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113話 主導者の役割


 悪夢のような一日にも終わりが来る。

 けれど時折思うのだ。


 悪夢の次に訪れるものが平穏な日常ではなく、さらなる困難であるとしたら、果たして自分は折れずにいられるのだろうか、と。


「……ローレライ、イルダはどうしている?」

「身体は無事よ。でも心は……。歌って眠らせたわ。私に出来ることはそれだけだから」

「そっか。明日の朝に行くから、それまで見ていてくれる?」

「ええ」


 夜空の下で、ブレスは〈耳〉をしまい膝に顔をうずめた。

 イルダは生きている。レシャも一命を取り留めた。意識が戻るかどうかは、今後次第だそうだけれど。


「……お前のせいじゃないわ。自分を責めないで」


 船の縁に背を預けてうずくまるブレスの肩に、ミシェリーが寄り添う。

 力なく首を振りながら、でも、とブレスは呟く。


「目の前に居たんだ、ふたりとも。会わせちゃいけなかったんだ。止めようと思えば止められたのに」

「時間の問題だったのよ。今回止めることが出来ていたとしても、いつかはこうなっていたわ。お前が見ていなければ、側にいなければ、誰もこんなに早くふたりの異変に気づけなかった。違う?」

「……わからないよ」


 解ったのは、己の考えの甘さだけだ。

 どうにかなると思っていた。どうにもならないことがあるという現実を、見ようともしなかった。


 どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 考えても考えても答えは出ない。


 肩に爪を立ててうずくまっていると、足音が聞こえた。

 滲む涙を袖に押しつけて顔を上げると、そこに立っていたのはふたりの男。


「ああ、こんなところにいたのですね」

「こちらノーラルド。ネモ様、坊ちゃんは無事でしたよ。……ええ、はい。了解です。では」


 〈耳〉の通信を切ったその男は、はあ、と大きく息を吐いてブレスを覗き込む。


「うちのネモ様をあまり煩わせないでくれませんかね。俺たちはお前等の国取りに大事な主人が駆り出されて、ただでさえ迷惑しているんだ」


「おいよせ、子供相手に」


「いいや止さないね。こいつはもうガキじゃない。お前だって解っているだろうナルクス、これからあの帝国とやり合おうって時に肝心のこいつらがこんな有様じゃあ、こっちの志気はだだ下がりなんだよ」


 暗闇で目が利かないなか、ぼんやりと声を聞いているうちに思い出した。

 彼らはネモの側近だ。


 ネモの護衛として着いて回ることが多い彼らとは、顔なじみではあるものの、こうして直接話しかけられたことは無いままだった。


 緩慢に目を瞬くブレスに何を思ったのか、その男は舌打ちをしてブレスの赤毛を掴み、顔を寄せて唸る。


「しっかりしろよ。あの捕虜が生かされていたのはお前の兄貴が庇ったからなんだろう。帝国人と一緒になってエトルリアをひっかき回したあの男の助命嘆願にネモ様がどれだけ苦心したか解ってんのか? 殺さないと決めたんだったら生かす道を考えてやるべきだったんだ。あんな場所に閉じこめてダラダラと生殺しにしていたから、もう片方のほうも駄目になったんだろうがよ」


