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追放された《解読》士、魔王が世界を守っていると気づく  作者: 北こたろう


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3/23

解読

夜になる頃には、

村へ吹く風も冷えていた。


 レイは崩れた家屋の陰へ腰を下ろし、

小さな火を起こしていた。


 少女魔族は、

まだ少し離れた場所にいる。


 警戒は解いていない。


 だが逃げもしなかった。


 レイは鍋へ水を入れながら、

静かに口を開く。


「名前は」


 少女は少し迷い、

やがて小さく答えた。


「……リナ」


「そうか」


 それ以上は聞かなかった。


 無理に踏み込めば、

また距離を取られる。


 リナは火を見つめながら、

ぽつりと呟いた。


「お前、本当に変」


「よく言われる」


「人間は魔族を見たら殺す」


「軍はそう教える」


「お前は違う」


 レイは火へ細い枝を放り込む。


 小さく火の粉が跳ねた。


「……お前たちは、

本当に人間を滅ぼしたいのか」


 リナはすぐに答えなかった。


 代わりに、

じっとレイを見つめている。


「なんでそんなこと聞くの」


「解読した結果だ」


「解読……」


「村の焼き方。

 進軍速度。

 補給線。

 避難経路」


 レイは淡々と続ける。


「侵略として効率が悪すぎる」


「…………」


「本気で滅ぼすなら、

もっとやり方がある」


 リナは視線を落とした。


「……言ってた」


「何を」


「魔王様は、

無意味に殺すなって」


 レイの手が止まる。


 火が小さく揺れた。


「理由は」


「知らない。

 下の奴らには教えられない」


 レイは黙り込む。


 軍の説明とは真逆だった。


 魔王軍は、

人類殲滅を目的としている。


 そう教えられてきた。


 だが実際に見えるものは違う。


 それどころか——。


「……レイ」


 リナが不安そうに空を見る。


 空の亀裂。


 夜になったことで、

黒い裂け目はさらに濃く見えていた。


 まるで空そのものが、

少しずつ腐っているようだった。


 レイは静かに立ち上がる。


 空気が重い。


 魔力が薄い。


 いや。


 また削られている。


「広がってるな……」


 リナの顔が青ざめる。


「まずい」


「何が起きる」


「近くで亀裂が開くと、

魔物が狂う」


「狂う?」


「暴走する。

 見境なくなる」


 その瞬間だった。


 遠くの森から、

低い咆哮が響く。


 一本ではない。


 二本。


 三本。


 木々が大きく揺れた。


 リナが息を呑む。


「……来る」


 レイは静かに腰の剣へ手を置いた。


 軍では、

《解読》は戦闘向きじゃないと笑われていた。


 だが。


「試してみるか」


 レイは、

揺れる森をまっすぐ見つめる。


 魔物の足音。


 呼吸。


 地面の揺れ。


 全てが少しずつ、

頭の中で繋がっていく。


 そして。


 レイは静かに呟いた。


「……右から二体来る」

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