第9章、歩み寄り①
今回「古の魔法書と白ノ魔女」はお休みです。
「消えろ、人間なんか……っ!!!!!」
その一言と共に放たれたのは特大の炎。
「!!!!!」
ギアはとっさに持っていた杖を構え、魔法を使う。
「〈鎮めよ〉…っ。」
水魔法により炎をせき止めるが、如何せん魔力の差がありすぎるため、押されてしまう。
(どうする?!これじゃすぐに―――)
―――その時。
ピシッ パキン―――!
(しまった―――!!!)
過剰に放出した魔力のせいで、近くに置いていた魔法道具の腕輪が反応してしまった。
二つの魔法道具が作用し合い、……壊れてしまった。腕輪は砕け、杖には大きな亀裂が入った。
腕輪は完全に使えないが、杖は一応使えないこともない。
「く…っ!」
思うように魔法が使えなくなってしまった。水の出力が弱まったり強まったりと、自分の意思に反して勢いが変わる上、水量が少ないにも関わらず魔力消費が著しく激しい。
(杖を取りに行きたいけど…っ。)
予備の杖は家の中だ。取りに戻りたくとも難しい。
バキンッ―――
最悪な事態が起こった。杖が粉々に砕けてしまったのだ。
(ヤバい…ッ!!!)
炎が一瞬で目の前に。
だが、その時。
「―――ギア!!」
「―――ギアさん!!!」
割って入ったのは、二人の魔女。
風になびいた黒髪の美しい女性と、見た目にそぐわない悲し気な雰囲気を持つ少年。アリシアーレンとレンだ。
「おやめなさい、リシア!」
アリシアーレンはリシアに元に駆けつけると、その腕を掴んだ。そして説教を始める。
「何をしているの、彼は私の大切な弟子なのよ。人間を恨む気持ちは分かるけど、無闇に傷付けようとしないでちょうだい。」
珍しく真面目で真剣な表情をしているアリシアーレン。しかし、リシアはそれも意に介さず、激情のままに暴れようとする。
「離せ、裏切りの魔女め!!」
アリシアーレンの手から逃れようと大きく身体をひねるが、力の差で抜け出せない。もしかしたら、魔法も使っているのかもしれない。
「何で…、何でレンも…ッ!!」
リシアは、アリシアーレンだけでなくレンもギアを庇うことに強く怒っているようだ。
「裏切り者!裏切り者!!お前たちなんか、魔女じゃない…ッ!!!」
リシアは泣きながら叫ぶ。
「レンなんか、家族じゃない―――!!」
その言葉にレンは涙を零した。
「…っ。」
静かに涙を流すレンの様子に、リシアも言い過ぎたと感じたのだろうか。喚くのを止めた。
静かに静かに涙を流しながら、レンは口を開く。
「…ごめんね、リシア。」
ギアを一瞬見て答えるレン。
「ぼくは、人間を嫌いにはなれない…。人間は、ぼくのお父さんの仲間だから…。」
目に涙を溜めて、ぎろりとレンを…いや、ギアを睨むリシア。
「人間なんて全て……ッ!!」
そして放たれた氷の魔法。
それは正確にギアに向かう。
「―――。」
それは確かに肉を貫いた。
しかし、それはギアの身体ではない。ギアを横へと突き飛ばし、氷の前に出たレンの身体だ。
小さな身体から血が噴き出る。リシアが放った巨大な氷は、レンの頭を吹き飛ばし、崖の向こうへと落ちていった。意識を失った身体は後ろへと倒れる。
「レンくん!!!!!」
ギアはその身体を受け止め、抱きかかえた。
「レンくん…っ、レンくん…っ!」
呼び掛けるが、何の応答もない。当たり前だ、首から上がないのだから。
恐らく、ギアの腹か胸を狙っていたのだろう。レンが庇ってくれなければ、ギアの身体に大きな風穴が開いていたに違いない。それを小さな身体が庇ったことに、ギアは大きなショックを受けながら呼び続けている。
「―――。」
リシアは口をポカンと開いて立ち尽くしていた。魔法も使わず、人間を助けたことに驚いているのだろう。
「レ、ン……。」
リシアは力が抜けたようで、その場に座り込んでしまった。




