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悪魔の証明

「その前に、アルカイト様」


 副団長が僕の前にやってくる。


「あれをお持ちではありませんか?」

「あれとは?」

「去年襲われた時、狼どもを殲滅した秘術です」


 直球でぶっこんできたな。

 父上と騎士たちがじっと僕の言葉を待ち受ける。


「ええ、持ってますよ。やだなあ、副団長ってば。副団長が僕に預けたんじゃないですかぁ。もちろん大事に預かってますよ」

「なっ! 俺は預けたりは……」

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか。自分が開発者だと知られるとなんやかんや言われそうだから預かってくれだなんて。副団長ってば意外とシャイなんですね」


 僕に集まっていた視線が今度は副団長に集まる。


「いや、違う、俺じゃない」

「そうですよ、副団長のはずが無いじゃないですか」


 ジャックくんか。

 情けをかけたつもりか墓穴をほったね。


「ああ、ジャックくんは共同開発者でしたっけ? すみません忘れていました」

「な――――、ち、違いますよ」

「どう違うというんですか? 違うというのであればそれを証明してください」


 どういうことだと他の騎士に詰め寄られる二人。


「真っ赤な嘘ですよね?」


 アンジェリカが小声で話しかけてくる。


「何の話です? 副団長とジャックが開発者であることは確定的に明らかです。もし違うというのであれば証拠を持ってきてください」

「開発者でない証拠なんてあるはず無いじゃないですか」


 やってない証拠なんて第三者にずっと監視されてたとかでもない限り、あるわけないよね。


「まあ、こういうのを悪魔の証明といいまして、悪魔がいることを証明するのであれば一人、一匹? を捕まえてくれば話は終わりですが、いないことを証明するのはそれこそ地の果て天の彼方まで探さないといけません。無実の証明とか、無いことの証明というのはとてつもなく難しいのです」

「(悪魔がここにいます。証明終了)」


 アンジェリカが何かをつぶやいたようですが小さすぎて聞き取れませんでした。


「なにかいいましたか?」

「いえ何でもありません」

「まあ、悪魔の証明っていったって実際には単なる屁理屈なんですけどね。本来すべきは副団長が作ったと僕が証明することであって、副団長が作っていないと証明することではないのですから」


 まあ、それに気が付かないうちはほっておきましょう。

 これで剣術の授業でボコボコにされた恨み、少しは晴れましたね。

 ジャックくんは巻き添えご愁傷さま。


「じゃあ僕はあれを持ってきますからみなさんは思う存分二人を問い詰めてくださいね」

「あ、あるかいとさまー」


 副団長の悲痛な叫びを背後に聞きつつ、僕はスキップで部屋に戻る。


「随分楽しそうですね」

「ええ、やっと副団長をやり込めることが出来ましたから。剣術の授業で憂さ晴らししているんですから、少し困ればいいんですよ」

「副団長様、なんて命知らずな。私、アルカイト様の敵には回りませんからね?」

「何を当然のことを言っているんですか。アンジェリカのことは信頼していますよ?」

「はぁ、そうですか。ところで『えふしーえす』っていつも持ち歩いていますよね? なぜ部屋に戻るのですか?」

「ああ、ちょっと修正しておこうと思ってね。このまま外に漏れたら大変なことになりそうなので、自動的に消えるようにしておこうかと。あと人間とか狙うとまずいものはあらかじめ除外ししたり、できるだけ簡単に使えるように初期設定をしておきます」

「なるほど」


 状況終了で一斉削除と、特定の時間経過で削除、かな。

 あと基本的にUSBメモリ一個で一台のインストールが基本ですから、それもなんとかしておかないと。

 暗号キーが、パソコンのID+USBメモリのIDを基本にし、互いにそれで作った暗号キーを交換して保存したりしているから、インストールする機器ごとにインストールメディアが必要で、騎士分作るのはめんどくさい。


