オーク戦の後始末
騎士たちが魔石回収している間、僕らは他の魔物が寄ってこないか、生き残りのオークがいないかを監視。
監視しているのは主に侍女軍団と団長と文官、そして魔導士爵の三人と僕だけどね。
団長は全体監視と指示。
侍女軍団は細かな映像の確認。
僕らはそれらに従い気になるところを詳細に確認していく。
はぐれを何体か倒したところで知らせが入った。
「応援の騎士団が到着されました」
近隣に応援要請を出していた騎士団が到着したらしい。
ずいぶん早いね。
普通に行くと早朝に出ても翌日の夕方くらいにはなるのに、まだお昼時だ。
要請を出したのは、一昨日の夜だから、どんなに急いでも昨日の昼出発じゃない?
軍を動かすってのは、大変だからね。
とか思ってたら騎士と従者だけ三〇組ほどで、自動車を使いほぼ休まずに来たらしい。従者がw
騎士は後ろで体力を温存してたとか。
お疲れさんだね。従者のみなさん。
でも急いで来てくれたけど敵はもういないんだよ。
せっかくだから魔石集めにでも参加してもらいますか。
参加すればいくらかおこぼれがもらえるし。
キングやジェネラルなど、大物は真っ先に回収済みだから、これらをネコババされる恐れはないしね。
あとは普通のオークかせいぜいマジシャンかファイターの中級程度だから、こっそり懐に入れられても痛くない。
なにせ中級魔物だけでも百体以上いるらしいからね。
上級魔物は今回五体もいたらしい。
よく生き残れたね。
普通今回のような上級魔物の支配領域開放なんて眷属がいない、あるいは少ない上級魔物のところを狙うもんだ。
上級魔物一体だけだって、相性次第では少なくない被害を出すと言われているのに、多数の眷属がいた上、上級魔物五体とか、下手をすれば王都でさえ壊滅してもおかしくない。
甘い見積もりで突っ込んでいったため第一王子の軍団は全滅した。
こっちもFCSやドローンがなければ同じ目にあっていただろう。
しかしこちらの被害と言えば焼き畑をちょっと踏み荒らされただけだ。
いや、魔石を撃ち落とされたのが何人かいたっけw
まあ、今回の失った魔石を補って余りある収穫があったから良しとしよう。
襲撃の規模を考えると奇跡と言ってもいいくらい軽い被害だ。
うん、間違いなく、僕なんかやっちゃいましたか? 案件だね。
「アルカイト、出迎えに行くぞ」
「はい」
僕は本宮を出て、離宮の正面玄関に向かう。
いきなり大量に他領の騎士を離宮内に迎え入れることは危険だからね。
玄関先で待っているのだ。
「代表者を入れろ」
「はっ!」
門が開けられ、一人の騎士が進み出て、僕らは定番の挨拶を交わす。
「我ら決死隊はフラルーク殿下の救出、それがかなわない時は運命をともにすべく志願し、先陣としてまいりました。何でもご命じください」
「うむ、早急な支援感謝する。ここまでの道のり夜通し駆けてきたと聞く。ご苦労であった。諸君らにお願いしたきことは魔石の回収である。急ぎ回収せねば他の魔物共が押しかけてきかねぬからな。疲れているところ申し訳ないが魔石を速やかに回収して欲しい」
「は、魔石の回収、承りました……はい? ま、魔石の回収でありますか?」
死ぬつもりで支援に来て、魔石回収とはわけがわからないだろうね。
「オークの群れは我が騎士団が殲滅した。現在魔石の回収作業に当たっているので、それに加わっていただきたい」
「す、すでに殲滅されていたのでありますか!? 思ったより少ない数であったということですか?」
「そうであるな。全部でざっと四千体ちょっと、上級魔物とされるオークキング一体とジェネラルが四体、中級魔物百体あまりが率いる程度の群れだ。まあ、大したことはない。ほぼ半日で全滅させたからな」
「な――――――。またまたご冗談を」
「冗談ではない。騎士団長に案内させる故、実際に確かめられるが良い」
「し、失礼いたしました! 我らは魔石の回収に向かいます」
騎士が回れ右して、門を出る。
騎乗した騎士団長がその後に続いた。
「そういや狼の群れを殲滅したときも応援に来た騎士があんな顔をしていましたね」
「そなたがやらかしたことを見ればあんな顔にもなるだろう。犠牲者を増やさないため今後自重するように」
「犠牲者って、ひどいです父上。まあ、必要があればやっちゃいますけどね」
「……できるだけ穏便に頼む」
「前向きに善処します」
「そなたが成人するまでは我も協力するが、成人したら自分で後始末するように」
あれ?
前向きに善処します砲が躱されただと!
しっかり釘を刺されちゃった。
父上が進化している。
父上2.0か?
