82. ベルティモ
高い位の神官と思われる者が、急いで現場で儀式を準備した。
「急いで儀式を始めろ!」
高い位の神官の指示が下ると、神官たちは素早く動き出したが、その準備と進行過程がかなり長く感じられた。
「慈悲深いアモリス神よ、この者たちの苦痛を哀れみたまえ……」
彼らは迅速に癒しの儀式を始めたが、儀式が終わるまで待つ余裕のない人々があちこちに溢れていた。
「儀式が始まるまでまだ時間がかかるわ! それまでは止血と固定を優先して!」
「わかったよ、ルメンティア。」
イヒョンとセイラは一時も休まず手を動かした。
傷を圧迫して巻きつけ、折れた骨に添え木を当てて布でしっかりと固定した。
「負傷者はこちらに集めて! 儀式が必要な人はすぐあっちへ!」
イヒョンとセイラの動きに、都市住民たちの視線が集まった。
血に染まった手で絶え間なく人々を救おうと努力する彼らの姿は、住民たちの心を掴むのに十分だった。
最初は戦争のような騒ぎに皆家の中に身を隠し、扉を閉ざしていたが、混乱が収まると窓から外を覗いていた者たちが一人ずつ広場に出てきた。
プルベラの住民たちは、イヒョンとセイラが誰なのか、どこから来たのかを詮索しなかった。
「こちらを手伝ってください……こっちの人が血をたくさん流していて!」
負傷した兵士の妻と思われる女性が、慌てて叫んだ。
イヒョンは躊躇なくそちらへ走り、傷を手当てした。
周囲でその光景を見守っていた人々は、自然と動き出した。誰かが水を持ってきて、家にあった布切れや木片を持って出てきた。
「これは……うちにあったものだけど、役に立つかわからないけど……」
「本当にありがとうございます。とても助かります。」
プルベラの住民たちが徐々に動き始めた。
これまで無気力に過ごしてきた者たち、一貫して沈黙を守っていた者たち、遠くから見ているだけだった者たちが、その朝、イヒョンのそばに集まってきた。
誰も指示していないのに、自然と秩序が取れた。負傷者を運び、応急処置を終えた者たちを神官のところへ連れて行った。
血の匂いが満ちた空気を貫き、湖の向こうから昇った太陽が都市を照らした。
太陽が空の真ん中に昇る頃、重傷者たちは皆癒しの儀式を受けられるようになった。
これほど短い時間で数多くの命を救ったのは、儀式が始まる前に命を繋いでくれたイヒョンとセイラ、そして住民たちの協力なしには不可能なことだった。
しかし、ベルティモの襲撃はプルベラの住民たちに深い傷を残した。
------
ベルティモの襲撃から二日目の朝、その日の血生臭さがまだ都市を漂っていた。
中央広場の片隅で、誰かが公告文を貼り、釘で固定していた。
『公告』
プルベラ都市法に基づき、以下のように公開絞首刑を執行する。
• 被疑者: ベルティモ
• 罪名: 反逆行為
• 日時: 7日後、午前10時
• 場所: プルベラ中央広場
※ 市民誰でも観覧可能
「……これでいいな。」
下級管理官と思われる彼が最後の釘を打ち込んだ後、後ろに下がると、ようやく住民たちのささやきが四方から湧き上がった。
「ついに捕まったって噂は本当だったんだ。絞首刑だってよ。」
「反逆罪だなんて、クラウラーの末路がこんなに虚しいなんて……」
しかし、皆が歓声を上げる雰囲気ではなかった。
広場の片隅の小さな店先でしゃがみ込んだ老婆が、公告文をじっと見つめ、深いため息をついた。
「密輸屋だって言っても、クラウラーほど真面目な商人はいなかったのに……」
「そうだよ、私たちの村で小麦の値段が高騰した時も、こっそり小麦を入れてくれたのはあいつだったよな。」
