僕の考えた最強の王都進出案
さて『僕の考えた最強の王都進出案』をさっさと仕上げてしまいますか。
「まずはどっから攻めるのが効果的ですかね?」
スマホはともかくパソコンや自動車は製造に時間がかかるからなぁ。
あと、下級魔石も値上がり始めているし、短期での大量供給は難しい。
とするとやはり、まずはスマホですね。
スマホなら筐体は型に入れてインク詰めするだけ。
魔導板と魔導線を配置して魔石をセットするだけで完成だ。
魔導板や魔導線も使用量は少ないので量産に向く。
パソコンは魔石なし魔導板なしのやつを販売しよう。
USBにスマホを接続すればパソコンとして使えるはずだ。
つまりスマホに外部キーボードとディスプレイなんかをくっつけた感じになる。
スマホは容量が少ないだけで、今の容量でも普通に使う分には問題ないしね。
基本的にキーボードとディスプレイ用の板と、それらを繋ぐ魔導線さえあれば問題なく使えるはずだ。
アプリも二つ買わなくて済むし、安上がりだろう。
究極的にはスマホ、パソコン、自動車を一個の下級魔石で兼用する形だね。
やろうと思えば家にある重要度の低い下級魔石一個外してくっつければいいわけだから、魔石は自己調達でも問題ないね。
パソコン等は王都周辺の領地でライセンス生産している所があればそこにお願いすればいいだろう。
うちの生産量はだいぶ減らしちゃったし、運搬にも時間とコストがかかるからね。
「スマホならこの領でも大量に作って持っていくのは問題ないんだけどね」
スマホは小さいからねぇ。
父上が王都に行くときの馬車にだって大量に積み込める。
ただしこの領では下級魔石がそれほど用意できないから、どこかの領から買い集めるか自分で調達してもらうしか無いだろう。
王都で買い集めると目立っちゃうからね。
足りなかったらとりあえず使わない魔導具から外す。
今の時期ならエアコンとかのは外してもいいだろうし。
ランプの明かりも少し間引いてもいいか。
省エネとかで廊下の蛍光灯が間引かれた職場を思い出すね。
昼休みに一斉に明かりを消すとか。
あれってすごくわびしい感じがして、やる気が下がった気がする。
ここまでしないと、うちヤベーのかなぁと。
原発停止で電力供給量減少に協力するってのもあったんだろうけど。
まあそこはどうでもいいか。
貴族の屋敷で明かりが落ちているのはちょっと外聞が悪いかもしれないな。
どこを間引くかは、それぞれの買い手に任せよう。
どうせ必要なのはせいぜい数個だ。
「『スマホ』の製造はカイゼルさんにおまかせだね」
スマホはうちで作っちゃったほうが早そうだ。
外にお願いすると情報が漏れちゃう可能性も高くなるし。
大勢が計画を知るほど漏洩する可能性が高くなるから、最初はできるだけ少数で進めるのがいいだろう。
「後はサーバを何個か作ってもらわないとね」
まずは王宮に一個か?
いや、二、三個いるかもね。
結構広いからなぁ。
とするとどこに置くか。
まずは父上の滞在先、王子宮だね。
「本宮にも置きたいけど、こっそりとなると難しいかな?」
おじい様にお願いしてもいいんだけど、今の段階で頼ると外に漏れるかもしれないね。
なにせ王様ってのはほぼ自由がないからね。
常に誰かの目がある。
そこに頼んでしまうと、まず漏れると考えたほうがいいだろう。
「とするとおばあ様かな」
マリエッタとテレビ電話できるといえば、二つ返事で飛び付いてくるだろうし、おじい様にも内緒にしてくれるはずだ。
王子宮と後宮にあればとりあえず王宮の大部分はカバーできるだろう。
基本的に本宮で使えればいいわけで、後宮はそのすぐ後ろだし。
後は周辺貴族街や商業地区にいくつかあれば、王都はまあそれなりにサービスエリア内に入るんでないかな?
正確なマップがないのでわからないけど。
とするとサーバはとりあえず最低五台、できれば十台くらい欲しいかな。
まあ、とりあえず十台分の魔導板を作ってもらって、パソコンは近隣で作成だね。
サーバの魔石は流石にこっち負担だろうからどこかで調達が必要だ。
やはり明かりの間引きか?
その辺は父上に任そう。
「次は販売優先順だね」
先に貴族にくばるのは無しだ。
敵対派閥の目があるから王宮ではしばらくは使ってほしくない。
とすれば商人か。
「商人に売る場合は貴族の目はあまり気にしなくていいし、商人の効率を上げれば経費削減はもとより売り上げが上がり、敵対派閥の懐を直撃するだろう」
メールと電話だけでも随分違うからねぇ。
うちの派閥の領地と連絡が取れるようになれば、交易にも便利だし。
銀行はどうかな?
