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掃討戦

 「何機落ちました?」

「三機ですね」


 アンジェリカが答えてくれる。

 七機で突っ込んで三機なら上等かな。


「オークの統率乱れています! 少なくとも指揮個体を倒したか重症を負わせたものと思われます」


 団長の俯瞰カメラの映像を見ると、これまで統率が取れていたオークの軍団に足並みの乱れが見られる。


「これより掃討戦に移る。オークを包囲殲滅する。一匹たりとも逃がすな!」


 一定エリアから離れたものを打倒し、オーク共を中央に集めていく。

 攻撃頻度を調整し、攻撃ドローンが一定数以下になって包囲網を突破されないように団長は采配していく。


「アルカイト。よくやった。そなたは我の誇りだ」

「ありがとうございます、父上」


 今はじめて父に認められた気がした。

 これまではちょっと困った息子を見る目であったが、もう一人前の男を見るかのように感じられた。


「皆の者! 最後まで気を抜くな!!」

「「「イエス・ユア・ハイネス!!」」」


 父上の激に、気合を入れ直すみんな。

 さて、もうひと働きしますかね。

 魔石が足りるといいのですが。

 机の上には空になった中級魔石が山になっている。

 混乱した今なら、もっと出力を落としてもいいかもしれませんね。

 眼球を優先指定して、その場合は出力を下級魔石並みに下げる。

 盾スルーは継続。いや、優先対象がなかったら撃ってもいいか。

 さっきは盾で防がれたから苦戦したけど盾ごとぶちかませればもっと簡単に倒せたんだよ。

 後頭部ブッパはもう少し出力を下げてもいいかな?

 変更方針をざっと頭の中で固め、アンジェリカに伝える。

 アンジェリカはその設定を紙に書きコピーして再び皆に伝えた。


「戻ってきましたけど、使える魔石がありますか?」


 まだ机の上の魔石たちは回復していない。


「これをお使いください」

「団長?」

「どうぞ」

「ありがとうございます」


 僕は団長から魔石を受け取り、FCSへセット。

 団長にFCSを起動してもらって、再び戦場へ向かわせる。


「時間をかけてじっくり殲滅していくぞ。魔石が回復するまで包囲するに留めるのだ!」


 オーク共が逃げ出せないようにすれば、あとは時間が解決してくれる。

 僕たちは、散発的に逃げ出そうとするオークのみ狙い、中央で盾を合わせて閉じこもっている奴らを牽制しつつ使い切った魔石の回復を待つ。

 僕も時折休憩しながら、作戦行動に参加した。

 そして動くオークがほぼ見つからなくなったのはもう真夜中も近い時刻となっていた。

 カメラは感度調整があるから、オークを捉えるのに問題はないんだけど。


「ふわぁああああああ」


 僕は眠気を覚ますかのように大きなあくびを漏らす。

 何でもあくびは眠いから出るのではなく、眠るのを我慢するから覚醒させるためにするのだとか。

 うん、夜普通に寝る前にあくびは出ないよね。

 寝るまいと我慢しているときに出る。


「アルカイト、もう休みなさい。残りは我らが始末しておく」


 うん。

 八歳の子供をこんな時間まで働かせるどころか戦争に駆り出すとは、なんてブラックな国なんだw


「わかりました。本宮の仮眠室お借りします」


 地下室の寝所でマリーはもう寝ているだろうし、離宮の僕の部屋までも持ちそうにない。


「戦闘が長引いたときに休めるように、すべての仮眠室はいつでも使えるようなっているはずだ。空いている部屋を使うといい。アンジェリカもご苦労だった」

「では父上、下がらせていただきます。おやすみなさい」

「うむ、おやすみ」


 父上に挨拶して部屋を出る。


 適当に空いている仮眠室に入ってベッドに飛び込んだ。


「お着替えしませんと……」


 アンジェリカの声を遠くに聞きながら僕は眠りに落ちていった。



 翌朝、僕はスッキリと目が冷めた。


「知らない天井だ」


 うん、やっぱりこれは言っとかないとね!


「さて、掃討戦はどうなったかな?」


 戦闘はほとんどが焼き畑区域で行われたから、それほど障害物があるわけでもない。

 ただすでに麦は結構育っているので、根本に伏せられたら見つけるのは難しいかもしれない。

 精霊の検知能力は半端ないから暗闇でも見るぶんには支障ないはずだけど。


「アルカイト様、お目覚めですか?」


 アンジェリカが迎えに来たようだ。


「ああ、入っていいよ」


 そういや、僕昨晩着替えたっけ?

 ちゃんと寝間着を着ている。

 仮眠室だから僕の着替えが置いてあるとは思えないから、アンジェリカが着替えさせてくれたのであろう。

 全部見られちゃった!

