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電子決済

 貸金から始めた銀行業であるが、いつの間にか電子決済の手段として使われていたでござる。

 口座は最初、僕と各領主のものしか無かったが、いつの間にかその領主自ら配下の貴族や商人の口座を開設し、その口座向けに支払いを行い、貴族や商人は必要に応じて現金を引き出すようになったのだ。

 しかも口座を与えられた貴族や商人同士での支払いにも口座決済を利用するようになり、領主から支払われた金だけでなく、領主に金を預け、それを口座に入金して決済するようになったものだから、領主に金貨が大量に集まり始めた。

 その金貨を遊ばせておくのももったいないとのことで、その金貨に対し領主は利子を払い借りるという形を作ることで僕のように貸金業を始めたのだ。


 自分が借りるのではなく、貴族や商人に少し高めの金利で貸し出す。

 それでも街金より低い利率設定にしたため、借り入れする人があとを絶たなくなった。

 その借りたお金も僕のパソコンやスマホ、自動車を買うためだったりするので、僕の資産もうなぎのぼりだ。

 あくまで帳簿上だけだけどね。

 手元には銅貨一枚さえないのが悲しい。


「今の所貴族や大商人との間だけだけど、そのうち小さいところも導入し始めるだろうな」


 パソコンやスマホが高いからねぇ。


「これは少し『アプリ』の購入費用を安くしたほうがいいのだろうか?」


 これまでは魔導士爵の収入を元に計算していたが、もう少し下げれば、もっと普及が進むかもしれない。

 再び魔導士爵を集めこの件について相談を行う。


「流石にだいぶ冷えて来ましたねぇ」


 季節はもうすぐ冬。

 後宮から本宮への移動は渡り廊下でほとんど外だから寒い。

 スマホの暖房アプリを起動させてはいるが、冷気を完全に遮断しているわけじゃないからね。


「アルカイト様が薄着すぎるんですよ。いくら部屋の中が快適だからって、ほぼ夏と同じ格好じゃないですか」


 見ればアンジェリカは全然平気そうだ。

 見た目はたいして変わってないと思うのだが中になにか着込んでいるのだろうか?


「ほとんど外に出る機会がありませんから。部屋の中で快適な格好をしたほうが効率的なんですよ」

「はあ……。マリエッタ様なんか毎日お外で元気いっぱいに遊び回ってるそうですよ?

 兄妹でどうしてこんなに違ってしまったんでしょうね」


 この世界に転生させた存在Xとか何かのせいですね。


「僕もマリーと遊びたいのですが、忙しすぎてどうにもならないんですよ」


 スマホやパソコン自動車に電子決済システムなどなどが急速に広まってしまったため、ちょっとしたバグが発覚したり、使い勝手の改良要望とか次から次に上がって、しばらく授業も免除してもらっている。


「忙しすぎる八歳児とか、庶民や農民でもそうそういませんよ?」

「早く先生たちが代わってくれるといいんですが」


 技術移転も落ち着き、アプリ開発の方に業務の主力を移しつつあるけど、すぐに移行できるものでもないからね。

 まだ、各サーバの運用やちょっとした機能の修正なんかをお願いしている段階だ。

 そんなことを話しているうちに、いつもの執務室へ到着。


「みなさん、わざわざお集まりいただきありがとうございます」


 電話でも離せないことはないが僕は古い人間だからね。

 顔を合わせて話さないとなんか落ち着かないのだ。


「最近はこっちに詰めて作業していることが多いからな。わざわざ集まっちゃいないな」

「そこはそれ。『お約束』というやつですよ」


 軽くカイゼルさんとやり取りして、本題に入る。


「というわけで、最近スマホやパソコンの普及が急速に進んでいる一方、規模の小さいところでは購入できなくて大手と格差が広がっているようなのです。ここはそろそろアプリの値段を下げるべきでしょうか?」

「まだ必要ないと思いますよ?」

「先生、それはどういう根拠で?」

「まず、今『すまほ』や『ぱそこん』を買っている方は文官や商人が主なもので、魔導士爵まで広がっているとはいい難い状態です。ここで下手に下げられたら食えなくなる魔導士爵が大量発生しますよ」