銀行システムを軌道に乗せるのは入出金できるところがなければいけない。
全部が全部オンライン決済ってわけにはいかないからね。
どうしたって現金は必要だ。
また、現金を預けていないと決済もできないし。
しかし王都に領主のような人はいないし、お金をきちんと管理して何かあったら責任を取れる人がいないと、銀行はうまくいかない。
なにせ信用創造っていうくらいだから、信用がなければ創造もできないのだ。
まあ、銀行は当面僕からの貸し出しだけでいいか。
最低限スマホを得るお金を融資できればいいだけだしね。
製造元はうちだから、僕がカイゼルさんや工房に現金を払えばそれで済む。
領内なら手持ちのお金はたっぷりあるからね。お金の移動も楽だ。
あとは相手にスマホを渡して、スマホを持っていった際に証書を代わりに貰えばいいだけだ。
帳簿上貸したという事実が残ればお金を移動させる必要はない。
適当なところで回収すればいい。
未回収でも実質損害はスマホの筐体と魔導板とかの部材だけで、値段の殆どを占めるアプリ代金は僕ならコピーし放題で、実質無料みたいなものだからね。
しかもメールや電話はアカウント停止してしまえば、使うことはできなくなる。
タダ乗りは許しませんw
魔石を手持ちのものを使ってもらう場合、かかるコストはものすごく少なくなるのだ。
「んで、商人にある程度行き渡ったところで、貴族だ」
こちらもまずはスマホ。
懐に忍ばせられるのであるから、見つかる可能性も低い。
スマホでも普通に表計算とかエディタとかも使えるから、とりあえずはそれで慣れてもらって、必要に応じてパソコンも買ってもらおう。
「で、十分行き渡ったところで、一斉にお披露目だ」
第二王子にやったのと同じだね。
戦争だって目の前に圧倒的戦力がいきなり現れたら、戦意をなくすよね。
戦わずして勝つ。
これぞ一流の軍師というもの。
これをちんたらやると、対応される可能性がある。
たとえば大量の人員を動員するとかね。
戦いは数だよとはよく言ったもので、五倍の効率でこっちが働いても向こうが五倍の人員を動員してくれば対抗されてしまう。
さすがにそれだけの人員を集めるのには時間がかかるから、一気に追い詰めれば勝てるかもしれないが、じわじわ追い詰めようとすれば対抗する時間を与えてしまう。
そんな感じで、優先順位、用意するハードやソフトの内容、方法等をまとめて再び父上のところに持っていって皆で問題点などを洗い出す。
数日後『僕の考えた最強の王都進出案改訂版』が完成し、父上と文官達が大量のスマホとサーバ用の魔導板を持って、王都へと営業に行った。
「なんかお部屋や廊下が薄暗くありません?」
アンジェリカが首を傾げる。
「そう? 気のせいじゃない?」
それからしばらくは離宮がなんか少し薄暗いという噂が流れたけど、僕は気が付かなかった。
気がついていないったら気がついていないって。
みなさんの会社では明かりを間引きしたり、昼休みに消灯したりしていませんでしょうか?
うちでは廊下の蛍光灯が間引きされている他、部署によっては昼休みに消灯もしているらしいです。
廊下はともかくお昼休みはお弁当を食べる人もいるだろうし、本を読みたい人もいるでしょう。
場合によっては仕事がお昼に食い込んでいる人もいるでしょうから、いくら節電とは言えちょっとやりすぎな気もします。
しかし電気代がうなぎ登りな今日此の頃。さらなる節電要請が出ること間違い無し。
新電力会社に切り替えたところなんか、更に大変な状況らしいです。
電力が逼迫すればするほど電気の相場は上がりますからねぇ。
もちろん電力があまればその分安くなるのですが、今の状況では原発が稼働しない限りは改善する見込みはありません。
おまけに契約していたところが潰れてしまったら、更に高額の電気代を払わないといけなくなるとか。
しかし肝心の原発は審査が厳しすぎたり、住民の反対も強く、稼働にまでたどり着けません。
安全を考えれば仕方がないのですが、かと言って廃止が決まっていた火力発電所をこれ以上延命するのも難しいでしょう。
なにしろ火力発電所を廃止するとなると当然その部品などを作っていた会社も製造をやめてしまいます。
壊れたり消耗したりした部品さえ交換することができなくなります。
これは古い原発も同じでしょう。
古い部品を作り続けてくれるメーカーがどれだけいるでしょうか。今後再稼働できるかどうかもわからないのに。
そして問題は稼働しなかったからと言って放射性物質がなくなるわけじゃないし、リスクがなくなるわけでもないということですね。
原発は稼働していようが稼働していまいが放射性物質を作り続けています。
たとえ燃料プールに引き上げていたとしても冷却は必要で、冷却機能が失われれば当然メルトダウンします。
原発行政最大の失敗は最終処分地を決めないで原発を稼働させたことでしょうね。
一体核のゴミはどこへ捨てるんでしょうか?
責任を取って永田町の地下とかどうですか?




