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追放された《解読》士、魔王が世界を守っていると気づく  作者: 北こたろう


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20/26

解読指揮

教会の中は、

まだ侵食の気配が残っていた。


 騎士たちは武器を握ったまま、

黒髪の男を見ている。


 侵食体を倒したのはエルドだ。


 だが。


 誰も、

エルドだけの力だったとは思っていなかった。


「……どういうことだ」


 副団長が低く口を開く。


「なぜ侵食体の動きが読めた」


 レイは静かに祭壇を見る。


 黒い亀裂。


 侵食結晶。


 崩れた術式。


「法則があるからだ」


 騎士たちがざわつく。


「法則?」


「侵食体は無秩序に見える。

 だが完全なランダムじゃない」


 レイは続けた。


「空間歪曲の癖。

 侵食の偏り。

 核位置」


 床へ剣先を向ける。


「全部繋がってる」


 エルドが呆然と呟く。


「だから……

 右脚が弱かったのか」


「ああ」


 レイは頷く。


「侵食が不完全だった」


 副団長の目が細くなる。


「そこまで見えるのか」


「《解読》だからな」


 短い沈黙。


 騎士たちの視線が変わり始めていた。


 恐怖だけじゃない。


 理解できないものを見る目。


 それが混ざっている。


 レイは静かに言う。


「問題は、

 誰も解析しようとしてないことだ」


「…………」


「侵食体は怖い。

 だから全員、

 “正体不明”のまま戦ってる」


 だが。


「崩壊にも構造はある」


 副団長はしばらく黙っていた。


 やがて低く聞く。


「対処法はあるのか」


「ああ」


 レイは即答した。


「まず囲むな」


 騎士たちが顔を上げる。


「侵食体は、

 視界内の魔力へ反応する」


「だから人数が多いほど、

 動きが読めなくなる」


 レイは床へ線を書く。


「前衛二人。

 後衛は離れる」


「少人数で戦うのか?」


「多い方が死ぬ」


 空気が静まる。


 副団長はレイを見たまま、

小さく息を吐いた。


「……理にかなっているな」


 その時だった。


 外から鐘が鳴る。


 短く。


 鋭く。


「副団長!」


 騎士が飛び込んでくる。


「西通りで侵食反応!」


 空気が変わる。


「数は!?」


「三体以上!」


 騎士たちの顔色が変わった。


 三体。


 今までより多い。


 つまり侵食は、

確実に広がっている。


 副団長が剣を抜く。


 その視線が、

レイへ向く。


「お前も来い」


 レイは少しだけ考える。


 本来なら、

ここで離れるべきだ。


 教会は危険だ。


 騎士団も信用できない。


 だが。


 侵食は広がっている。


 放置すれば、

被害は増える。


 レイは静かに口を開いた。


「条件がある」


「何だ」


「戦闘指揮は俺が出す」


 騎士たちがざわつく。


 ただの追放者。


 しかも騎士ですらない。


 そんな男へ指揮を任せるなど、

普通ならあり得ない。


 だが。


 副団長は数秒黙ったあと、

静かに答えた。


「分かった」


 エルドが目を見開く。


「副団長!?」


 副団長はレイを見たまま言う。


「今、

 一番侵食を理解しているのはこいつだ」


 沈黙。


 そして。


 レイは静かに教会の外へ歩き出した。


 崩壊し始めた街へ向かって。

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