「ノーラルド! いい加減にしろ!」


 とうとう声をあげた同僚に嫌な顔をして、男はブレスを手放した。

 隣にいたミシェリーが爛々と金色の目を光らせて唸るのを宥めながら、ブレスは力なく笑った。


 彼の言うとおりだ、と思ったからだ。


「どうすれば、良かったのでしょうか。イルダは……」

「は、知るか。それを考えるのが主人のつとめだ。……ああ、まあアレの主人は兄貴のほうだったか。チッ、八つ当たりになっちまった、気分が悪い」


 顔を背けたその男にため息を吐き、もう片方の男がすまなそうに眉を顰めてその場に膝を着く。


「同僚が失礼しました。どうか失言をお許し下さい。ネモ様が、姿の見えない貴方を心配しておられます。休む前に一度、顔を見せてあげてください」

「……はい。なにからなにまで、申し訳ありません」

「いいえ。それが我々の役割ですから」


 影のある面もちに苦笑を浮かべて、彼は立ち上がる。

 役割、か。


 目を伏せたまま彼について歩きながら、ブレスは兄フェインのことを考えていた。


 ブレスは兄を盲信していた。けれど、幼いころにどれだけ慕っていた兄であっても、あのころのフェインと今のフェインは同じではない。


 ブレスにとってフェインがどんなに良い兄であったとしても、だからといって良き王に成れるとは限らない。


 フェインが主君として、人の上に立つものとして相応しい人間であるかは全くの別問題であるということに、ブレスは気づいてしまったのだった。


 フェインは主人としての役割を、果たしていないということに。




 口調のやわらかいほうの側近に招かれて船室に入ると、ネモはブレスの顔を見るなり「良くないですね」と眉を寄せた。


「あなた、少し前のレシャと同じ表情をしていますよ」

「……自害しようだなんて思ってませんよ」

「だが思い詰めている」


 座りなさいと命じられ、仕方なくブレスは椅子に腰を下ろした。

 側近ふたりは壁際に立ち、置物のように動かなくなる。


 レシャの解毒に付きっきりだったネモの目は充血していた。

 目頭の辺りをぐりぐりと揉みながらいっとき目を閉じ、ふう、とため息を吐く。


「隠し立てせずにおっしゃい。彼らを最も気にかけていたのはあなただったでしょう。今日のことがつらくないはずがない」

「違います。いま考えていたのは、そんなことじゃない」


 自分でも意外なほど、きっぱりと否定の言葉が出た。

 意表を突かれたようすで動きを止めたネモを見つめ返し、ブレスは切迫して問う。


「ネモ様、主人の役割とは何でしょうか。今回のことで思い知った気がしたんです。兄は今のままでは、ウォルグランドの王に成ることなど出来ないと。ふ、相応しくないのではないか、と、思ってしまって……っ」


 その言葉を聞いたネモは言葉を失った。

 いままでひたむきに、一片の疑いもなく兄を王にすることを目的に据えて旅をしてきたブレスが、己の掲げてきたそれに疑いを持ってしまった。


 ブレスはその疑念への不安と、兄への罪悪感で板挟みになっているのだ。


 深刻に眉間を寄せたネモは、ちらりと壁際に待機するノーラルドを見た。

 視線に気づいた男は、気まずそうに目を反らす。


 ため息を堪えつつ、ネモは呟いた。


「私の側仕えが余計なことを言ったようですね」


「いいえ、違います。余計なことなんかじゃない……彼の言っていたことは正論でした。私たちはこんな状況に陥る前に手を打たなければならなかった。

 そうでしょう、だって仮にもレシャは兄に仕える立場だったんですよ。兄はレシャやイルダに対して負わなければいけなかった責任を放棄していた。

 当然のようにかしずかれて、裏切られたら放っておくだなんて、それが兄の考え方なら間違っていると私は思います」


「ですが……」

「ネモ様だったらどうです? しないでしょう、彼らに対してそんな真似は」


 苦悩と自嘲を混ぜたような顔で壁際の側近たちを見、ブレスは顔を伏せた。

 沈黙が流れる。


「……ノーラルド」

「は、はい」

「茶をいれて下さい。よく眠れるように、鎮静作用のある薬草で」

「……は。かしこまりました」


 怒られなくてほっとした、といった様子でノーラルドが席を外す。

 残されたナルクスは「私も外に出ていましょうか」と控えめに提案をしたが、ネモは短くそれを断った。


「残りなさい。ナルクスの意見が聞きたいので」

「……私ごときの浅はかな考えでよろしければ」


 居住まいを正す己の側近と俯くブレスを交互に眺め、ネモは静かに口を開く。


「私はお前たちの主人として、役割を果たしているでしょうか」


 まさかそんなことを訊ねられるとは思いもしなかったのだろう。

 ナルクスは瞠目し、短い沈黙のあと、「あたりまえです」と絞り出すような声音で答えた。


 彼にとっては問われるまでもない、揺るぎないものを疑われたような心境だったのかもしれない。


「ネモ様は私たちにとって最高の主人です。主人を変えろと指示を受けても、その命令だけには従えないくらいですよ」


「しかし私はエトルリアに居た際、屋敷を空けることも多ければ体調を崩して迷惑をかけることも多かった。仕えるお前たちの負担は大きかったはずです。私に仕えることは、楽ではなかったでしょう」


「それはもう」


 ナルクスは懐かしむような苦笑を浮かべ、表情を和らげた。


「ですが、たとえ報酬を苦労が上回ったとしても構いませんでした。改めて思い返せば不思議ですね。結局我々は、ネモ様の信頼に酬いようと必死だっただけなのかもしれません」


「信頼ですか……」


 ぽつりとブレスは呟く。


「ええ。当然我々もネモ様を信じております。己を信用して下さらない主人ほどつかえる甲斐のない者はない。この方の為ならば、と思えるなにかがあるからこそ、忠誠を捧げようと思えるのではありませんか?」


