05 ロートアの港
「おい、アレス。いつの間にガリウス商会と繋がりが出来たんだよ」
「どう言う事だ?」
「客人が待ってるんだ。ガリウス商会からの紹介状持ってさ、ミリオネアに渡るだけならって、他の奴らも声をかけたんだけど、お前にって3日前から待ってんだよ」
ガリウス商会と聞いて嫌な予感がする。
商会としては特に大きいと言う訳では無いが、他が扱えない商品や、交流の少ない地域の物を扱っていたりする商会で、商隊も独立して動く。
他の協力が無くても資産や警備がしっかりしている証拠で、エルメニアではウエストリアと特に繋がりが強いと言われている。
他の商会への影響力も大きいので、繋がりが出来るのは有り難いが、今回に関しては望んだものではない。
「ほら、あの人だよ、カイって言ったかな。礼儀正しいし、金払いもいい。それにあの見た目だろ? 女達も五月蝿くてさ。」
入口から入って来た人に視線を向ける。
茶色の髪と瞳、一見華奢に見える体型と女性かと思えるほど整った容姿、変わった形の魔道具を左手に付けたその人が、自分を見つけてこちらにやって来る。
冗談じゃない、いくら金払いが良かろうがこんな人間を自分の船に乗せたくは無い。
視線が合った時から、自分の生存本能が危険を知らせているし、それもあながち外れていないはずだ。
「やぁ、アレス・ノア殿で良いのかな?」
「はい、カイ殿とお聞きしましたが、念のため紹介状を見せて頂けますか?」
「もちろん」と彼に紹介状を渡される。
紹介状には彼と共にミリオネアに送る商品の品目が記載されていて、最後に、ガリウス商会では無くウエストリア伯のサインが記載されている。
「分かりました、商品はどちらに?」
「明日、届くよ。それで良いかな?」
「承知しました」と納得した意を伝える。
カイと名乗ったその名前に意味はない。
彼女の周りで彼と思える人は、一人しか思い当たらないし、おそらく間違っていない。
アレスと一緒に到着した女性達に声をかけ、荷物を運んだりしている彼を、セレスティナ嬢は知らなくても彼女はそうではない。
何となく口元が笑っているし、視線が分からない様にフードを深く被って誤魔化している。
嫌な相手が来たものだ。
彼が来るくらいなら、あの護衛や弟の方がまだマシだった。
ここまでの道中も、殆ど彼女との時間は取れていない。
彼女は侍女の役に徹していて、セレスティナ嬢から全く離れない。
彼女をウエストリアから連れ出すのは、思った以上に上手くいった。
警備や道中の手配で出発までもっと時間がかかると思っていたが、セレスティナ嬢が同行する事でその問題は解決されていた。
しかし、逆にセレスティナ嬢が同行した事で、彼女との時間が失われている。
彼女と共に過ごし、自分を知って貰いたいのに、このままでは本当にミリオネアに連れて来ただけになってしまう。
国を離れればと思っていたのに、あの男まで来たのでは多少強引な手段を取ってでも近づくしかない。
「さて、どうするかな」
おそらく彼等より有利な点は、ミリオネアの事を知っている事だ。
これから数ヶ月、今までの知識がどのくらい使えるか、最大限の努力をするしかない。
何度考えても、彼女を諦められないのなら最後まで足掻くしか方法はないのだから。




