階段派のやつ
「以上でよろしいでしょうか? お待ちくださーい」
注文を終えた俺たちは無敵だ。そんな顔をする彼に俺は微笑み、言葉をかける。
「最近何か面白いことあった?」
「エレベーターって怖くね?」
「言うほどか? 落ちるとかそういうやつ?」
「知らん人と超狭空間に閉じ込められる恐怖」
「言い方! 内容は合ってるけど!」
「実際怖くない?」
「そうでもないだろ」
「自分以外の人がグループで突然お祝いの歌を歌おうよ、ってなったらどうすんの?」
「困る以外ないかも!」
「歌えんの?」
「歌わないけど!」
「乗り悪いな」
「やっぱ怖いわ! エレベーター怖い!」
「開かなくなることあるしな」
「それはあんまなくない?」
「創作だと大体閉じ込められてるけど」
「創作だからじゃない!?」
「動画サイトとかテレビとかでもそうだけど?」
「切り取ってるからじゃない!? そっちが多数派ってわけじゃないから!」
「可能性はあるってことだからな」
「まあそうだけど。てか、階段派ってよりエレベーターアンチなだけじゃん」
「エスカレーターアンチでもあるしな」
「文明に適応できてないだけじゃん」
「エスカレーターに巻き込まれたら嫌だし……」
「滅多にないから! そんな杞憂で文明を享受してないのはもはやおろかだろ!」
「でも階段なら?」
「そんな心配はないな」
「でも階段なら?」
「健康的ではあるな」
「でも階段なら?」
「お前が言って! 俺に利点言わせないで!」
「大体言い尽くしたんじゃない?」
「階段に特別思い入れない!?」
「階段マニアとかいないだろ」
「お前がそうって話では!?」
「この前エレベーター乗ったとき呻き声聞こえてきてさ」
「機械が調子悪かっただけだろ! それはそれで怖いか」
「謎の液体が垂れてきてさ」
「怖いってかきもいな」
「舐めてみたんだけど」
「きもいのはお前!」
「鉄の味がしたんよな」
「……つまり?」
「上を向いたら血まみれの顔がこっち向いてた」
「怪談かよ!」
「お待たせしましたー。バースデーケーキですー。あ、隣でした」
「お祝い歌いにいくぞ!」
「エレベーターじゃなければ歌うんだ!?」
こうして俺の待ち時間は消えてしまった。
てか、俺歌うま。帰ったら動画録ろ。
突然周囲の全員が歌い出したら、歌うしかないですよね……。
次回投稿は4/13(月)7:00を予定していますよ。