「暗号キーはこっちで適当に作ってそれで暗号化すればいいか」


 どうせ不要になったら消えるのだ。

 インストーラをちょっと改造して、暗号キーはランダムで作成してインストールできるようにしておく。


「まあ、こんなもんでしょ。アンジェリカ、『パソコン』を運んでください」

「承知いたしました」


 アンジェリカはメイドにパソコンを持つように命じ、僕らは会議室へと戻る。


「おまたせしました。副団長が作ったあれ、お配りしますね」

「アルカイト様、それはもういいですから。副団長をからかうのはもうよろしいでしょう」

「団長! なぜバレたし」

「……」


 団長、笑顔が怖いです。


「いやぁあ、みんな見事に引っかかるのでつい調子に乗りました。でも騎士たちも悪いんですよ? あまりに簡単に信じすぎです。もっと人を疑いましょう」


 お前が言うな視線ですね、わかります。


「さて、さっさと『インストール』してしまいましょう。はいはーい。一列に並んで自分のスマホ出してくださいねー。喧嘩しちゃ駄目ですよ? 横入りもねー」


 まるで幼児に言い聞かせているかのように騎士を並べ、魔石を外したスマホを受け取り一人ずつFCSをインストールする。


「まだ魔石を入れて起動しちゃ駄目ですよ? うっかり発動したらこの部屋の中の人全員死にかねませんからね」

「うぉ! そういうことは早く言ってください」


 まあ、嘘だけど。


「みんなも言われたこと以外はしないでくだいね? でないとうっかり暴発させてしまうかもしれせんので」

「……」


 暴発する、ではなく暴発させる、というところが味噌だね。

 誰がとは言っていない。

 まあ、これだけ脅かしておけばいいだろう。


「とりあえずここにいる人は全員インストールが終わりましたね。他は警備や斥候から帰ってきたらですね」


 スマホの予備はあるけど管理者がいないFCSをそのへんに放置しとくとかできっこないからね。


「じゃあ、使い方を説明します。魔石を接続してください」


 僕は使い方を説明していく。


「基本的には初期設定でいけるはずです。人間は一応除外するようになっていますが、『バグ』る可能性もありますのでいつでも魔石を抜けるようにしておいてくださいね」


 皆が恐る恐る魔石を接続していく。


「魔石を接続したら起動キーを唱えてください」

「アルカイト様、部屋の中で起動して大丈夫ですか?」

「ここで駄目なら、外でも駄目ですから気にしないでください」


 これだけの人数のFCSが同時に暴走したら、気にするまもなく死んじゃってるけどね。


「……いや、まあ、そうなんでしょうけど」

「発動したら見えない攻撃が一秒間に約九回発射されて、しかも絶対回避不能の攻撃です。通常の環境なら使用する魔力と供給量はほぼ釣り合っているので、壊れない限り無限に撃てます。人が操作しなくてもターゲットを勝手に攻撃しますからねぇ。一度暴走したら誰にも止められませんから気をつけてくださいね☆ミ」

「……」


 かわいく言ったのにドン引きされた。

 解せぬ。


「さて、みんなの運試しと行きましょうか。誰から試してみます?」

「……」

「えっ、おれっすか?」


 みなさん新米のジャックくんを見るのはやめてあげて。

 とっくに彼のライフはゼロよ。

 そういや、なにかと彼が指名されてますよね。

 まあ下っ端なので雑用が任されがちというだけなのでしょうけど。


「ご指名のようですのでちゃっちゃといってみましょう。まあ術者は絶対に狙われないようになっているので術者だけ(・・)は大丈夫ですよ?」

「「「なんだと……」」」

「よっしゃぁ」

「じゃあ、起動キーを唱えてみてください」


 僕はジャックくんに起動キーを教える。


「『えふしーえす』起動。おお、なんか見えるっす」

「それが『ターゲットスコープ』です。基本的には何もする必要はありません。魔物が一定距離に近づいたら勝手に攻撃しますから。適当にオークの群れに突っ込んでいくだけの簡単なお仕事です」

