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第27話 (最終話)まだ見ぬ物語へ

屋根裏の窓


風の音がした。


最初に聞こえたのは。


それだった。


木の匂い。


古い箱の匂い。


乾いた埃の匂い。


MYUは目を開けた。


屋根裏だった。


アシュウッドの家。


いつもの屋根裏。


いつもの窓。


夕方の光。


隣には。


コット。


そしてフィン。


三人とも転がっていた。


「帰ってきた。」


コットが言う。


「帰ってきたね。」


MYUも笑う。


なんだか。


とても長い旅だった気がした。


でも。


時計を見る。


三時十二分。


屋根裏へ来た時間と。


ほとんど変わっていなかった。


「不思議。」


MYUが呟く。


「冒険ってそういうもの。」


コットは得意そうだった。


赤いリストバンド


窓辺に座る。


風が吹く。


MYUは手首を見る。


赤いベルベットのリストバンド。


ちゃんとある。


コットにも。


同じもの。


少しだけ安心した。


「ねえ。」


「なに?」


「本当にあったのかな。」


コットは考える。


珍しく。


少し長く。


そして。


笑った。


「どっちでもいいんじゃない?」


「え?」


「楽しかったし。」


MYUは笑った。


それは確かだった。


窓の向こう


外を見る。


ウィローウッドの森。


夕暮れの木々。


遠く。


親子岩。


その向こう。


小さく湖が見える。


何も起きていない。


ただ静かな景色。


でも。


MYUには分かった。


世界は思ったより広い。


地図に載っていない場所もある。


知らない物語もある。


まだ見たことのない冒険もある。



フィンの発見


その時。


フィンが何かを見つけた。


古い木箱の下。


尻尾を振っている。


「わふ!」


MYUが覗き込む。


小さな金属の筒だった。


真鍮色。


古びている。


でも。


とても綺麗だった。


「何だろう?」


コットが拾う。


軽く振る。


カラン。


中で何かが鳴った。


「開けてみる?」


MYUが頷く。


コットが蓋を回す。


すると。


中から。


丸められた紙が出てきた。


古い地図。


そして。


一枚のカード。


MYUは読む。


そこには。


こう書かれていた。


『月を忘れた塔へ』


沈黙。


コットが顔を上げる。


MYUを見る。


MYUもコットを見る。


フィンはもう尻尾を振っている。


三秒。


沈黙。


そして。


「行く?」


コットが聞く。


「行く。」


MYUが即答する。


フィンが吠える。


「わふっ!」


夕暮れの屋根裏に笑い声が響く。


その笑い声は。


まだ少しだけ子供で。


まだ世界を信じていた。


最後のページ


窓の外。


ウィローウッドの森。


風が木々を揺らす。


遠く。


遠く。


誰にも見えない場所で。


小さな鐘の音が鳴った。


チリン。


ほんの一度だけ。


MYUは気付かない。


コットも気付かない。


けれど。


その音は。


新しい冒険の始まりを告げていた。


地図には載っていない塔。


まだ誰も知らない物語。


そして。


いつか。


少女が大人になり。


別の物語へ歩いていく未来。


そのずっと前の。


幸福な年代記。


ーおしまいー


(MYUの冒険 ― MYUとコットの秘密の冒険 ― 完) 

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