「そうだね。商団同士の争いが起きるたびに、民間に物資を流通させてくれた唯一の人間だったよ。」
イヒョンは遠くからその会話を聞いていた。
都心のど真ん中で戦争のような混乱を引き起こした人物にしては、広場の空気がどこか妙だった。
怒りや憎しみよりも、虚脱と喪失感が都市全体にじわじわと広がっていた。
「ルメンティア、彼は本当に反逆者なんでしょうか? 反逆者にしては……なんか変じゃないですか?」
セイラが低い声で尋ねた。
「密輸団の頭目だったけど、この都市で物流を唯一維持してきた人だったらしいわね。商団の争いが激しくなるたびに、民間に物資が流れてこられたのは……ベルティモのおかげだって、人々が言ってたわ。」
「でも、悪いことは悪いわよ。」
リセラが眉をひそめて返した。
「人が死んだんだもの。あの日の襲撃で命を落とした人たちを考えてみて……」
言葉を濁らせた彼女が、イヒョンとイアンをちらりと見やった。
少年は依然として口を閉ざし、無表情な顔で広場を眺めているだけだった。
------
数日前、ベルティモの隠れ家。
かすかな油ランプの灯りが、ベルティモの顔に濃い影を落としていた。
沈黙が長く続いた。
ベルティモは腕を組んで少し頭を垂れたまま、しばらく考えに沈んでいたが、ゆっくりと席から身を起こした。
「一杯やるか?」
ベルティモが壁棚から中身が半分残った透明な酒瓶を取り出した。
そして、少し欠けたものの、元々はかなり高価なものだったらしい小さなグラスを二つも一緒に持ち上げた。
「ええ、そうしましょう。」
「これが……はは。俺が昔、商団護衛隊長として働いてた頃、大きな仕事が終わったらよく飲んでた酒だよ。」
ベルティモがグラス二つをテーブルにどんと置いた。
酒は濃い琥珀色を帯びていた。グラスに酒が注がれると、かび臭い空気が漂う部屋の中に、辛い香りが染み渡った。
ベルティモは静かにグラスを満たした。
イヒョンもそのグラスをじっと見下ろし、唇を軽く噛んだ。
過去、アイテラ メディテクを率いていた頃、重要な契約や会議が終わった後には、いつも誰かが酒を勧めてきたものだ。
イヒョンはそんな席が嫌いで、いつも代わりに飲む人を送っていたが、その気持ちは理解できた。
口に出すのが難しい話や、成果を祝う席、時には隠された本心が現れる瞬間。
イヒョンはベルティモが注いでくれたグラスを掲げた。
グラスがぶつかる音が、隠れ家の中に短く響いた。
イヒョンは軽く息を整えてから、グラスを口元に運んだ。
強烈な酒が舌を掠めると、数ヶ月前の地球で経験した数々の出来事が脳裏を過った。
彼はベルティモの目を見つめながら、ゆっくりとグラスを傾けた。
焼けるような液体が喉を伝って流れ落ち、食道と胃の感覚を鮮やかに呼び覚ました。
二人は何も言わずにグラスを空にし、テーブルに置いた。
「何か計画が浮かんだみたいですね?」
ランプの灯りが揺らぐと、ベルティモの影が壁に踊るように広がった。
口の中と鼻先に、酒の苦味の後に重くもほのかな甘みが漂っていた。
ベルティモは置いた手をしばらく見下ろし、深く息を吐いた。
彼の声は酒のせいか、それとも遠い記憶を引きずり出してか、一層低くなっていた。
「俺は元々、伯爵の下で軍人として働いていたんだ。エフェリア戦争の末期だったよ。あの時、エセンビア伯爵の騎兵隊を指揮していたんだ。毎日、死が鼻先をかすめて過ぎていく日々だったよ。」
ベルティモは椅子の肘掛けを支えに背を預けた。
長い歳月が刻んだ傷跡が、まだ鮮明に残っているようだった。
「戦争が終わったら、行く当てがなかったよ。伯爵ももう大軍を率いる必要がなくなったからな。退役して受け取った金は、手に取った途端に砂のように流れ落ちたよ。あの時出会ったのが、オルディンだ。」
