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明日の席

作者:浦衛門
最新エピソード掲載日:2026/10/22
十八歳。受験を終えた私は、もう通う必要のない塾に足を運んでいた。

合格発表を待つだけの日々。長い間、合格することだけを目標にしてきた私には、試験が終わったという実感がなかった。何かをしていないと落ち着かず、かといって、何をすればいいのかもわからない。

そんな私の隣には、いつも一人の人が座っていた。

年齢も、名前も、よく知らない。いつからそこにいるのかも覚えていない。ただ、その人は私が塾に来ると決まって隣の席にいて、何かを尋ねれば、少し考えてから答えてくれた。

「これから、どうなると思う?」

そう尋ねても、その人は具体的なことを何も言わない。

「それは、まだ言えないな」

いつも、そんな曖昧な返事ばかりだった。

それでも、不思議と居心地がよかった。受験の結果も、その先の人生も、何もわからない私にとって、その人と過ごす時間だけが、変わらないもののように思えた。

ある日、その人が突然、こんなことを言った。

「さよならの練習をしよう」

意味がわからなかった。

けれど、その人は真剣だった。

私たちは、それから何度も別れの練習をした。

「じゃあ、また」と言って席を立つ日。

「元気で」と言って笑う日。

何も言わずに教室を出ていく日。

どれもうまくいかなかった。別れの言葉を口にするたび、私は何か大切なものを失うような気がして、結局、翌日も同じ席に戻ってきた。
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