 恥ずかしい。

 なんてね。

 実際に着替えさせたのはメイドで、アンジェリカは命じだだけだろう。


「湯浴みの準備ができています。着替えもご用意いたしました。それともお食事になされますか?」


 そこはお風呂、食事? それとも、わ・た・し?

 とか色っぽく言ってくれないかなぁ。

 って、アンジェリカに色気を求めても無駄か。


 すぱーん


「いた」

「また、変なこと考えてますね。お顔にでてますよ」


 そんなにわかりやすいですかね?


「全然そんな事は考えていませんよ? さて、とりあえず湯浴みかな。昨日は遅くまで起きていた上、お風呂に入る暇がありませんでしたからねぇ」


 とりあえず僕は話題をそらしておく。


「承知いたしました。本宮の湯殿が使えるそうですので、そちらにご案内いたします」


 メイドに着替えをもたせて僕は湯殿へ。

 朝風呂でさっぱりしたところで、食事を取り、昨日の作戦司令室へ。


「うわぁ、なんか男臭い」


 そこには徹夜で死屍累々な人々。

 さすがに侍女軍団は引き上げたようだ。

 うん、まさしくデスマーチ後の職場。

 大人たちは一昨日から働き詰めだろうからそれも無理ないけど、本当の修羅場はこんなもんじゃないぞ。

 あんなのが一週間どころか一ヶ月とか一年とか続くんだから。

 って、どんだけブラックかっての。

 昔はブラック企業とかそんなの認識がなかったから、徹夜続きとか当たり前だったからなぁ。

 忘年会などでたまにSEが集まると始まるデスマーチ自慢。

 どんだけ働いたかが自慢になるという、今じゃ信じられないことが普通にあったのだ。


「ああ、アルカイトか。おはよう。昨日は良く眠れたか?」

「おはようございます、父上。大丈夫です。ぐっすり眠れました。父上はお休みにならなかったのですか?」

「いや、朝方少しだけ仮眠した。あいつらの繁殖力は侮れないからな。実際、巣にも何体か子供のオークが見つかったし、母親らしきオークもいた。巣が一つとも限らんから、いくつかの隊に分けて森の中を捜索中だ。一匹でものがしたらそこから大量発生して復讐しに来るかもしれない。逃すわけにはいかないのだよ」

「そうですね。でも疲れ果てていては見逃すこともあるかもしれません。見張りは少し人を減らして、交代で休むようにしてはいかがです?」

「すでに何人かは休んでいるはずだ。このあとオークたちの始末もしないといけないからな」


 死体や魔石を放置しておけば他の魔物が寄ってくる可能性もあるしね。


「すでに何頭かはぐれがうろついていた。大きな群れが出てくるかもしれないので注意するように」

「はい」


 僕はFCSに黒狼の魔石をセット。

 すでに魔力は回復していた。


「さて、見回りに出ますか。アンジェリカも魔物がいないかよく見ていてね」

「はい」


 残敵と巣の捜索及び殲滅は昼まで続き、その後仮眠室で休んでいた騎士たちが起き出し、魔石の回収に入った。

 と言っても四千体以上でしょ?

 いつ終わるんだろう。


 昔からSEやってる人なら一度はしたことがあるでしょうデスマーチ自慢w

 最近は36協定とかできて、デスマーチにも上限が設けられましたが、昔はそんな物なかったので、土日祝日盆正月休み無しとか、24時間勤務とか普通にありましたw

 朝方になるとそのへんに寝転がる死屍累々(死んでませんw)の同僚たち。

 勤務時間になるとゾンビのように起き出してそのまま仕事とか。

 24時間働けるリゲインが売れるのもわかるというものw

 しかし現在はモーレツ社員やら、企業戦士やら、社畜やら言われたサラリーマンはもういない。

 みんな仲間だ仲良しなんだw

 というわけで未だにモーレツ社員しているところは間違いなくブラックです。

 最近はSEなんかよりはサービス業でよく聞くようになりましたけど。

 ワンオペで有名な某牛丼屋とか、飲食店の名ばかり店長とか。

 そういった企業では人手不足でなんて言い訳していますけど、不足しているのは安い賃金で働いてくれる人員なんですよね。

 それなりにお金を払えば人なんていくらでも雇えます。

 まあ、それで採算がとれるかは別ですけど。

 本来ならこんな労働者から搾取しないとやっていけないような生産性の低い会社は潰してしまうべきなのでしょうが、そうすると労働者が困ると擁護する人もいてなかなか実現は難しそうです。


※脱字修正。

あつら->あ[い]つら


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