表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/140

貸金業

 程なくして僕は貸金業を始めることとなった。

 貸金業を始めるにあたって用意したのが銀行サーバだ。

 ウシ○マくんとか、ナ○ワとか名前をつけたかったが、わけがわからないよと言われたので、普通に銀行サーバにした。


 機能は単純だ。

 特定の口座に向けての入金や、貸出指示。

 口座に入出金があればそれぞれの口座のログに追加する。

 貸し借りがあればそれぞれの口座のログに追加。

 残高照会や取引情報はスマホやパソコンで参照できるようにする。

 基本はこれだけだ。

 あとは内部機能であるがバックアップとして各領主の管理する銀行サーバに取引の情報を転送して、みんなが同じ情報を持つようにした。

 誰かが自分のところのデータを書き換えても、他のところに情報が残っちゃうから不正な書き換えは出来ないはず。


 それからちょっとブロックチェーンぽい機能を入れてみた。

 取引前にランダムで選んだサーバに照会して取引情報に齟齬がないかとか確認し、それから取引を始めるのだ。

 データ自体は時系列で並べるように、各データには前方データのハッシュコードを持たせて、前回の取引を他のサーバから収集できるようになっている。

 最新データでなければ最新データに更新してから処理が始まる。

 複数サーバで同期させることで不正を防いでいるというわけだ。

 サーバが出来たらあとは運用ルールの作成だね。

 基本的に現物の入出金はサーバの管理である各領主に任せる。

 管理と言っても実際にお金を預かって入金処理する。

 出金の依頼があったらお金を出す。それだけだ。

 利子は安価であるが、実際のお金の取り出しにも手数料を取ることにした。


 口座間の振り込みは無料だ。

 現実のお金を出し入れする時以外は大した手間じゃないからね。

 流石にお金を預け入れるときに手数料取られるのは納得いかない気がしたので、手数料は取り出すときだけだ。

 実際のところ、別の領地にお金を振り込んでその領地で大量に引き出されるとお金が足りなくなるから、他から運んでこないといけなくなる。

 そういう時の運搬料なんかもこの手数料に含まれていた。

 んで、まず入金されるのは、僕が稼いだお金だ。

 これまで僕が売ったパソコンやスマホの代金はそれらを運搬した帰りに金貨などで運び入れていたが、今後は各領地の文官が預かりそこの金庫に入れて僕の口座に入金処理する。

 借りたい領地があれば、そこの金庫に入っている残高内で借り入れができる。

 さすがに領地間で金貨を移動させるのはめんどくさいんで、借りられるのは当面そこの領地にある分だけだ。

 ほとんどの取引をオンライン上でできるようになったら、他の領地にあるだけ借りることもできるようになるだろうけど、今は無理だ。

 基本的には僕が稼いだお金をその領地に還元するための仕組みだから当面はこれでいい。


 ただ、お金に不均衡が生じた場合は、多少動かすこともあるだろう。

 その時のための手数料だからね。

 これで、これまで帳簿上だけでしかなかった僕や父上のお金がきっちり分けて管理されるようになったわけだ。

 僕はその稼いだお金を各領主に貸し付けると通達。

 多くの領主はそれを受け入れた。

 パソコンやスマホ、自動車を一気に買うにはお金が足りないからね。

 普通予算なんて年初、つまり春先には決まっている。

 予備費としてある程度余分なお金は用意しているだろうけど、それほど多く用意しているわけではない。


 なので、更にパソコンやスマホ、自動車を買い増せば景気が良くなるとわかっていても、買えないところも多かった。

 しかし僕がその分を貸し出すことで、買い増しができる。

 買わないわけがなかった。

 もちろん買った分は僕の口座に入るので、またそれを貸す。


 一種の信用創造だね。


 しかも預金者は僕だけなので、僕が引き出さない限り破綻することはない。

 支払準備率をゼロにすると事実上無限にできちゃうので、十パーセントとした。つまり十倍までの信用創造に留めることにしている。

 金貨千枚を預け入れれば一万枚が市中に流れるのと同じことになるわけだ。

 計算が正しければ。

 何しろだいぶ前に勉強した事柄なんで、記憶が曖昧だ。

 まあやってみて問題が起こったらその時考えよう。

 実際にはすべてが僕の収入になるわけじゃないだろうから、十倍には達しないとは思うが。

 一般人からお金を集めることになればまた違ってくるだろうが、今のところそこまでするつもりはない。

 父上に入る手数料に関しては、王都への上納金とかパソコンの特許料として支払われるようだ。


 余ったお金は、様々な物資の買付に使う。

 基本的に赤字領だったのだ。

