蹂躙と変化
魔王軍との戦闘をあっさりと終わらせてしまったと後悔
とは言え、このままあっさりと終わる魔王軍ではないと思いたい
後、新年度という事で少々ごたついているため、次回の投稿が遅れるかもしれません
遅らせないように努力はしますが遅れてしまったらすみません
第4話 戦争という名の蹂躙
『魔王軍のほぼ100%が作戦範囲に入りました』
「わかった。作戦を開始してくれ」
『はっ!』
俺がそう言うと、本陣の後ろ側から砲撃の音が聞こえてきた。
これで魔王軍との戦争が始まった訳だが、相手にとっては訳もわからずに地獄に放り込まれた状況になるだろうな。
何故なら見えない敵からの攻撃で確実に、そして1回の爆発で複数人がくたばる状況なのだから。
俺だったら例え、勇者と同等のチート能力をもらったとしても裸足で逃げ出すレベルの恐怖でしかない。
それほどまでに、砲兵部隊が操る大砲から出た砲弾の嵐は怖いのだ。
そうしていると、
『だんちゃ~く、今!』
と言う掛け声と同時に、観測機からの映像で映し出された魔王軍の地面が火山の噴火の如く吹き飛んだ。
『弾着、確認!そのまま、効力射始め!』
ちゃんと目標に砲弾が当たったのか、砲兵部隊は一気に砲弾を発射し始めた。
「始まりましたね~」
「あぁ、これで魔王軍に目をつけられるだろうな」
「ほぼ確実につけられるでしょうね」
「はぁ、やらかしたなぁ~」
俺は、今後の事を思ってやや憂鬱な気持ちになった。
神聖ハデス教国は最初の頃とは違ってずいぶんと安定した状況になっているし、周辺各国とも商業ギルドを通していい感じに関係を結んでいる。
ダンジョンの方は、冒険者ギルドによってランク分けされた冒険者がそれぞれの目的でダンジョンに潜って目的の依頼をこなしている。
そのため、欲張りすぎなければ怪我はするものの死なないで依頼が達成できるダンジョンとして有名になった。
だが問題は、頼まれてやってしまったこの戦闘で魔王軍が俺達に目をつけて攻め込んでくるのではないかというものだ。
戦闘自体は嫌いではないが、100年戦争のように長くて苦しい戦いは嫌いだ。
それはともかく
今後はいまいち把握できない魔王軍も視野に入れつつ、国の方針を決めていくだろうからこの戦闘が終わったらクロムに伝えておこう。
俺がそう思っていると、
『敵、魔王軍の動きが鈍くなりました!』
「わかった。このまま、フェーズ2に移行してくれ」
『了解しました!フェーズ2に移行して近接航空支援を行いつつ、戦車部隊を前進させます』
「あぁ」
と、魔王軍の動きが鈍ったところを見計らって戦車部隊を前進させた。
戦車部隊に装備させている戦車はレオパルド2A6と言う戦車で、2000年代に入ってドイツが生産している主力戦車である。
この戦車は、1970年に開発されて翌年には試作車が完成。その後、改良を重ねていって1977年にはレオパルド2として発注された。
そして、時代の流れとともにさらなる改良が加えられて2001年にはA6でひとまずの完成を見たという所である。
この戦車を選んだ理由は、機動力が高い上に堅実では発展性があるからであり、アメリカの主力戦車よりもコストが安くすむという利点もある。
安くすむと言っても、1両あたりのダンジョンポイントは30万とかなりの高額ではあるが国として栄えているダンジョンでは腐るほどダンジョンポイントが生産されるため、これと言って気にしなくていい。
そもそもダンジョンポイントは、ダンジョンに関係する所で人々が満足した時に発生するもので満足したの度合いによってポイントの生産が異なってくる。
例えば、ダンジョン内部で宝物を発見した時に発生するポイントが程度にもよるけれど最低でも100から最大で1万ポイントである。
一方、ダンジョン内部で倒したモンスターから得られる物をダンジョンの近くで商品に加工して売った場合、1000ポイント前後になる。