「ナルクス……もう結構です。私、いささか気恥ずかしくなってきました」


 熱弁を振るう側仕えを遮り、居心地が悪そうに癖の強い黒髪を弄るネモ。

 彼らの様子を見、ブレスは苦く笑う。


「……やはり兄は、足りないようですね」

「そうかも知れませんね。ですがあなたは、考慮しなければならないことを色々と忘れているように思います」

「考慮……?」

「良いですか。まず第一に、私は(よわい)百の老人で、あなたの兄君は二十歳を少し過ぎたばかりの若者でしょう」


 見た目が三十代程度のネモが老人かどうかはさておき、実年齢が百であることは確かだ。


 言われてみればそうかも知れない。経験の積み重ねが人物をかたち作るのだから、歳若いフェインが「足りない」のは当然と言えば当然のことか。


「第二に、この場には彼の民が居ません。あの双子とあなたは、言ってしまえば彼の身内です。主君として体裁を取り繕う必要性を、兄君は感じておられないのではありませんか?」


「……ということはネモ様は、取り繕っていらっしゃるんですか?」


 素で動いているものだとばかり思っていたブレスは、やや混乱しながら疑いの目で目の前の男を見た。

 ネモは事も無げに肩をすくめる。


「マルメーレに上陸する前にちらりと言ったかと思いますが、私はこの軍の責任者です。それらしく見えるよう考え、場に相応しい己を装って振舞っているのですよ、これでも」


「それは……考えもしませんでした」


「年季が入っておりますのでね。私だって八十年前は貴族社会に翻弄されるばかりの若者に過ぎませんでした。……まぁ、多少周囲より出来が良くプライドが高かったので、当時も平気な振りをしていたことが多かったですが。ねぇナルクス」


「……ネモ様、八十年前ですと私はまだ産まれてすらおりませんので、分かりかねます」


 微妙な顔で賛同を断った側近に、ネモは「あ」と呟いて誤魔化すように咳払いをした。

 それこそぼけた老人のような発言をした彼に、ブレスは思わず笑ってしまう。


「えー……とにかく、そういうことです。あなたの兄君には確かに足りない部分はお有りでしょう。ですが、始めから完全な君主である者など存在しない。


 誰もが支えられ、あやまちから学び、歳を経て一人前となってゆくのです。それでも他者の言葉に耳を傾けることを怠れば、信用を失ってしまう。


 あなたの兄君は、資質が足りないといって見限るにはまだ早すぎます。だいたい、彼でなくて誰が王になるのですか? 替えも効かないでしょう。


 ああ、もちろん我々としましては、フェイン殿ではなくあなたが玉座についたとしても、一向に構わないとは思っておりますけれども」


 思いもよらないことを言われ、ブレスは呆然とネモを見つめた。

 フェインではなく、ブレスが王になる。言葉を反芻し、玉座に座って王冠を冠る自分を想像する。


「……いや、無いですね。それは無い。それこそ器じゃないです、私では」


 答えを聞いたネモがゆるく苦笑し、ナルクスが優しげな目でブレスを見下ろした。


「でしたら、兄君を王にするのがあなたの役割でしょう。弟ではなく第一の家臣として、彼を支えてやればよい。滅びた国を取り戻そうというのだから、王朝はあなた方が作り上げるのです。()()()()()()()


「あ……」


 穏やかな、静かなネモの言葉を聞いて、目が覚めたような心地がした。同じことをノーラルドに言われたことを思い出す。


 その通りだ。しっかりしなければいけないのはフェインだけではない、ブレスだって同じなのだ。


 信頼は一方通行ではいつか崩壊する。

 信じ合わなければ関係を始めることもできない。


 イルダが離れても、レシャがフェインではなくイルダを選んでも、ブレスだけはフェインを諦めてはいけない。


 フェインが己自身を諦めようとしたその時は、ブレスがフェインを繋ぎ止めなければいけない。


「……側仕えや使用人の皆さんが、どうしてこれほどネモ様を慕っているのか……エトルリアの屋敷にいた時は、実を言うと不思議だったんです。でも」


 滲む涙を振り払い、ブレスは真っ直ぐに目の前の男を見つめて笑う。


「いまはもう、その理由がわかった気がします」


 表情の明るくなったブレスを見、ネモは安堵に目を細めた。


 苦悩が消えたわけではない。ただ、覚悟が決まっただけだ。

 本当に大変なのはこれからだろう。


 それでも、目の前の厚く高い壁に目を塞がれて動けなくなってしまったブレスにとって、手を引いて導いてくれる先達の魔術師がいるという事実は、揺るぎない確かな希望だった。


