Part7 Step by step・・・
Part7 Step by step・・・
楽しい時間は過ぎるのが早い。
気付くと、すっかり夜は更けて、日付が変わるまであとわずかになっていた。
19歳の美紅と20歳の美紅。
この数分で何が変わるというわけではないけれど、やっぱり法律的に大人になるというのは感慨深いものがあるし、その瞬間に立ち会えるのが俺であるということが何よりうれしい。
この日のために買っておいたスパークリングワインを冷蔵庫から出してくる。
日付が変わる瞬間に栓を開けるつもり。
TVを消して、息をつめて二人で時計を見つめる。
秒針が10の数字を過ぎ・・・
「5・4・3・2・1・・・」
勢いのよい音とともにワインの栓が飛んでいった。
「20歳おめでとう、美紅」
「うん、ありがとう・・・」
美紅はうっすらと涙ぐんでいるようだった。
その顔を見ていると、こっちも感動して涙が出そうになってくる。
いくらなんでもそれは恥ずかしいから、笑顔を作ってグラスにワインを注ぐ。
実はワインなんて買うの初めてで、どれにしたらいいかわからなかったけど、色がかわいいかな、という理由でロゼにしてみた。
淡いピンクのワインが泡立ちながら細長いグラスに注がれていく。
ふたつのグラスにワインを注ぎ終わり、目の高さまでグラスを上げると泡の向こうに美紅の姿が見えた。
ずっと、こんなふうに目の前にいてほしい、その思いが満ちてくる。
初めて口にした炭酸入りのワインは思ったより甘かった。でも、舌に残る刺激はやっぱりソーダとは違う。
「どう、おいしい?」
なんだか神妙な顔をしている美紅に聞いてみた。
「うーん、実はよくわからない、すっぱいのはわかるけど」
まあ、そんなものなのかもしれない。
実は俺もビールの味とかよくわからないし、似た者同士なのかもな。
もう少し大人になればわかるのかもしれない、俺達はまだその入り口にたどり着いたばかりだ。
「無理して飲まなくてもいいよ、アルコールは初めてなんだから、気分が悪くなったら大変だし」
少なくとも、美紅を酔わせて何かしようとか、そういうことは断じて考えてないし、美紅に何かあったら大変だ。
「うん・・・」
美紅はほっとしたようにグラスを置いた。きっと本当は苦手だと思ったけど俺に遠慮してたんだろう。
いいよ、それで。
20歳になったからって一足飛びに大人にならなくたっていい。俺だってまだ全然大人じゃないし、これから一緒に成長していけたら、それでいい。
step by step・・・
一歩ずつ、二人で歩いてゆきたい。
オレンジジュースを飲み干す美紅を見ながら俺はそんなことを考えていた。
そろそろ(やっと?)クライマックスが近いかな。
展開遅くてすみませんです。




