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試験

俺の家は学園から近いこともあり、今日は荷物を持って歩いて向かうことにした。

出発の時間になると、家族全員が玄関まで見送りに出てくれる。


学園は全寮制だ。

長期休み以外は、家族と顔を合わせることもほとんどなくなる。


母は目に涙を浮かべながら、

「ちゃんとご飯食べるのよ」

「夜は冷えるから、風邪ひかないようにね」

と、同じことを何度も繰り返している。


父も父で、

「無理するなよ」

「困ったらすぐ連絡しろ」

と、こちらも回数が多い。


それを横目に、兄は少し苦笑いしながら言った。


「長期休みには帰ってくるんだろ? 大げさだな」


そう言いながらも、兄は俺の荷物を一度持ち直して、

「忘れ物ないな」

と、最後まで確認してくれる。


――ああ、しばらく会えないんだな。


そう実感して、俺は一度だけ深く息を吸った。


「それじゃあ、行ってきます」


そう言って歩き出す。

近いと豪語していたはずの道が、今日はやけに遠く感じた。荷物が多いせいか、それとも――気持ちの問題か。


それでも、十分ほど歩くと目的地が見えてくる。


王立魔導学園。


学園の敷地は、巨大な円を描くように広がっていた。

全学年分の寮に本館、研究用の実験室から戦闘訓練場まで、魔法使いを育てるための施設が、すべてここに集約されている。


その規模を目の当たりにして、自然と胸が高鳴った。


「……でか」


言葉に出して、ようやく実感する。


ここが、これから俺の居場所になる。

ここで学び、競い、戦い、

そして――特級魔導士を目指す。


「そうだ」


門をくぐりながら、俺は小さく笑った。


「今日から、ここに通うんだ」


だがこの胸の高鳴りは意外と直ぐに消えて行ってしまった。

理由は明白だ。今は本科で入学の受付やらを受けに行っている。


「入り口の門から遠すぎる!」


なんだったら家から学園までの距離よりも遠い。

それからやっと本科の入り口に着くとすでに先に着いた生徒が受付を済ませてそれぞれ別々にどこかへ向かっている。


俺も受付をしようとカウンターの人に話しかける。


「すいません、受付して欲しいです」


そう言うとカウンターの女性は紙を取り出して質問をしてくる。


「分かりましたでは何個か質問をするので答えてください」


「ではまず、あなたの名前となんの学科に入りにきたのか教えてください」


この学園は学科が4つある。

俺が選んだのは、魔法を用いた戦闘に特化した戦闘学科だ。


「名前はレイで戦闘学科です」


「分かりました。こちらがあなたの試験ナンバーと寮の部屋番号です。荷物はこちらで部屋まで持って行かせてもらいます」


「分かりました。試験というのは?」


「はい、新入生は希望の学科に入れますがその学科でやっていけるか自分の実力を知ってもらうために学科ごとに試験を最初に受けてもらうことになっているのです」


「では、戦闘学科の試験はこの本館を右に移動した体育館の中にある戦闘シミュレーションルームで行われます。直ぐに向かってくださいね」


そう言われて説明された通り体育館へ向かう。体育館の中には矢印があり試験会場には迷うことなく行けた。試験会場である戦闘シミュレーションルームに入るとすでに一人一人試験が行われている。


「もう始まってるのか」


いや、全国から人が集まるわけだしもう始めているのは当然か。

ここにも入り口付近にカウンターが設置してあり試験の説明をまとめた紙を渡されてそのまま進むように言われる。

指示通り進むと部屋の中央におそらく魔法具か何かを用いて作られた透明の壁で囲まれた空間がありそこで同じ新入生が中型の魔物と戦っている。

周りには席があり他の試験を受けている人の様子が見えるようだ。


「とりあえず試験内容を見てみるか」


『戦闘学科ー試験概要ー』

ここでは中型の魔物である“リザード”の討伐です。

リザードとはトカゲの形状をした魔物で特に弱点や耐性は存在しません。

できるだけ早く倒してください。

試験の結果は監督している教室4人で点数や改善点をまとめて後日、本人に渡されます。

試験を受ける際にリストバンドをつけてもらいます。

これをつけておけば死ぬことはありません。

一応安全のために危険と判断したら補助監督が生徒の保護に入ります。



と、全て読んでみたが、言いたいことは「安全は確保しているからできるだけ早く倒せるように頑張ってください」

ということだな。

試験を受けている空間の直ぐそばに教師と思われる人物が4人座っている。あれが点数をつける教室か。


それで、これを受ける学生を直ぐ助けられる位置で見守っている金髪の女性がおそらく補助監督だ。


それにしてもシンプルな魔物といっても全長大体5〜7mはあるんじゃないか?この人数分のリザードを試験ように外傷なく捕まえるなんて芸当をできる人がいるのか?


