第14章、ロッドの指導②
今年一年、ありがとうございました。来年も読んで下さると幸いです。
お体に気をつけて、あなたが良き新年を迎えられますように。
「アタシがアンタに教えることは一つ。“魔獣との協力”よ。」
ギアが部屋に荷物を置いて早々、ロッドは外に出るよう指示し、修行が始まった。
「「?」」
ギアとイーラは首を傾げた。ロッドは詳しく説明せず、意味ありげにニヤリと笑う。
「ちょっとアタシと魔法戦闘をしてみましょう。アンタたちの絆の強さを見せてちょうだい。―――リリ。」
「あい。」
ロッドが呼ぶと、彼の肩に乗ってぼーっとしていたリリが敬礼した。ロッドの腕にちょこちょこと移動し、身構えた。
「さあ、遠慮はいらないわ。かかってきなさい。」
ギアは急なことに戸惑いつつも、ワクワクした様子で構える。
「…じゃあ、遠慮なく。―――行くぞ、イーラ!」
「ええ…!!」
威勢よくロッドに立ち向かって10数分。
「……く…っ!!」
ギアは地に縫い付けられるように草で縛られていた。
「ギア~!ギア~!!」
イーラのくぐもった叫び声にギアは頭を動かし、声のする方に目を向ける。そこには、草でできた小さなボールがあり、それがゴロゴロ、ボンボンと転がり跳ねている。要するに、その中にイーラが捕らわれているのだ。
「―――ギブアップ、でいいわよね?」
涼しい顔でロッドがそう言うと、ギアは「降参だ…」と悔しそうに呻いた。
「アンタたち、なかなかやるわね。」
そう言いながらギアとイーラへかけていた魔法を解除するロッド。怪我も疲れた様子も、微塵もない。リリはロッドの腕から飛び降りると、イーラに駆け寄った。「ん」と差し伸べられたリリの手を握り、握手を交わすイーラ。
「リリ…あんた結構すごいのね…。」
「? うんー。」
イーラが感心した目でリリを見つめるが、本人は褒められていることがよく分かっていないようで、気の抜ける返事をした。
戦闘中、リリはロッドのサポートをしていたのだが、それがかなり的確で、普段のぼーっとした様子からは想像できないほど隙のない動きだった。
(強敵の動きにばかり注目していると、リリがその不意を突いて攻撃してきて、調子を狂わされた…。そこをさらにロッドに狙われて…。さすがだな。)
身を起こし、リリを見つめながら分析をするギア。
「さて、ギア、イーラ。」
ロッドに声をかけられ、思考を中断するギア。リリとイーラもロッドへと視線を向けた。
「アタシが思っていたよりもアンタたちは仲が良くて、息を合わせることに長けていることが分かったわ。」
頷くギアとイーラ。
「だけど、それだけじゃダメっていうことが今ので分かったわよね?」
これにも頷くギアとイーラ。
「ロッドにばかり気が向いていて、リリに不意を突かれました。」
「完全に油断していた…わね。」
悔しそうに感想を零すイーラに、ロッドは微笑んだ。
「確かに、ふたりとも最初はリリに油断していたでしょうね。でも、リリが“やれる”と分かってすぐに注意が向くようになっていた。そこも素晴らしいわ。」
「でも…やっぱり、リリがこんなに強いなんて思ってなかったから、調子を狂わされてしまったわ。」
「ああ…。そして、そこをさらにロッドに攻め込まれた。」
うんうんと満足そうに頷くロッド。ギアとイーラが真剣に自分の授業を受けていることを喜んでいるのだ。
「それじゃあ、ギアがリリと組んでもリリは強いかしら?イーラがアタシと組んだら、イーラもリリと同じように強くなると思う?」
ギアとイーラは考える仕草をする。
「いいや…。単純に見て、リリはイーラより強いでしょうけど、ロッドと組む場合と同じような強さを俺と組んで維持できるかと聞かれたら…違うと思います。」
「もしあたしがロッド様と組んだら…たぶん、ギアと一緒に戦うより強くなるとは思うけど…。リリほど強くなるかと言われたら…すぐには無理だと思うわ…。」
「そうね。」
「つまり…どちらにも改善の余地があると?」
「協力が足らないとかじゃなくて?」
「ん~そうね…アンタたちそれぞれに伸びしろはあるし、協力も改善の余地があるわ。だけど…アンタたちは、そもそも大切なことが分かってない。だから、思ったように強さが発揮できない。隙だらけで上手く力が揮えない。」
ロッドの言葉にギアとイーラは悩む。しかし、納得のいく答えは出ない。
(大切なことって……何だ?)(大切なことって…何かしら?)
真剣に考えるギアとイーラを見て、ロッドはニコリと意味ありげに笑みを浮かべた。
「さて、それでは、その大切なことが分かるように、アンタたちに課題を出すわ。」
ロッドは、近くにいたツーデルトを呼んだ。
「お呼びでしょうか、主様。」
「ええ。」
そして、ロッドは告げる。
「これからの数日間から数週間、アンタたちが一緒にいる時間を制限させてもらうわ。」
「「えっ?!」」
((なぜ??))
「ギアはアタシの魔獣と行動を共にして。一日一匹ずつ、相棒を毎日変わってもらうわ。最初は、ツーデルトとよ。」
「え?え?」「かしこまりました。」
困惑するギアと、あっさり受け入れるツーデルト。
「イーラはアタシとよ。」
「え?ギアと一緒に修行するんじゃないの…?」
不思議そうに訊ねるイーラに、ロッドはニヤリと楽し気に笑う。
「大切なことを理解して強くなる修行よ。そのために、アンタたちには少し離れてもらう必要があるの。」
「「……。」」
ギアとイーラは顔を見合わせた。その表情で、ギアとイーラは、互いにロッドの発言を全く理解できていないことを察した。




