90. 提案
「はい、そうです。」
イヒョンの肩にかかっていた緊張がゆっくりと溶け出し、彼の声に活気が戻った。
「今は港湾使用料や人夫の賃金、護衛費用まで商会ごとに二重で支払わなければならないので、無駄な二重支出がかなり多いです。私が直接足を運んで調べてみたところ、争いの種はほとんど取り扱い品目が重なったり、取引先がぶつかったりするときに芽生えるようです。でも、もし連合体を作ったら……そんな争い自体がなくなるだけでなく、小量ずつ物を仕入れるために船を二度、三度出す必要もなくなります。」
伯爵の眉が少し上がったかと思うと、すぐに満足げな笑みを浮かべて下がった。彼はゆっくりと頷きながら尋ねた。
「ふむ……なるほど、もっともな話だな。市民たちも息がつけるだろう。では、私にはどんな利得があるのか、気になるところだ。」
イヒョンは伯爵のその質問が落ちるや否や、事前に準備しておいた答えを即座に取り出した。
「まず、伯爵様が直接議長を任命なさることで、巨大な商会連合に直接的な影響力を行使できるようになります。二番目に、連合体に加入する商会が増えるほど、一つの都市を超えて複数の都市を結ぶ網のように影響力を広げられるでしょう。三番目に、ばらばらだった税金が安定して集まるようになります。そして最後に……」
彼は一瞬言葉を止め、伯爵の瞳をまっすぐに見つめた。
「商会を守る護衛隊は普段は商人たちの剣と盾になりますが、有事の際には伯爵様の忠実な槍と盾になるでしょう。」
伯爵は白い髭をゆっくりと撫でながら、再び口を開いた。
「護衛隊か……今も兵力が全く不足していないが、民間護衛という名の下ならいつでも軍に変えて使役できるということだな。」
「正しくお見通しです。」
イヒョンはそっとベルティモをちらりと見て、再び伯爵に視線を戻した。
「ただ、本質的な違いがあります。伯爵様が直接率いる正規軍は動くたびに数多くの目がついて回ります。国境近くに配置しようものなら、すぐに噂の的になるでしょう。」
伯爵が低く笑った。
「はは、今は神聖なるエフェリア国王陛下の名の下に一つだと言われているが……それも永遠ではないだろうな。」
「それに比べて商会護衛隊なら、誰も疑うことなく国境を越えられるでしょう。必要なら諜報を集めてくるのに、これ以上良いものはありません。」
「ふむ……」
伯爵は一瞬目を閉じて考えに耽ったかと思うと、ふと視線を移した。彼の視線が向かった先はカエラとエスベルロだった。
「君たちの考えはどうだ?」
カエラはテーブルの上のろうそくの炎が揺れるのをしばらく見つめ、エスベルロと目を合わせてから、柔らかく口を開いた。
「プルベラの商会が安定するということは、つまり村や都市の息がつき、争いがなくなれば、プルベラはさらに発展できるでしょう。この仕組みがきちんと回れば、市民たちの食卓も、商人たちの夜の眠りもすべて楽になると思います。」
エスベルロもカエラの様子を少し窺ってから、伯爵に恭しく頭を下げた。
「閣下、この提案は単にプルベラの金袋を膨らませるだけではなく、領地全体、いやエフェリア全体に有益な種です。まだ手直しするところが多いでしょうが……閣下がお仲介くださるなら、私は喜んで賛成します。」
その言葉にカエラが慎重に伯爵を見上げた。
「失礼を承知で一つお願い申し上げます。」
伯爵は顎を少し上げ、言ってみろというような眼差しを送った。
カエラは一瞬息を整え、震える声を抑えながら口を開いた。
「すでにご存知かと思いますが、私の夫ルカエルの体が不調です。今日この場に私が参りましたが、私一人で全てを決めるにはまだ荷が重いです。」
彼女は両手を合わせて慎重に組んだ。
「どうか……夫が健康を取り戻した後で、本格的な議論を始めていただけないでしょうか。」
伯爵は肩をすくめて、くすくすと笑い声を上げた。
「それは心配しなくてもいいよ。商会連合体は、どうせあの黒い霧を解決した後でなければ進まないだろう。それまでには君の夫ルカエルも健康を取り戻しているはずだ。」
カエラは目尻を赤く染め、深く頭を下げた。ろうそくの炎が彼女の頰を伝う涙の一滴を金色に染めた。
「よし。商会連合体は着実に推進するが、細かな規則や航路などの繊細な部分は、ルカエル団長が体を整えた後でまた集まって扱うことにしよう。」