僕らは作戦司令室に戻り監視業務を続ける。
魔石がひと通り回収し終わったのは、もう日が落ちてからだった。
これで明日からは狩人や農民が入れられる。
騎士の皆様お疲れ様。
といっても、明日は全滅した騎士団の遺品の捜索とかもしないといけないんだけど、解体とか運搬なら貴族でなくてもいいから処理が進むはずだ。
この暑さですでに匂い始めているので、解体と回収は急がせないとね。
オークキングとジェネラルは先んじて回収し、解体作業を済ませているけど、他は手つかずだ。
「オークって二足歩行する豚とか聞きますけど オーク肉って美味しんでしょうか?」
「どうなんでしょう。この辺じゃ狩られることがありませんからねぇ。確かやつらは雑食性で肉も野菜も果物も、食べられるものなら大抵の物は食べるようです」
僕は魔物事典を思い出しながら答える。
「狼ほど俊敏性はなく、罠を掛けたり、皆で囲んで逃げられないようにして狩りをすることが多いようです。嗅覚に優れ、地中に埋まっている根菜などもよく食べますし、どんぐりなんかは主食の一つとなっているようですね」
どんぐりと言えばイベリコ豚か。
スペインの名産品? で、特にイベリコ・ベジョータとかいうのがどんぐりを主に食べて育った豚だったはず。
向こうではスペインバルには結構通ったからね。
ちょっとした豆知識だ。
まあほとんど和食ばっかり食べてたけど。
何故か出てくるお刺身などの和食に日本酒。
常連のいるカウンターだけ居酒屋と言われる変な店だ。
あそこのお刺身うまかったなぁ。
シェフの目利きのおかげか、海鮮は値段の割にいいものを仕入れていた。
もともとは和食系の店で働いていたが何故かスペインのお店を開いたという変わり種だ。
そのため、スペイン料理はもとより和食系もイケる。
それどころか、昼はスペイン料理じゃなく親子丼と海鮮丼のランチなんかやってたw
夜はお刺身の他、焼き魚煮魚、おひたし等の和食から、餃子や唐揚げとんかつ等、シェフの気まぐれで作られる料理の数々。
しかし転生してしまった以上、もう味わうことはできない。
せめて海鮮だけでも極めたいところ。
また、大公のところに行きたくなってきた。
今度はカワハギとかウニとかでないかな?
「前も言ったかと思いますけど、肉の旨さは種族特性もありますが、食べ物や生活習慣の影響も受けます。雑食性なので肉食独特の血や内臓の臭みはさほどないでしょう。果物なんかも食べているとフルーティーな香りがするかもしれません。狩りのスタイルは罠と人海? 戦術が主で、縄張りを走り回って狩りをするスタイルではなく、あの体の太り具合を見ても脂肪はそれなりについてそうですが力が強いといいますので筋肉もついたバランスのいい肉と予想できます」
「では美味しいのですか!?」
アンジェリカが身を乗り出してくる。
「第一王子が突っ込む前でしたら僕も試してみたいところですが、多分少なからぬオークが食べちゃってますよ? それでもいただきます?」
千人以上が犠牲になり恐らく食べられているのだ。
オークの軍団全員が数食分、十分食えるだけの肉の量だ。
頭からまるかじりなんてしてたら、まだ腹の中に骨や髪の毛、服や宝飾品の一部なんかがが残っていないとも限らない。
「いえ、私もやめておきます」
テンションだだ下がりだ。
「本当に残念です」
オーク肉の生姜焼きとかオークカツといえばファンタジーの飯テロ系では定番料理だ。
これに匹敵するものと言えばドラゴンステーキか、コカトリスの唐揚げか。
海鮮なら巨大蟹や海老の釜茹で。クラーケンのたこ焼きとかもあったかな。
人を食った可能性のないオークが手に入らないものでしょうか。
できれば一部は生ハムにしたいところ。
チョリソーもいいな。
スペイン産のは見た目に反して辛くないんだけど、僕はちょっと辛めのメキシコ風が好きかな。
第一王子許さん!
このまま開拓が進んでいたら、僕らの領地がオークと接近遭遇してたかもしれないのに。
殲滅しちゃったからしばらくこの辺にオークは出ないだろうなぁ。
次はコカトリスかドラゴンに期待しよう。
海産物なら巨大蟹か巨大海老。
クラーケンはイカかタコかの両説があるが、料理するとなるとたこ焼きが作れるタコ説だといいな。
フラグじゃないよ?
強さがお手頃なためか、なろうとかのファンタジー小説では割と食されることの多いオーク。
これより弱いとなるとよく出てくるのは角うさぎかホロホロ鳥かw
なぜかなろう小説はホロホロ鳥の出現率が高いですよね。
このホロホロ鳥ですがてっきり角うさぎと同じような創作の生物かと思ったら、キジの仲間で実際に存在してましたw
日本でも飼育され、食べられる店もあるとか。
何故にファンタジー世界で実在の鳥が採用されたのかわかりませんが、ファンタジーで食される食材で実際に食べられるものは貴重ではないでしょうか。
一度食べに行きたいものです。




