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お久しぶりです。新しく作品を上げていきます。今回はキャラ設定とかなしにいきなり行こうと思います。ドキドキワクワクどんな気持ちで読むのでしょうか。
どうなるのでしょうか、、
午前零時。
黒瀬レンは、部屋の明かりを消した。
窓の外には、眠りについた街が広がっている。
遠くを走る車のライト。
隣の家から漏れるテレビの音。
そして、机の上に置かれた一台の端末。
それだけなら、どこにでもある普通の夜だった。
レンはベッドに腰を下ろし、机の上から黒いヘッドギアを持ち上げる。
側面には、銀色の文字でこう刻まれていた。
**《Eden》**
世界最大の仮想現実ネットワーク。
発売されてから五年。
今では世界人口の半分以上がアカウントを持っていると言われている。
ただのゲームではない。
フルダイブ技術によって、視覚や聴覚だけでなく、触覚、温度、風圧まで再現された完全没入型仮想世界。
現実では不可能なことも、Edenなら可能だった。
空を飛ぶ。
海の底を歩く。
宇宙へ行く。
そして――
**異能を使う。**
「……今日はどこまで行けるかな」
レンは小さく呟いた。
ヘッドギアを装着する。
視界が暗くなる。
次の瞬間。
《Eden》
白い文字が浮かんだ。
続いてシステム音声。
『Welcome to Eden.』
『認証を開始します』
『黒瀬レン――ログインを確認』
レンは目を閉じた。
「ログイン」
世界が消えた。
――そして。
世界が生まれた。
***
風が吹いていた。
「……」
レンは目を開ける。
目の前に広がっていたのは、巨大な都市だった。
何百メートルもの高さを持つ超高層ビル。
空中を走る道路。
その上を滑るように移動する無数の車。
空には巨大な広告映像が浮かび、最新の装備やイベント情報を宣伝している。
現実世界ではありえない光景。
それでも、ここでは日常だった。
「Eden中央都市……」
レンは周囲を見渡す。
プレイヤーたちが歩いている。
剣を背負った者。
魔法使いのような格好をした者。
巨大な機械兵を連れている者。
Edenでは、外見も自由に変更できる。
レン自身も、現実より少しだけ髪を長く設定していた。
黒髪に、黒いジャケット。
腰には何も装備していない。
武器を使わないからだ。
レンには――
**異能がある。**
「ステータス」
そう呟くと、目の前に透明なウィンドウが表示された。
---
**PLAYER**
NAME:KUROSE REN
LEVEL:48
ABILITY:『反転』
---
レンは自分の能力欄を見る。
「《反転》……か」
Edenには数百種類以上の異能が存在する。
炎を操る。
雷を落とす。
身体能力を強化する。
時間を止める。
能力によっては、一つの都市を破壊できるほど強力なものまである。
その中でレンの《反転》は、一見すると地味だった。
能力の基本は単純。
**触れた対象の「向き」を反転させる。**
右に飛んでいる物体を左へ。
前へ進んでいるものを後ろへ。
落下しているものを上へ。
ただし、生物そのものに直接使うことはできない。
だからランキング上位のプレイヤーからは、
「微妙な能力」
「使い方が難しい」
「戦闘じゃ役に立たない」
などと言われている。
レン自身も、そう思っていた。
「まあ……工夫すれば使えるけど」
そのときだった。
――ピコン。
聞き慣れない音がした。
「ん?」
レンの目の前に、赤いウィンドウが表示された。
普段の通知とは違う。
文字が乱れている。
《――――――》
《SYSTEM》
《ERROR》
「……バグ?」
レンがウィンドウに触れようとした瞬間。
――ドォォォン!!