伯爵の言葉が落ちると、応接室に漂っていた重い空気が一気に軽くなった。しかし、まだ黒い霧という名もなき災厄が空を覆っている限り、誰も完全に心を緩めることはできなかった。
伯爵が指先を少し上げると、ドアの傍で立っていた使用人が音もなく頭を下げ、静かに退いた。
「時間がこんなに経ったか。腹の虫が鳴く音がここまで聞こえてきそうだな。」
彼はいたずらっぽい笑みを浮かべて、自分の腹をぽんぽんと叩いた。緊張で固まっていた空気が、その一言でするりと解けた。
「ちょうど夕食の席が整っている。まだ解かなければならない糸くずが山積みだが、空腹のまま頭を働かせてもいい考えは出ないよ。一緒にどうだ?」
イヒョンがまず恭しく礼をし、カエラとエスベルロも静かに頷いた。
使用人の案内に従って一行は廊下を通り、伯爵の小さな晩餐室に入った。
長いウォールナットのテーブルには、数百年は経ったような繊細な彫刻が施されており、銀の燭台の上にろうそくの炎が柔らかく揺れていた。すでに銀製の食器とクリスタルのグラスが席を構えて待っていた。
席を案内された一同は、黙ってそれぞれの椅子に座った。
やがてドアが開き、香ばしい湯気がもくもくと立ち上った。
最初に出てきたのは、レモングラスと柑橘の皮を乗せた魚の蒸し物だった。白い身の上を流れ落ちるバターソースがろうそくの光を受けて黄金色に輝いた。続いて出てきたのは、薪火でゆっくり焼いた鹿のフィレ。赤ワインソースが表面に添えられたローズマリーとともに、濃厚な香りを放っていた。
イヒョンの皿の前に置かれた料理から立ち上る匂いは、馴染みがないのに懐かしく、大地の土の香りと海の塩気が絶妙に絡み合った香りだった。
彼はグラスを手に取る前に、伯爵に向かって深く頭を下げた。
『黒い霧も、ニルバスの裏切りも予想外だったのに……伯爵がこんなに早くプルベラに到着して、私の提案を快く受け入れるとは。』
もし事が少しでもずれていたら、コランでのようにまた牢獄に閉じ込められたかもしれないし、運が本当に悪かったらベルティモだけでなく自分も死刑に処せられたかもしれないという思いが、イヒョンの頭をよぎった。
「光栄です、閣下。」
「ははは! まだ祝杯を挙げるには早いが、私はいつも嵐の中でも航路を見つけてきたよ。君はその嵐の真っ只中に立って灯りを掲げてくれた人だ。」
使用人が注いでくれた酒は、りんごと梨を長年熟成させた上質な蒸留酒だった。グラスの中で淡い花の香りと熟れた果物の香りが混ざり、鼻先をくすぐった。
伯爵がグラスを高く掲げた。
「さあ、プルベラの新たな繁栄のために。」
「乾杯。」
クリスタルのグラスがぶつかり、澄んだ短い鈴の音を響かせた。
イヒョンは酒を一口飲み込みながら、ふと首を傾げた。
ニルバスを追い出すのはすでに決まった手順だったが、黒い霧は誰も予想していなかった災難だった。
それなのに『嵐の海』という表現が……果たして適切な比喩だろうか。
酒の酔いが少し回り始めた頃、テーブルの上に一時静けさが降りた。
窓の外では夕焼けがすでに姿を消し、濃い闇が城壁を乗り越えて入り込んでいた。食卓の上のろうそくの炎が風に揺れるたび、銀製のフォークとナイフが星のようにきらめいた。
その静けさを最初に破ったのはカエラだった。
「イヒョン様。」
彼女はグラスを慎重に置き、まだ解けていない疑問が込められた瞳でイヒョンを見つめた。
「その帳簿のことですが……一体どうやって手に入れたんですか? ニルバスが絶対に公開しなかった会計帳簿を、それも無傷で……誰が見ても命がけの仕事ですよ。」
そう言って、伯爵をちらりと見て声を一トーン低くした。
「それに、伯爵様にご連絡を取ったとおっしゃいましたよね。あれはどうやって……?」
イヒョンはワイングラスをゆっくりと置き、口元に淡い笑みを浮かべた。
「マルケン卿の手を借りました。」
「マルケン卿が……?」
彼女の父親オルディンが亡くなった後、ニルバスの下で働いていることは、街の人々ならほとんど知っていることだったし、ルカエルもマルケンから何度か助けてもらったことがあった。
「でも、マルケン卿がニルバスの帳簿を素直に渡すはずないですよ。もちろんニルバスが犯した悪行の後始末をしたのでしょうけど、彼も全く罪がないとは言えない状況でしょうから。」