「へー、それは簡単でいいですね、ってめちゃ怖いんですけど。一定距離って何メートルですか?」

「ざっと三〇メートルですね」

「もっと離すことは?」

「これ以上は実績がないので、やるんなら自己責任でお願いします」


 基本設定で駄目でも僕も責任を取らないけどね。

 どっちにしろ責任を取るのは魔物に突っ込んでいく騎士たちだ。


「ならこれでいいっす」


 それが懸命だね。


「まあ、オークはお初なので、距離や威力についての調整方法を教えておきますね」


 僕はジャックくんに操作方法を教えていく。


「まあ、こんな感じですが使えそうですか?」

「とっさに操作しろと言われても無理かもしれませんが、まあ、メモを見ながらなら何とか?」

「ならヘルプを表示しておくといいですよ。ターゲットスコープの右上をポチってしてください」

「ここか? おお、出た!」

「あと注意点としては、魔石はできるだけ目の付近に近づけて持ってくださいね。うっかり離しすぎると、魔力の使用量が増えて、魔力切れになる可能性がありますからね。出力を上げたり、発射頻度を上げたりもね。こっちに出ている魔力計の表示に十分注意すること。うっかり切れるとオークの真ん中で大変なことになりますよ?」

「お、おう」


「もし倒しきれなかったら、自分でなんとかしてください。最低限目は見えなくなると思いますので、あとは火球でもぶつければいいでしょう」

「わかったっす」

「ただ、何体いるかわかりませんが、一斉に突っ込んでこられるとさばききれないので、数が少なくなるまでは『ドローン』を使って遠隔攻撃したほうがいいかもしれません」

「『どろーん』って、空飛ぶ『すまほ』ですか?」

「ええ、騎士団でも何台か導入していると聞いています。まずはそいつにくくりつけて飛ばしてみて、効果を確認しとかないと大変なことになりますよ。主にジャックくんがですが」

「俺っすか!?」

「確認しようがしまいが最初に突っ込んでいくのはジャック君でしょうから」


 騎士団の皆様どうして目をそらしているのですか?

 みんな気持ちは一緒ってことですねw


「みんなひどいっす」


 落ちがついたところで説明は終わりだ。


「じゃあ、みんなへ説明はジャックくんにおまかせしますね」

「えっ?」

「僕はそろそろ、寝る時間なので」

「奇襲の可能性もあるから、一応地下の避難所でルミナリエと一緒に休むように」

「わかりました、父上。おやすみなさい」


 僕とアンジェリカは後宮へと下がった。

 もちろんパソコンは回収したよ。

 残りは明日だね。

 明日まで平穏であればだけど。

 では皆様おやすみなさい。


 みんなのイジラレ役ジャックくん。

 今回もいじられまくってます。

 当初こんなに出てくる予定ではなかったのですが、なんか書きやすいので出番が増えてしまいましたw

 愛されるイジラレ役ですねw


 さて悪魔の証明が証明されたりw と、ネタ満載の今回。

「騎士たちも悪いんですよ?」はあの美味しんぼから「日本人も悪いんですよ」のリスペクトw

「とっくに彼のライフはゼロよ」は遊戯王から。様々な名台詞を世に残した方ですが、今年亡くなられました。惜しい方をなくしました。冥福をお祈りいたします。

「簡単なお仕事です」は悪徳? 求人広告にありがちな募集文ですね。簡単ではあるけど大変でないとは言っていないところが味噌ですね。

 簡単というところに騙されて、ホイホイ誘いに乗る人のなんと多いことよ。

 みなさんも騙されないように気をつけましょうw

「大変なことになりますよ」はもちろん最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学ですね。

 なんかもう煽りまくっていて、怪談話より怖かったのを覚えています。


 本編には他にもたくさんネタがちりばめられていましたが、皆さんいくつくらい見つけましたでしょうか?

 お暇でしたら数えてみてくださいw

 正解しても賞品はありませんけど。


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