Part1 Birthday Plan
Part1 Birthday Plan
9月6日、月曜日。
今日バイトは休み、まだ学校も二学期が始まったばかりで比較的のんびりしている。かえって夏休みのほうが受験対策の補習が多くて忙しかったくらいだ。
大学の休みは10日までだから、俺にとっては心ゆくまで夏休みを満喫できる貴重な時間だ。
とくに、今日は一生に一度きりの特別な日。なんの日かって?
今日、9月6日は俺にとって世界で一番大切なひとの十代最後の日。日付が変わって7日には美紅は20歳になる。
美紅が、はたちになる瞬間、そのときをふたりで迎えたい。
先月のなかばにそう言ったときの美紅のうれしそうな表情は忘れられない。
そして、今日。
街に出てふたりで買い物を済ませ、軽めの夕食をとってから、アパートへ向かう。
「本当に俺のとこでいい?やっぱりホテルとるとか、もっと小ぎれいな場所のほうが」
「ううん、いいの。ホテルは家じゃないでしょ。蒼くんのところのほうが落ち着くもん。」
「うん・・・」
それは美紅にとっても家ってことなのかな。なんて思ってみたり。
いつも同じところにふたりで帰れたら、それが一番なんだけど、なかなかそうはいかない。でも、今のところはそう思ってくれるだけで幸せな気分になれる。
電車を降り改札を出たところで、美紅の手を握る。
そういえば、半年前初めて手をつないだのもここだった。それだけでもものすごく勇気がいったよな・・・。
そんなことを思いながら、歩き出した。
そのとき
「あ、先生だ!」
後ろから声が聞こえた。
せんせい?まさか・・・。
振り返るとリュックを背負った子供が3人、男の子がふたり、女の子がひとり。
塾で俺が教えている小学生だった。
ちょうどもうすぐ塾の始まる時間だ。俺と美紅は休みだけど、塾自体は休みじゃないことをすっかり忘れていた。
やばい、さっと美紅が手を離したけど、たぶんしっかり見られていたような。
男の子のひとり、トモキくんが話しかけてきた。
「橘先生と柚木先生、付き合ってるの?」
ほら来た、なんて言えばいいんだ。別に隠すことでもないけどやっぱり言いにくい。
美紅も恥ずかしいのかうつむいたままだ。
「ねえねえ、どうなの、ケッコンするの?」
もうひとりの男の子、シュウトくんも興味津々といった感じで聞いてくる。
どうしよう、と思っていると。
「あんたたち、からかうのやめなさいよ、今は先生達プライベートタイムなんだから、そっとしておいてあげなくちゃ」
最後のひとり、アヤカちゃんが助け舟を出してくれた。ありがたいけど「プライベートタイム」とか「そっとしておいてあげる」とか、最近の子供の言うことはすごい。
「ほら、行きましょ。チコクすると塾長から家に連絡が行くんだから急がないと、じゃあね、先生」
まだ何か聞きたそうにしている男の子二人を引っ立てるようにして、アヤカちゃんは歩きだした。
「あ、うん。じゃあまた明日」
ほっとして3人に手を振ると、アヤカちゃんが振り向き、
「でもちょっとショックだなあ、あたし、大きくなったら橘先生のおヨメさんになってあげてもいいと思ってたのに。でも、柚木先生のことも好きだからまあいいか。」
そう言うとにっこり笑ってウインクしてみせた。アヤカちゃん、きみはまだ10歳だろう。
「それとこのことは塾長には内緒にしておいてあげるね。こいつらにも言い聞かせておくから」
「あ、うん、ありがとう・・・」
アヤカちゃんは最後に気配りまで見せて手を振りながら去っていった。何と言うか、女はこわい。
やっぱりちょっと情けない蒼くん・・・。
こんなことで大丈夫かなw