「その通りです。マルケン卿もそれで随分悩まれました。でも結局は正しい決断をされたんです。実はマルケン卿の娘は重い病を患っていました。」
彼は一瞬言葉を止め、壁にかかったタペストリーを見つめた。
その場面がまるで彼の目にそのまま蘇っているようだった。
「マルケン卿は娘の治療のために、仕方なくニルバスに協力していたんです。私が初めてマルケン卿を訪ねた時、私をニルバスが送ったスパイだと疑われました。でも、私は彼女のための薬と製法を彼に渡し、その代償として帳簿を受け取ることができました。」
テーブルの上に一時、重い沈黙が降りた。ろうそくが燃え尽きながら小さな音を立てた。
エスベルロが最初に口を開いた。
「それじゃあ……伯爵様にご連絡したのは?」
イヒョンはゆっくりと首を回し、向かいに座った男を見つめた。
「それはベルティモ様がされたことです。」
すべての視線が一斉にベルティモに向かった。
彼はステーキを切り分けていた手を止め、フォークを静かに置いた。そしてワイングラスを手に取り、一口飲み込んで、低く笑った。
「正直に言うと……私も背水の陣を敷いた心境だったよ。」
彼はグラスを置き、両手を組んでテーブルに置いた。手背に刻まれた古い傷がろうそくの光に浮かび上がった。
「伯爵様がまだ私を覚えていらっしゃるか、覚えていたとしても私の声を聞いてくださるか……一寸先も見えなかったさ。」
ベルティモは一瞬目を閉じてから開いた。
ベルティモは一瞬目を伏せ、ゆっくりと息を整えた。ろうそくの炎が彼の横顔に沿って長い影を落としていた。
「だから……ただ手紙を送ったんだ。誰かがこの街が腐り果てる様子を知らせなければならなかったから。」
言葉の終わりに染み込んだ苦笑いが、古い傷のように口元に残った。
その時、伯爵がグラスを少し持ち上げ、低く温かな声で笑った。
「他の奴らは知らないが、ベルティモだけは私が一番可愛がっていた将軍の一人だったよ。私が連戦連勝を重ねられたのは、全部この友の功績さ。どうして忘れられるものか?」
伯爵の目元に掠めていく皺の一つ一つが、疲れに染まった古い戦場で芽生えた信頼を語っているようだった。
しかし、すぐに表情を収め、彼は低く付け加えた。
「それにしても君……除隊を申請した後、本当に一言もなく消えてしまったな。手紙一通、挨拶一つなく……まさに蒸発してしまったようだったよ。」
ベルティモは伯爵の視線を正面から受け止めていた。
伯爵はワイングラスをテーブルに置き、ため息をついた。
「正直、手紙を受け取って驚いたよ。プルベラは外敵の足が届かない安全な土地で、毎年上がってくる税金と物資も非の打ち所がなかったからな。こんな問題が潜んでいるなんて……」
その言葉にベルティモは口を閉ざした。首を回してステーキを切ろうとしたが、ナイフの先が少し止まった。古い同志の自責が彼の胸を重く押しつぶした。
イヒョンは黙って伯爵を、そしてベルティモを見つめた。ろうそくの下で二人の顔に刻まれた歳月が、まるで一枚の古い絵画のように重なった。
少しの沈黙が流れた後、イヒョンが慎重に口を開いた。
「閣下……商会連合体が作られたら、その護衛隊の指揮権をベルティモ卿に任せてみてはいかがでしょうか……僭越ながら申し上げます。」
一瞬、晩餐室の空気が刃のように鋭くなった。
伯爵はゆっくりと首を下げてから上げた。銀色の髪がろうそくの光に反射して冷たく輝いた。眉間に刻まれた深い皺が影のように落ち込んだ。
イヒョンはその変化に気づいていないかのように、落ち着いて言葉を続けた。
「ベルティモ卿が積み重ねてこられた組織力と人望は、連合体を一つにまとめるのにかけがえのない材木です。その護衛隊を率いる人としては、あの方に勝る者はいないと思います。」
伯爵の瞳が細く窄まった。口角が微かに下がり、声が低く沈んだ。
「それは……」
グラスを握った手に力が込められた。クリスタルがきしむ音を立てた。
「私が決めることだ。」
短く鋭い一言が、食卓の上を一気に凍りつかせた。
ろうそくの炎だけが依然として静かに燃え続けていたが、その炎さえ息を潜めたように小さく見えた。
読んでくれてありがとうございます。
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