1つあたりのポイント発生数で見るならば、宝物を見つけさせた方が効率的に見えるが希少価値がある宝物ほどダンジョンポイントが多く必要になるため、ポイントを得るためにダンジョンに工夫を凝らさないといけない。
一方、ダンジョンの近くで加工させて商品として売る方は軌道に乗せるまでにいろんな建築物を建てないといけないため、最初はとても大変だが乗せた後は大量に生産できるメリットがある。
俺達が選んだのは加工させる後者の方であり、俺が保有している膨大な魔力値と数多くいる配下のモンスター達によって様々なダンジョンが楽しめる複合型ダンジョンにできあがった。
そこに、迫害を受けて流浪の民になっていた亜人達を迎え入れた上に宗教団体が入ってきて国ができたため、冒険者ギルドや商人ギルドが参入して膨大なダンジョンポイントが入るようになった。
今ではダンジョンポイントが10京ポイントと言う馬鹿げた数値になっていて、このまま行けば国際宇宙ステーションそのものができるんじゃないかと見ている。
とは言え、当面の間は緊急事態に備えてダンジョンポイントには余裕を持たせつつ、国として発展させていく必要がある。
理由は言わずともがな。
そうしている内に、一連の戦闘を見ていた貴族達が俺達の本陣に入ってきた。
「は、ハデス殿!いったい、何がどうなっているのです!?」
「あの火山の噴火のような魔法はどうやったら使えるんです!?」
「そもそもあれは何なんです!?」
どうやら、俺達の戦闘を見て驚愕しているのだろう。
慌ただしく聞いてきたが、俺はこう言って彼らの質問に答えなかった。
「あれは我々が独自に開発した兵器でございます。です故、詳細な情報は開示できません」
「「「なっ!?」」」
彼らは驚きのあまり、魔王軍との戦闘前に決められた役目を忘れて観測機からの映像に呆然と見ていた。
そのため、最初の砲撃から数時間後には魔王軍の9割以上を喪失させて魔王軍侵攻を阻止した。
その上、敗走する魔王軍の追撃線を行ったために侵攻してきた35万もの魔王軍のうち、生き残って捕虜になった魔族は500人にも満たなかった。
~~~~~~
アレマーニャ帝国 帝都 王宮の会議室
「地面が吹き飛んだ後、鉄の箱が前進して長い筒から火を噴いたかと思ったらオークの体に穴を空いたんだ」
「空飛ぶ鋼鉄の鳥が何かを落としたら土煙を上げたぞ!」
「それどころかパパパッ!と音がしたら敵兵が倒れていった!!」
魔王軍との戦闘から1週間が経ち、帝都ではハデス軍が魔王軍との戦闘で見せた圧倒的な戦闘(という名の蹂躙)を見た貴族達が思い思いに発言していた。
それを聞いた他の貴族達も半信半疑の思いで発言をしているため、会議は混沌としていてなかなか前に進まなかった。
それを見かねて、国王は混沌とした会議を制止させて同じく現場に居合わせた第1王女のテレサに発言を求めた。
すると、
「同じ現場に居合わせて最前線で戦った私から言わせてもらうと、彼らほど頼もしいと感じた事は今までにありませんでした。何故なら、彼らは彼らの指揮官であるハデス殿を慕い、彼のために勇敢に戦っていたからです」
と、言った後はこの国の軍隊との比較が続いていき、それが30分以上も続いていった。
その結果、しばらくしてからアレマーニャ帝国では勇者に頼らなくても戦えるように魔方陣の研究と失った兵力の補充に邁進するのであった。
~~~~~~
神聖ハデス教国 ダンジョン本部
アレマーニャ帝国が混乱に陥っている中、俺達の帰還を歓迎したのはクロム達の教団と亜人達を送り出したその家族達だった。
出陣の際に派手に出て行った後での被害の少なさだからだろうけど、魔王軍の残党狩りを行う時に戦車部隊に随伴した亜人達にある程度の被害が出た。
被害と言っても、負傷者が10人ほど出たのだが幸いにも体の不自由になるような傷は受けていないし、彼らの代わりにホムンクルス・ゴーレム達が損傷を受けたからよかった。