 ちょっと前まで売るものより買う物のほうが多い領地だ。

 パソコンなどを売るようになってお金は入ってくるようになったが、そもそも必要な物がほとんど生産できていなかったため今でも多くの物を買う必要があった。

 なので他領で稼いだ金で物資や人を集め、自領で使っているので、僕のように使い道に困るということはないようだ。

 何しろ開拓地じゃ人も物も何もかも足りないからね。

 そのくせほとんど生産できるものがない、あっても価値が低いものばかりだから、持ち出しが多くなるのも無理はないか。

 新麦古麦変換の錬金術や、僕の領地改革案などでここ二年はなんとか黒字なっていたが今年はそれも出来なかったし。


 普通は国家事業として金と人材を投入すべきところに一部貴族だけに負担させているんだからそりゃあきついよね。

 それを考えれば父上は頑張っていると言えるだろう。

 僕の領地改革案があったとは言え、パソコンも無い時に曲がりなりにも黒字を出したというのだから。

 まあ、そんな感じで金貸し業を始めたのだが、これが儲かる儲かる。

 金利はそんなに高くないのだが、高くない分余計に借りる。

 普通の金貸しから借りるより随分と安いし、窓口業務は各領主に丸投げだ。

 領主が僕のお金をさらに商人に貸し付けても街金より安いから、領主にも儲けがあるし商人も安く借りられて大助かりとか。


 これまでの街金が割りを食っているとは言えるが、僕にだって貸し倒れリスクはあるのだから、もっと頑張ってくれ給えというだけだ。

 あれ、基本的に領主に貸してるから貸し倒れリスクはほとんどないかな?

 いやいや、街金だって安く領主に貸しても貸し倒れリスクなど、ほとんどなかっただろうから、営業努力不足だね。

 僕の場合、領主や商人が借りたお金でパソコンやスマホ、それに付随するアプリを買ってくれるから、貸したお金がほとんどそのままライセンス料やアプリ代金として帰ってくるわけだから、まさしく自作自演。


 おかげで市中にハイテク機器が一気に増えるのだから向こうにだってメリットは有るよね。

 しかしこれで僕がうっかりお金を引き出そうとすると、取り付け騒ぎが起こるぞ。

 僕が僕の銀行に取り付け騒ぎを起こすとかわけがわからないんですけど。

 信用創造が進めば現物の現金より信用上の現金が大きくなるからね。

 実際に手元にある金貨より多くの金貨を貸し出していることになるから、お金が払い出しできなくなるのだ。

 つまり一度貸金を始めたらもう抜け出せない。

 帳簿上の資金は増えるけど、引き出すためには帳簿上だけでお金を動かすしか無い。

 でなければ貸し剥がしして、徐々に現金に替えるかだ。


 もちろんその分市中から金貨が消えるから不況になるだろう。

 他にやるとすれば金貨に対応する紙幣を発行するかだ。

 そうすれば信用創造で作ったお金は紙幣として出まわり、金貨を払い出さなくても済む。

 その人達が金庫にある金貨以上に交換しない限り。

 現金を動かすとやべえけど、銀行券や帳簿上だけで動かすなら問題ないはずだ。


 問題ないよね?


 あとでゆっくり考えてみよう。

 金融関係は専門じゃないからよくわからないことも多い。

 まあ、専門家だって完全に理解し制御できているわけじゃないんだろうけど。

 あくまでできるのは将来の予測で、制御などできはしないのだ。

 気にしすぎたってなんとかなるものじゃないからね。

 なるようになるだろう。

 僕がやるべきはシステムが正常に動くことを保証するだけだ。

 稼働し始めた銀行サーバに問題がないか、僕は暇を見てはモニタリングを続けた。


 ウシ○マくんとか、ナ○ワといえば言わずとしれた「闇金ウシジマくん」と「ナニワ金融道」ですね。

 また、「わけがわからないよ」はもちろん「魔法少女まどか☆マギカ」から。

 一行にパワーワードが三つも含まれているパワーライン? でした。

 どちらも金融の闇(まどかの方は契約したら魂を抜き取られるとか、ある意味闇金よりひどいことにw)を描いた作品ですが、ウシ○マくんとナ○ワの大きな違いは、かたや闇金、かたや街金というところでしょうか。

 闇金の方はもちろん無登録の違法金貸し、街金は一応登録された合法やっていることはちょっとあれですがの金融会社です。

 一方異世界では金融業における許認可制度はまだ確立していませんので、ほぼ闇金と一緒です。

 規制など一切なく、利子やその他条件は双方納得すればいかようにも決められる状態ですので、金利は結構高いです。

 自己破産制度なんかもないので、払えなければ女は娼館へ男は労働奴隷(農奴、鉱山奴隷等)として売り払われます。

 そんな状態ですので主人公の低金利貸出は大歓迎されたわけですね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