「っ!?」
爆発音。
都市の中心部から、巨大な炎が上がった。
ビルのガラスが一斉に震える。
人々が悲鳴を上げる。
「何だ!?」
「イベントか!?」
「違う! 警告が出てる!」
レンは立ち上がった。
都市全体に赤い光が走る。
そして。
『緊急クエストが発生しました』
無機質なシステム音声が響いた。
『未登録異能者を確認』
『危険度――測定不能』
『対象の排除を推奨します』
レンの表情が変わる。
「未登録異能者……?」
Edenにおいて、すべての異能者は管理されている。
異能を取得した瞬間、その能力はシステムに登録される。
つまり――
**未登録の異能者など存在するはずがない。**
レンは爆発地点を見る。
煙が晴れていく。
その向こうに――
一人の少女が立っていた。
白い髪。
黒いコート。
年齢はレンと同じくらいに見える。
武器は持っていない。
なのに。
誰も近づこうとしない。
少女の周囲だけ、空気そのものが歪んでいた。
「……あれが?」
レンが呟いた。
少女が顔を上げる。
赤い瞳。
その視線が――
レンを捉えた。
瞬間。
レンの背筋に悪寒が走った。
知らない人間のはずなのに。
なぜか。
**ずっと前から知っているような気がした。**
少女が口を開く。
「……黒瀬レン」
「!」
名前を呼ばれた。
レンは警戒して身構える。
「誰だ、お前」
少女は答えなかった。
代わりに。
空を見上げた。
「来る」
「何が――」
直後。
空が黒く染まった。
「……!」
都市上空に、巨大な亀裂が走る。
まるで空そのものがガラスだったかのように。
亀裂は一瞬で広がった。
そして。
**何かが落ちてきた。**
黒い。
巨大な腕。
ビルよりも大きい。
それが都市へ向かって振り下ろされる。
「逃げろ!」
誰かが叫んだ。
レンは考えるより先に走っていた。
少女へ向かってではない。
その腕へ。
「――《反転》!」
右手を突き出す。
指先が黒い腕に触れた。
瞬間。
世界の物理法則が反転した。
下へ向かっていた腕が――
**上へ吹き飛んだ。**
ゴォォォォン!!
巨大な腕が空へ弾き飛ばされる。
衝撃波が都市を駆け抜けた。
レンは地面に片膝をつく。
「はぁ……はぁ……!」
周囲から歓声が上がった。
「すげえ!」
「あの能力、あんなことできるのか!?」
だが。
少女だけは笑っていなかった。
レンを見る。
その目には、驚きではなく――
**確信**があった。
「やっぱり」
「……何が?」
「あなたならできると思った」
「何を言って――」
少女が一歩近づく。
「その能力」
少女はレンの右手を見る。
「本当は《反転》なんかじゃない」
「……え?」
「あなたの能力の名前は――」
少女が言葉を切った。
そして。
空を指差した。
「**《NULL》**」
その瞬間。
レンの視界が真っ赤に染まった。
《ERROR》
《ERROR》
《ERROR》
大量のシステムメッセージが表示される。
「な、何だこれ……!」
レンが頭を押さえる。
頭の奥で、誰かの声がした。
――違う。
――これはゲームじゃない。
――思い出せ。
――お前は一度――
「やめろ……!」
声を振り払う。
視界が戻った。
少女は目の前に立っていた。
「黒瀬レン」
「……」
「あなたは、この世界のプレイヤーじゃない」
レンは言葉を失った。
「何を……言ってるんだ」
「あなたは――」
少女が手を伸ばす。
「**この世界を作った側の人間だから**」
その瞬間。
世界が割れた。
ビルが。
道路が。
空が。
すべてに亀裂が走る。
まるで巨大なガラス細工だったかのように。
「な……」
レンは呆然と立ち尽くした。
亀裂の向こう側。
そこには――
**真っ白な世界**が広がっていた。
そして、その白い空間の中心に。
一つの巨大な黒い文字が浮かんでいた。
**NULL**
少女が呟く。
「始まった」
「何が……?」
「世界の再起動」
――次の瞬間。
すべてが消えた。
音も。
光も。
街も。
人も。
そして――
レン自身さえも。
***
午前零時。
現実世界。
黒瀬レンの部屋。
ベッドの上で、少年の身体が激しく震えた。
「――っ!」
レンは目を開いた。
「はぁ……!」
荒い呼吸。
額には汗。
ヘッドギアを外す。
「……夢?」
部屋は静かだった。
時計を見る。
午前0時03分。
たった三分しか経っていない。
「なんだったんだ……」
レンは立ち上がる。
そのとき。
――ピコン。
机の上の端末が鳴った。
画面を見る。
Edenからの通知だった。
レンは眉をひそめる。
「ログアウトしたのに?」
画面には一行だけ。
表示されていた。
**《黒瀬レン:ログアウト処理に失敗しました》**
レンの顔から血の気が引いた。
さらに。
その下に、もう一行。
**《現在地:Eden》**
「……は?」
窓を見る。
いつもの街。
いつもの夜。
何も変わっていない。
――そう思った。
しかし。
窓ガラスに映った自分の顔。
その右目だけが。
**赤く光っていた。**
そして、誰もいない部屋に。
少女の声が響いた。
「――おかえり、レン」
**第一章・終**