 一安心といった様子で再び眉間と目頭のあたりをゴリゴリ揉みながら、ふう、とネモはため息をひとつ。


「あー、ところでノーラルド。いつまでドアの前で突っ立っているつもりですか。さっさと入ってきなさい」


 その一声に呆けた顔をドアに向ければ、なんとも罰の悪そうな顔のノーラルドがすっかり冷めてしまったティーポットとカップを持って、大きな背を丸めて入ってきた。


「すみません、その、話を中断するのもどうかと思い……」

「嘘つけ。どうせ彼を見縊(みくび)っていたことに気づいて気まずかっただけだろう」

「黙れナルクス! そんなんじゃねえ!」


 賑やかに言い合いを始めるふたりを空気のように無視したネモが、〈加温〉の印を描いてミルクティーを温め直し、蜂蜜を混ぜている。


「どうぞ。よく眠れますよ。夜明けまで四時間しかありませんが」

「あ、ありがとうございます……あの、ネモ様」

「なんです」

「ネモ様の側近って、私室ではいつもこんな感じなんですか?」

「ノーラルドは大体そうですね。彼らもその場に相応しい振る舞いを装っているのでしょう」


 釈然としない思いで彼らを見つめながら、出してもらった甘いお茶を啜る。

 カモミールの林檎に似た甘い香りと、やさしいミルクの風味がふわりと広がり、冷えていた身体が温まっていく。


 完璧でなくてもいいのだ、と思った。

 主人も、仕える者も。


 ブレスはそう結論づけ、未だ言い合いをしているふたりの男を横目に、同じく茶を啜っているネモにお願いをした。


「ネモ様。イルダやレシャも交えて、兄と我々の今後について話し合おうと思います。仕事を増やしてしまって申し訳ないのですが、同席して頂けるでしょうか」

「青年」


 ティーカップの向こう側で、青混じりの灰色の双眸がにまりと笑みに細められた。


「私はそのためにいるのです。全体の調和をはかるのも、責任者の役目ですから」




 ──赤毛の魔術師がネモの船室から帰って行ったその後。

 ナルクスは茶を飲みながらぼんやりと机に肘をついていた主人の背に、静かに声をかけた。


「ネモ様、いい加減もうお休みになって下さい。明日もあるのですから」


 本当なら一日くらい仕事を休んでゆっくり休養をとってほしいところだが、ナルクスは彼の神経質な一面を知っている。


 ネモは、やることが詰まっていては休むことなど出来ないのだ。

 しないのではなく出来ないのである。


 懸念があれば眠りも浅く、ここのところのネモは睡眠不足。

 エトルリアで寝込んで以来多少はマシになっていた目の下の隈も、濃さを増しつつある。


 故にナルクスは、いい加減眠って貰わなければと思い言葉をかけたのだが、ネモは微動だにせず、返事もない。


「……ネモ様?」


 心配になって横から主人を覗き込んだナルクスは、目を瞬いて口を閉じた。

 机上のティーカップに指を添えたまま、肘をついた姿勢でネモは眠っていた。


 珍しいことだ。


 音を立てないようにネモの指先からカップを遠ざけ、ポットと一緒に机の端に寄せる。

 椅子に座ったままではろくに休めまいが、今起こしてしまったらまた寝付けなくなってしまうかもしれない。


 仕方なく毛布を主人の肩にかけ、そのまま明かりを落とそうとしたところで、客人を船室まで送っていたノーラルドが部屋に戻ってきた。


 ノーラルドは眠りこけるネモを一瞥するなり苦笑する。


「ああ、やっと眠ってくださったか。ナルクス、半分肩かせ。ネモ様を寝台に運んでしまおう」

「だが……起こしてしまったら」

「起きない」


 やけに確信のある口調だった。

 奇妙に思いつつも言われるがままに左右からネモの腕を肩にかけ、立ち上がらせたところでノーラルドが軽々と抱き上げて、寝台に寝かせた。


 たしかに起きる気配もない。

 嫌な予感がふつふつとわき上がり、ナルクスはノーラルドに疑いの目を向ける。


「お前……茶になにか盛ったな?」

「おぉい睨むなよ、ケルビムの指示だ。ケルビムが指示して、カルベネがきっちり調合して分量をはかって寄越したものだから無害だ。ただの鎮静剤だよ。寝つきが良くなるだけだ」

「だが、ネモ様に無断で……」

「ネモ様が言っていただろう、鎮静作用のある茶をくれってよ。この方は全部気づいていて命じたんだ。だからなんの問題もない」


 思い返せばネモは客人に、しきりに「よく眠れるから」とこの茶を勧めていた。

 ノーラルドの言葉に嘘は無いようだ。


 寝台ですやすやと安らかな寝息をたてるネモの顔を見下ろしているうちに毒気が抜けて、同僚へのささくれ立った苛立ちは収まってしまった。


「まあ……仕方がないか。少しでも眠れるのならば」

「ああ、仕方がない」


 ノーラルドと顔を見合わせ、ふたりそろってため息をつく。

 まったく、無茶をする主人を持つと気苦労が絶えない。


 部屋の明かりを落としながら、ナルクスはひとり密かに微笑むのだった。


 本当に、支え甲斐のある主人である。


 実際のところ、ネモは薬を盛られていることに気づいていない。

 ノーラルドがいれたカモミールのミルクティはやたらとよく眠れるので、疲れた時のお気に入りです。

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