん。俺の勤務先教えたら、お前が言ったんじゃんか」
驚いたむつは、勢いよく冬四朗の方を向き、それから、ぐったりと座席に寄りかかるようにもたれた。
ずれた眼鏡を押し上げて、むつは、まじまじと冬四朗を見つめた。冬四朗とむつは、幼い頃からの付き合いがあった為か、怪奇現象や妖怪に対しての偏見がなかった。だから、怪しげな会社、よろず屋にも平気で訪ねていけるのだ。
「悪戯をしてるんじゃないかなーってのは俺も思ったもん。だから、こっちまで来たんだけどさ」
「って事は確かめたの?」
「まぁね。けど、俺が聞いても本心答えてくれてる気がしないし。けどなぁ」
悪戯にしては、度が過ぎるよな、と冬四朗は笑っていた。それに、
「狐さんだけで出来るか?何かありそうな気がしてる、っていう勘な俺の」
「あーね。先に出る事なかったかな」