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10 リディア

 お腹が空いたわ、それも猛烈に。

 目が覚めて、最初に感じるのが、空腹なんてちょっと情けない、おまけにここ数日は、目が覚める度に同じ事を考えている気がするが、寝ているわけにもいかないので、起き上がると、セレスティナが気付いて飛んで来る。


「リディア、気が付いたのね? 気分はどう? 痛いところは無い?」


「大丈夫よ、セレスティナ。お腹が空いているくらい」


「まぁ、貴方ったら。急に居なくなったと思えば、戻って来ても眠ってばかりいるし、、、」と優しい友人が泣きながら怒っている。


「ごめんなさい、セレスティナ。側にいてくれたのね、ありがとう」


 彼女が落ち着いたので、そのまま階下に降りる。

 エリスおじ様やアレス様、それに私を連れ戻してくれた人にお礼を言って、眠っていた間の話をする。


「三日だよ、リディアが眠っていたのはね。彼に言わせると、向こうの世界から戻って、疲れてしまったようだね」


「だから言ったでは無いですか、貴方がすぐに連れ帰れと言うから」

「三日も我慢したんだ、褒めて貰いたいね」


 つまり私が居なくなって三日、戻って既に三日経っている事になる。

 そしてその間に、エリスおじ様とヒューイと呼ばれた人は、修復不可能な関係になっているみたい。


 只、少々人間関係に問題があったとしても、知らない土地は面白く、驚く事も多くて、ミリオネアにいる時間は、楽しい時間になった。


 四季のあるエルメニアとは違って、ミリオネアは暑い季節がずっと続くらしく、ウエストリアにいれば雪が降る頃なのに、ここでは、肌寒いと感じるくらい。


 森の緑は濃く、花は鮮やかに咲いていて、何時も鳥の声が聞こえている。

 人々の服装も変わっていて、アレス様が大きな布を作って欲しいと言われた意味が分かる。


 女性も男性も、このフェーラと呼ばれる大きな布をとても上手く使う。

 体を覆う服として、日差しが強い時は日除けに、砂浜に行けば敷物として、時には布に荷物を包んで運んだりもする。


 生活も変わっていて、まず数日働くと次の日は休む。

 働く時は、男性も女性も同じ様に働いて、家で食事を作るようなこともしない。

 食事は、小さな屋台が沢山あって、そこで簡単に済ませ、ゆっくり時間をかける事なく良く動く。


 かと思うと、休みの日は家の中で家族と過ごす。

 もちろん外にいる人もいるが、恋人や家族と共に一緒にいる事が多い。


 今までの勤勉さが嘘だったかのように、ダラダラとのんびりと。


 その為か、宿屋のようなものは無く、私達もミリオネアにあるアレス様の家に滞在している。


 周りの人が休んでいる時は、同じように家でのんびりと過ごし、みんなが働いている時は外にでる。

 町を歩き、食事をし、何をしているのかと見ていると、見ているなら手伝えと仕事を教えてくれる。


 そうして手伝うと、当たり前のように報酬をくれる。

 肉や野菜を皮で包んだオロと呼ばれる料理を手伝った時は、焼いたオロを持たしてくれたし、森で野草や果物を集めると、その果物を渡してくれる。


 面白いのは、帰る途中でその果物がジュースになったり、蒸しパンに変わったりする。

 物々交換で生活が成り立っているのかと思えば、ちゃんと貨幣も流通していて、経済が成り立っているのも不思議だった。


 中心の島には、王族と呼ばれる人達がいるようだが、滞在した島にはそんな人達はおらず、みな同じように働いていて面白い。


 そんな陽気な人達の暮らす島であったが、それでも、一度壊れた関係は修復されることなく、一カ月もすると戻ることになった。


「おじ様ったら、大人げない」

「僕より向こうの方がずっと年上だと思うけどね」


「あら、そうなのかも」

「それに僕だけではないだろう?」

「それもそうね」


 セレスティナは、私が居なくなったのがヒューイのせいだと思っていて、彼が近づくと、過剰に反応するようになっていた。

 年上の彼女は、私に何か起こってはと、必要以上に気が張っていて、そろそろ限界になっている。

 おかげでサイラス様と離れているのも、考える時間が無かったみたいだけど、、、


「ミリオネアを色々見ることが出来たし、少し早いけど仕方ないわね」


 残念に思う必要はない。

 精霊の王様と約束もしたのだから、何年かすればまたここに来ることになる。


 その時は、自分の家族と共に。

 不思議な気持ちがする、来るときは何となくでしか無かった気持ちが固まっている。


 これが恋なのかと聞かれると分からないが、離れたくないという気持ちははっきりしている。

 ウエストリアに帰るまで、ゆっくり時間があるのだから考えればいい。


 そんなことを考えて、ロートアの港町に着いたら、サウストリア家の貴族に出迎えられた。

 エリスおじ様は、しまったと逃げ出そうとするけれど、それもファーレン様がいれば諦めるしかない。


 これでしばらくは、社交の時間が始まる。

 早めにミリオネアを出てしまって、急いで領地に帰る理由を見つけられない以上、おじ様も私も諦めるしかない


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