 先生が言うには。魔導具やシーケンスを買うお金の大部分が僕の製品を買うのに使われていて、他の魔導士爵に回すお金が減っているのだそうだ。

 技術移転で製造のお金がもらえはするが、やはり魔導士爵の本業はシーケンスを買ってもらうことだ。

 まだパソコンが魔導士爵全体にいきわたっていない上、すでに導入している魔導士爵はパソコンやエディタの操作に慣れようとしているところ。

 先生やカイゼルさんですら、僕ほどの効率は出せていない状態なので、他の魔導士爵ではいわんやをやである。


「貴族や商人でも使えるお金には限界がありますからね。こちらの売上が上がっているということは、他の収入が下がっているということです。確かにそのおかげで景気は上昇していますが、その上昇分が他の魔導士爵へ回るような状況ではありません。ここで『あぷり』の値段を下げると、更にうちに回ってくるお金が増えて、魔導士爵の生活は苦しくなるでしょう」


「確かにな。『ぱそこん』が高くて買えないのなら、他にもっと安くて必要な魔導具を買ってくれる可能性がある。だが少し頑張れば買えそうとなったらそっちを買ってしまうよな」


 カイゼルさんも同様の考えのようだ。


「そうですね。魔導士爵が技術移転による製造でお金をためて、『ぱそこん』を買って、ある程度使いこなせるようになってからでいいのではないですか? それに今後魔導士爵の仕事は『ぱそこん』用の『あぷり』開発に移行していくでしょう。これまでの魔導書と比べてシーケンスの書きやすさが断然に違いますからね。しかし現在は開発環境を公開しておらず、うちが『あぷり』開発を独占している状態ですので、他の魔導士爵は参入したくても出来ません。アルカイト様はまだ開発環境を公開するおつもりはないのですよね?」


 うむ。

 なるほどね。

 自分だけが独占するつもりならそれでもいいが、共存共栄を考えると今値段を下げるのは得策じゃないか。

 魔導士爵は将来パソコンのためにアプリを書いてくれる人材でもある。

 わざわざ敵対して対抗する別規格のパソコンを作られてはたまらないしね。

 開発者に嫌われると、対抗するかのように別のアプリやOSを作ろうという機運が高まる可能性がある。

 殿様商売をしていると思わぬところで梯子を外されるものだ。


「わかりました。値段はしばらくこのままで行きましょう。ところで先生方の方はどうですか? 『コンパイラ』とかちゃんと使えていますか?」

「まだまだアルカイト様のようにはいきませね。ちょっとした修正くらいならともかく、いちから全てを作るとなるとどこから手を付けていけばいいのかすらわからない状態ですね」


 まあ、今の魔導士爵は大規模開発なんてしたことないだろうしね。

 そのうち大規模開発の手法について講習なんかもしたほうがいいかもしれないね。


「まあ、新規開発は当分見送りでいいでしょう。メンテナンスだけでも手が回らない状況ですからね」

「そうですな」

「アルカイト様はすごいですね。これだけのものをお一人で開発されたのですよね?」

「まあそうですね」


 ライアンさんはだいぶ後からの参加だからね。

 まだ小規模だった時のシステムを見ていないから驚きもひとしおだったらしい。


「特にこの『おーえす』と『えでぃた』それに『こんぱいら』があればまさしく今までの十倍、いえそれ以上の効率で開発が進みますよ。まだまだ使いこなしているとは言えないのがもどかしいですが」

「今後『ライブラリ』が充実していけばもっと効率良くなるでしょう。ライアンさんも早く慣れて、がっぽがっぽ稼ぎましょう。今が他の魔導士爵に差をつけるチャンスです」

「はい、がんばります」


「カイゼルさんの方はどうですか? もうあんまり製造には関わっていませんよね?」

「ああ、領内で買えるやつはだいたい買い揃えたからな。時々追加注文があるがそれも作り置きからさばける程度だ。『さーば』はポツポツ注文があるがそれほど多くないからな。今はまだ時々来る技術移転の講師と、簡単な『ぷろぐらむ』を組んで遊んでいる状態だな」