そのため、帰還してから2日間の間は部族内で宴会をしている。
何故、部族内でかと言うと亜人達の人間不信は未だに解消されていないからで、ダンジョン付近ではギルドと国の共同主催で祭りが行われている。
亜人達の人間不信はそれまでの経緯を考えれば仕方ない事なのだが、それよりも問題なのがダンジョン本部のゲストルームで起こっている。
「しかし、伝説のズライグとグイペルに出会えるとは至極光栄です!」
「私も興奮で気を失いそうです!」
「その割にはしっかりと食べてるよね~」
「もうお腹いっぱいだよ~」
ズライグとグイペルの向かい側に座っているのは魔王軍の幹部であり、今回の魔王軍侵攻の首謀者でもあるプロメとキロフが座っていた。
この二人は、魔王軍の中でもかなりの冷静さを持っていた方なのだが派閥争いに負けて、押し出されるように人間界に侵攻を始めたと説明した。
そのため、2人は手始めに近くの国を滅ぼして自分達の国を作ろうとしたが、最初の戦闘でかなりの損害を出した上に俺達との戦いで手下の魔族達が全滅したらしい。
その事に関して謝罪すると、
「気にするな。どうせ、長く生きられない者達だったから」
と、寂しげに言われた。
なんて言っていいかと迷っている時に、手が空いているであろうズライグとグイペルが来てくれて話し相手になってくれた。
やはり、女性同士の方が話が弾むようで小一時間、ずっとしゃべり続けている。
そして時折、俺に話が振られるために中座するタイミングを掴めずにいる。
「ハデスー?ちょっといいかしらー?」
(ナイスタイミングだ、バエル)
俺は心の中でガッツポーズを取って、ズライグ達に合図してバエルを呼んだ。
「なんだい?バエル」
「亜人達があんたと話がしたいって言って私の話を聞かないんだ」
「俺に話?」
「重要な案件だから早めにしておきたいと言うから客室で待たせているけど、どうする?」
「重要な案件ねぇ?」
この手の話って言うと、あまりいい予感がしないから乗り気ではないが行くしかないんだろうなぁ。
とは言え、彼らの話を無視する訳には行かないから行く事にした。
「わかった。すぐに行くと伝えてくれ」
「はいよ」
俺はため息を吐きつつ、亜人達が待っている客室に向かったのだった。
~~~~~~
「え?娘達を娶ってほしい?」
「あぁ、普段からお世話になっているからな。そのお礼をしたいんだ」
「・・・」
案の定、俺の予感は当たっていてそれぞれの部族にいる頭首の子女を俺に提供して俺との縁を強くしたいのだろう。
今でこそ、配下であるバエル達と交流を持ってハーレム状態なのだが赤の他人と1から始めるとなると途方もない苦労が発生するな。
しかも部族も1つや2つではなく、20以上の部族が国の中の思い思いの場所に本拠地を築いて暮らしているのだ。
そこから1人ずつ、子女を俺に渡すとしても最低でも20人以上になる。
本来ならば喜ぶべき問題なのだが、先客としてバエル達72柱の他にズライグとグイペルがいるため、これ以上に嫁が増えると腎虚で倒れてしまうかもしれない。
(何だろう、うれしい問題なのに全く喜べない)
俺がどうやって断ろうかと考えていると、
「という事でよろしくなぁ~、ハデス」
「え?ちょ・・・」
と、勝手にリクトが俺に任せて部屋を出て行ってしまった。
そして、他の部族長の人達も俺に声を掛けてからぞろぞろと出て行ってしまい、残されたのは俺と子女達だけになった。
その後、彼女達の話を聞くと家族と相談し合って決断したと言い張っているが彼女達もまた見合い結婚の犠牲者なのだろうと思い、説得させるために今日はダンジョンに止めさせる事にした。
俺は、国の頂点に立つのも楽じゃない事を思い知った瞬間でもあった。
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