初戦
初戦当日。出場選手である俺たちは、控え室に集まり簡単に流れをまとめる。
相手の戦い方は大体把握できている。その上でこちらは、
「俺から行くって事でいいな」
「うん、それでいいよ」
「私も…問題ないです…」
元々決めていた事ではあるが一応確認の意味も込めて聞いてみた。
俺が1番目に出る理由は1人目を倒すためだ。基本的に魔法での戦闘は切り札が割れているほうが不利だ。そのため俺は1人目を倒して次の相手の能力を出来るだけ多く使わせる。まぁ1人で3人抜きするつもりで行くが。
そんなことを考えていると扉が開き先生が入ってくる。
「1人目の生徒は移動しろ」
「分かりました」
先生に指示され闘技場の入り口前へ移動する。
この戦いは先生方だけでなく一部の上級生や第3者に見られる。
相手がどの順番で戦いに来るかもわからない。だが相手が電気属性や水であれば相性最悪とまではいかない。
入り口へ近づくほど歓声が大きく…なんてことはない。その代わりに、こちらを観察するような視線が四方八方から刺さってくる。
ある意味こっちの方が嫌かもな。何ともいえないようなプレッシャーを前にどこか楽しみにしている俺がいる。
実況が入り、名前が呼ばれる。
「第1回戦は、7組対3組です。7組1人目はグレンさん。3組1人目はレイさん。両者入場してください」
指示に従い進み出す。足取りが重い。今までの負けたくなくて負けない戦いではない。負けることが許されない戦い。俺が感じてるのは緊張か?それとも恐怖?
…いや、違うな——
この昂りは、高揚感だ!
だが、一旦落ち着け本気で取り組め。確実に相手を倒せ。この戦いを俺の成長に活かせ!
そして…高揚感はここで捨てろ。冷静に相手を落としに行け。
高くなったように感じる体温を吐き出すように息を吐く。
「やるか」
相手へ視線を向けると相手もこちらを見ている。
「今日はいい戦いをするぞ!」
「あぁ、そうだな」
「全力で貴様を倒す!」
話は続くことなく実況が告げる。
「それでは第一回戦レイさんグレンさん。戦闘を開始してください」
即座にグレンが攻撃を仕掛ける。
「ほら!まずはこれからだ!」
火炎放射のように炎を手のひらから発射してくる。爆音を上げながら大きな炎が視界を埋め尽くしていく。
「六花」
前方へ六花を集中させ防ぐ。
多少の隙間は存在しているが魔法に限っては完全に防げている。六花同士で近づけると冷気が発生し防壁のようになる。この冷気は魔法のみを凍らせて防ぐ。
やはり魔法に対してだけは、通常とは仕様を変えておいて正解だったな。
「何だ!その盾は!俺の炎が隙間にも入っていないぞ!」
あの炎越しであってもこちらの様子を把握しているのか…意外と相手をよく見ている。俺の魔法をよく見て観察しているな。
早めに移動し近づきたいが…
小走りに近づくと炎は六花に防がれた後に舞い上がり上からこちらへ向かってくる。すぐに距離を取り様子を見る。
近づきすぎるとダメだな。360度防げない六花じゃ俺自身を守りきれない。安全に近づける距離はせいぜい8m程か。近づくことはできるが、無理に近づいたところで相打ちが限界だな。
「貴様にこれが通じないならしょうがない!これで決める!烈焔!」
炎が綺麗に円形に発射される。観察するまでもなく火力は上がっている。
辺りの気温が急上昇している。汗が流れてきて視界が歪む。
クソッ、見えずれぇな。暑くて頭が回らん。どうする?いや、これだけやってるならあいつも制約を結構つけている筈…だが近づくことができない。
そんなことを思い方法を模索しようとした瞬間に喉に微かな痛みが現れる。
なんだ?何が起きた?…喉が焼けているのか!
1、2、3
まだ完全の焼けたわけじゃない。少し痛いだけだ。思えば熱がこっちまで来ている時点でわかることだった。これは魔法ではなく炎の攻撃が行われた際にできた熱気。これは魔法じゃないから隙間を簡単に超えてくる!
まさか魔法での戦いで魔法以外のもので勝負を仕掛けてくるとはな…完全に想定外だった——てか?
俺の家系は元々炎系が多い。その特性は完全に把握している。
8、9そろそろ限界か。
まだ見せるつもりはなかったがしょうがない。
確実に勝ちに行くか。
「雪室」
俺の周りが氷のドームで覆われる。炎は防がれ明後日の方向へ飛んでいき熱も防がれて内側までは入ってこない。
涼しいような澄んだ空気が満たされ焼かれていた喉を癒す。
大体9秒か。炎が通じないと理解したグレンは能力を切り替える。
「そんな部屋からは引きずり出してやる!」
炎は槍のような形状の変化していく。
この魔法は俺の魔法の中でも1番守りが硬い。いわば絶対防御。動けないという制約こそあるがあんな炎の槍嫌いなら止められる。だが、
魔法を解除して走り出す。
「くらえ!」
飛んできた炎の槍を六花で防ぐ。炎が霧散していく。完全に消えてはいないが関係ない。走って抜けていく。霧散した火の粉などが顔を焼く。それでも今が1番攻めるチャンスだ。
だが、こんな俺とは裏腹にグレンは、動揺が隠しきれていない。
「なんでその魔法が残ってる!」
「雪室を発動しても六花が消えるとは限らない」
まぁ隠してたから相手視点は能力を同時に使っているではなく切り替えたように見えるのは自然かもな。
「だがまだお前の得意な体術の範囲外だ!烈焔!」
少し焼かれてしまうがもう止まらない。スピードを緩めることなくむしろ上げていき、
「射程距離内だ。雪室」
「え?」
グレンは俺の発した能力を聞いて困惑する。当然だな。俺もこんな用途で使うつもりはなかった。
雪室の中が炎で埋め尽くされる。
「無駄だ!この炎は俺に効果はない!」
だろうな。炎を手から発射していたのにその付近が火傷していないことからそれくらいは予測できる。だが、
「その魔法の炎はただの炎魔法ではないだろう?」
その言葉でグレンが気づく。
「熱気…!?」
だがもう遅い。俺のように熱気が逃げることなく密室で生まれ続けるのだ。だがそれで終わるとは思っていない。雪室の前へ立ち構える。
「まだ焼かれるつもりか?」
グレンは自滅を避けるために能力を解く。それに合わせて雪室を解き走り始める。氷の破片が中に舞い、視界が落ち切る前にグレンの前へ辿り着く。俺は考えない。ただ、相手の意識を刈り取ることだけを選び、体術で腹を蹴る。
いつもなら対応できたとしても喉が焼かれ視界が歪んでいるこいつには問題なく当たる。
グレンは息が一瞬出来なくなり気絶する。
「勝者3組レイ。レイさんはそのまま7組の2人目と戦ってください。7組の2人目は準備してください」
ここで勝利が決定される。グレンはリストバンドが発動し傷が全回復する。
そして俺は傷を治したり魔力を回復させることなく次の相手と戦うことになる。