そんなことを考えていると俺の番がくる。

中央に行くと入り口には補助監督の人が立っていて話しかけてくる。


「あまり緊張しすぎないように頑張ってね」


新入生全員に言っているのか。この人数だし大変そうだが、


そんなことを一瞬考えたが直ぐに試験に向け思考を切り替える。

透明な部屋は入ってみると大体広さは30mの正方形くらいの広さだ。


魔物のリザードは直ぐに突っ込んでくるかと思ったが俺の実力を確かめるためかなかなか動かない。


「早く倒したほうが点数高そうだし…俺から行くか」


大きさはそこまで大きくなくていい。1mほどの大きさの氷塊を作り出し顔面に向けてぶつける。


ここからが勝負だ。直ぐに条件を変えて他の能力へ変更する。リザードに少し近づいて足を凍らせる。ここで重要なものは足止めするために足を氷漬けにするのではなく足の皮と地面を凍らせてガチガチにつけること。


「いくら魔物でも直ぐに機動力を捨てる判断はできなかったか」


もっとも、機動力ぐらいしか取り柄のない魔物だからな。あと、最初の攻撃が大したことなかったこともあってか動くことはしない。


その間に3mほどの大きさの氷の槍を空中に作り出す。時間がかかることや、作っている間動けないことを条件に威力と耐久力を上げる。


違和感を感じたのか今更リザードが逃げようともがき始めるがなかなか動けない。やっと片足が地面から離れたが足の皮などが剥がれている。


「終わりだ」


氷の槍を貫通させて討伐に成功した。


記録は50秒


順位で言えば現在6位だが今までのどの人よりも安全に倒せたはずだ。最終的な点数がどれくらいになるかわからないがこれは結果が出るまで待つしかないな。


ここを出ようとするとまた補助監督の人に話しかけられる。


「君、すごいねちゃんと一回一回条件を変えて能力を行使できる人入学時点じゃ少ないんだよ。学園前から勉強頑張ってたんだね。偉いぞ」


すごいフレンドリーな人だった。この人は多分俺とそんなに歳は変わらない。けれど、どこか強い存在感を感じた。この感覚は、俺が席について他の新入生の試験を観察しているときも消えることはなかった。


他の人を見ているといろんな戦い方があってかなり面白い。

「他の人の様子がわかるようにしているのは生徒全体に刺激を与えるためか?」


他にも能力の参考にもなるしこういう形式にしてくれているのは素直に嬉しいな。

炎で蹂躙する人もいれば土の壁で少しづつリザードの動きを制限してから安全に倒す人もいる。


そんな中どこか自信がなさそうな男子生徒が試験を始める。なかなか攻撃しないで怯えている。

「本当に戦闘学科か?」


そんな声も聞こえてくるほどだ。他の学科とは場所は違うはずだし間違える要素は…いや、この体育館に入ってからは矢印はあったが戦闘学科の試験先などはいちいち書いていなかったはずだ。


もしかして、


「すいません!僕戦闘学科じゃないんですけどー!」


その生徒は外にいる教師に大声で助けを求め始めた。


なんで間違える。というかそんな大声で叫ぶと、


「グァアアア!!」


リザードが反応して攻撃を始めた。


やばい、あの生徒危険だぞ!


リストバンドがある以上死なないとは思うが、


俺も含め見ていることしかできずにただ攻撃されるところを見ていることしかできないーー


補助監督の人が生徒とリザードの間に立って落ち着いた声で、


「お座り、」


とはなった。これだけなのに、馬鹿らしいと思うのに…リザードは怯えて床にしゃがんで降伏していた。それを見ていた全員も理解ができない圧に指一本動かすことができなかった。


この後は寮に戻って就寝して明日からは本格的に授業が始めるらしい。

無意識に早足になりながら寮に向かった。

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