「じゃあ、収入が減っちゃいますね」

「なに、製造と講師でだいぶ稼いだからしばらくは問題ない。『ぷろぐらむ』が組めるようになればまた収入が上がるだろうしな」

「もちろんカイゼルさんが関わった作業量と売上に応じてお支払いしますよ」

「おう、頼むぜ。やはり持つなら金のある主人だな。あのまま王都にいたら考えられないほど稼げるからな」


「全くそのとおりです」

「陛下に言われて即断した自分を褒めたい」

「そこまでですか?」

「魔導士爵の仕事はなかなか安定しませんからねぇ。教師を務められるようにならないと、普通は安定した収入が得られないんですよ。魔導具なんて、一旦行き渡ってしまえばあとはほとんど壊れませんから修理や買い替え需要がほぼ見込めません。せいぜい魔導線が切れたとか魔石が経年劣化で割れたとか、魔導板が腐食したとかの修理要求くらいですし、新規のシーケンス発注だって、そうそうあるものじゃないですから。大抵はギルドで売っている魔術書の改造で用が足りてしまいます。今後は『ぱそこん』や『すまほ』向けに既存のシーケンスを書き直すなんて仕事もできないわけではないので、やろうと思えばいくらでも仕事はあります」


 暖房や冷房の魔法もスマホ用に僕が書き直したものだ。

 売ってはいないけど、文官なんかには福利厚生として配っている。

 貴族なら魔導書を持っているから不要なんだけど、ちょっとした魔法ならスマホでこなしたほうが便利だったりするからね。

 攻撃魔法でも使わない限りはスマホの魔法量でも十分だし。


「じゃあ、メンテナンスの傍ら、そういう細かな『アプリ』を売っていきましょうか。貴族ならともかく商人になら売れるのでは?」

「そうですね。小規模な方が練習にも丁度いいですし」

「複数の魔導具がひとつになれば、利便性も上がるでしょう」

「あんまりやりすぎると他の魔導士爵の仕事がなくなるけどな」

「じゃあ、練習がてら程々にやりますか。みんなは売れそうなシーケンスをそれぞれチョイスして、『パソコン』や『スマホ』向けに開発してみてください。ただしメンテナンスやサーバの運用が優先ですよ?」


 皆がうなずき、会議は終了となった。


 電子決済といえば前はキャッシュカードやクレジットカードが主なものでしたが、いつの間にやらSuicaにPASMOなどのプリペイドカード方式、デビッドカードに、QRコード決済などなど、様々な種類の電子決済が乱立してしまいました。

 そのためどの店がどの方式に対応しているかわからず、結局現金を持ち歩く羽目にw


 基本的に自分は店舗ではいつもニコニコ現金払いです。

 何も考える必要もなく、とりあえず現金を出せばいい。

 最近はセルフレジが増えてきたので、現金払いも店によって支払い方法が変わるので戸惑うことも多くなってきましたが。

 毎月の会費支払いや通販とか店舗にいかなくて済むときはクレジット払い。

 公共料金は銀行の自動引き落とし。

 家賃なんかは銀行の振込。

 電車はPASMO。使うのはそのくらいでしょうか。


 最近は現金を持ち歩かねーという人がいるみたいですが、店の機械の故障で電子決済が行えず、現金も持っていないとかでレジでモメる人を時々見かけますw

 この間のau通信障害で決済できなかった人もいたようですし、北海道で起こった大停電のときとかも支払いができず困ったとか聞きます。

 機械的トラブルはなくても残高不足で弾かれる人とかはよく電車の改札で見ますよね(何故か自分の並んでいるレーンでやられるような気がするw)。

 そんなとき現金を持っていない人ってどうするんでしょうね。

 飲食店とか食べてから支払いできないことに気がついてももう遅いw

 その時は皿洗いでもして勘弁してもらうのでしょうか?

 それとも無銭飲食扱いか。

 気になりますw


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