第3話「こわ~い話 2」
翌日、僕はずっと、考え事をしながら祠の前で掃除をしていた。
昨日、真帆ちゃんさんから美菜ちゃんの事について聞いた。
「十五年前の事、聞きたい?」
と、真帆ちゃんさんに質問され、僕は息を飲み込みながらゆっくり大きく首を縦に振った。
すると真帆ちゃんさんは部屋の明かりを消し、ろうそくを顔の近くに持っていきながら当時の事を語り始めた。
真帆ちゃんさんの顔立ちがはっきりとした美人顔がこれまた怪談の雰囲気を一段と強くしていく。
「十五年前、香園さんの孫娘がね、突然姿を消したの。町中は大騒ぎになってね。誘拐事件じゃないか?って、警察も数十人規模で捜索に当たってて、そりゃもう連日騒がれてたわ。でも堰に子供の靴が残されてて、自殺なんじゃないか?って、見解になったんだけど、それも違ったの。どうしてだと思う?」
「さ…さぁ…。」
僕の心臓は壊れそうになるくらい恐怖で震えていた。
それに追い打ちをかけるように真帆ちゃんさんはさっきよりも更に小声にして僕の耳元で囁くように語りかけた。
「遺体が見つからなかったのよ。いくら探しても…。」
「え…それじゃ、彼女は結局…。」
「真相もわからないし、彼女が生きているのかどうかも謎だわ。
当時、近隣に相当聞き込みがあったけど、怪しそうな人はいなかったみたいだけど、そもそもいなくなったのがお祭りの日の夜だから、観光客やら帰省者やらで思うように情報も集まらなくてね。そのうち捜査も下火になっていったわ。
だからこの話は香園さんに気を使って、誰も話そうとしないし、知ってる人はご近所さん以外ほとんど知らないと思う。
あなたがどこで彼女の話を聞いてきたのか知らないけど、周りの人に言っちゃだめよ。」
僕は頷きながら彼女の事を考えていた。
確かに僕は彼女と会っていた。
でも、その子は本当に美菜ちゃんなのだろうか?という疑問も出てきたし、何が正しくて、何が間違っているのかなんてわからなかったから、祠の掃除も何だか上手く出来なかった。
それでも掃除をした後に、みかんを二つお供えして、家に戻ろうとした。
でも、昨日のみかんの皮の事がどうしても気になって、近くでこっそり見ている事にした。
意外と真帆ちゃんさんが食べているのかもしれない。もしそうなら心の底から笑ってしまいそうだ。
そんな訳はないと感じながらも何だか自分が刑事になったみたいで、ワクワクしながらその時を待っていた。
果たしてその時は来た!!
僕は自分の目を疑ってしまった。
あんなに小さい祠の扉から細い手がニュルっと出てきて、みかんに手を伸ばしたのだ。
どう考えてもあの祠は人が入れる大きさじゃない。
いや、マジカルさんなら出来るのかもしれないけど、僕達には到底出来ない技だ。
気が付けば僕は隠れていた草むらから飛び出し、その手を掴んでいた。
「うっ、おぉぉーーーー!」
相当驚いいる声に反応して僕まで「ぎゃぁっ!」
と、叫んでしまった。