ベルティモの眼差しが一瞬輝いた。まるで今もオルディンの強烈な視線に向き合っているような顔で、言葉を続けた。
「オルディン、あいつは……本当にすごかったよ。俺みたいな戦争後に迷ってる奴らにも席を与えて、未来を見せてくれた。船を浮かべて倉庫を建て、道のない土地に貿易路を切り開いたんだ。結局、プルベラという都市を作り出したよ。今の人々が当たり前に思ってる船路と西部貿易路のほとんどが、あいつの功績だよ。」
ベルティモは髭をいじくり回した。
「戦うことしか知らなかった俺には、商団護衛隊長の席を与えてくれた。盗賊から商団を守る仕事だよ。相変わらず戦うだけの生活だったけど、人々を食わせてやるという自負心があった。今もそうだよ。」
彼は虚空に手を広げてから、再び握りしめた。
「でも、オルディンが死んだ後……すぐに混乱が都市を包んだよ。」
周囲に立っていた部下たちも、静かに彼の話を聞いていた。
窓の外から、荒涼とした風が吹いてきた。
「ニルバス、あいつがプルベラを盗んだんだ。最初は俺も我慢できなくて、伯爵に告発しようとしたよ。文書を書いて伝令を送ったんだが……その伝令が戻ってこなかったよ。」
「まさか……」
「そうだよ。伯爵に届けようとした手紙がニルバスの手に落ちたんだ。そして俺は捕まったよ。」
横で聞いていた部下一人が拳を握りしめた。
彼の目には、まだあの日の怒りが浮かぶ気配があった。
「親分、あの時のこと思い出すだけで……!」
「やめろ。」
ベルティモは首を傾けて部下を眺めた。
「俺もあの時、死ぬかと思ったよ。地下室に閉じ込められて、水一滴飲めず、食事に薬を入れられたのか、意識が朦朧としてきたんだ。結局、ほとんど廃人になった後には、鶏小屋みたいな牢屋に放り込まれたよ。」
ランプの灯りが、彼の深い皺を掠めて過ぎた。
彼の表情には、まだあの日の屈辱と血の臭いが鮮やかに残っているようだった。
「だけど……人の人生なんてわからないものさ。神が俺をまだ連れて行く時じゃないと見てくれたらしいよ。」
ベルティモはグラスを再び持ち上げた。
「運良く、看守同士の喧嘩の隙に脱獄したんだ。それからは指名手配犯の身だよ。」
「だから密輸団を……」
イヒョンが低い声で呟いた。
ベルティモは苦く笑った。
「人々は俺をクラウラーと呼ぶよ。都市の底や地下道を這い回って仕事をしてきたからな。でもこの仕事をしなかったら、俺だけじゃなく多くの奴らが飢えていたはずだ。二つの商団の下で働いていた商人たちも……俺のおかげで物を手に入れたのは一度や二度じゃない。」
ベルティモは酒瓶を手に取り、自分のグラスを再び満たした。
「ニルバスみたいな奴は、必ず代償を払わせなきゃいけない。」
酒瓶を握った手に、筋が浮き出た。
両目に炎のような気力が染み込んだ。
「退役した俺が、オルディンのおかげで新しい人生を手に入れたよ。脱獄後は、神がくれたおまけみたいな命で生きてるようなもんだ。今さら俺が何を恐れるって言うんだ?」
イヒョンはベルティモの顔をじっと見つめ、グラスを掲げた。
彼は満足げな笑みを浮かべて、イヒョンのグラスを満たしてくれた。
「……俺だったら真似できないことですね。」
イヒョンはグラスを傾けながら笑った。
「そう思うか?」
ベルティモは酒を口に流し込んだ。
「自分を低く見すぎだな。俺の目には、お前がオルディン並みに大きなことを成し遂げてるように見えるよ。お前が意図したかどうかは別として。」
隠れ家に一時、静けさが流れた。
ベルティモの両目は静かだったが、その奥には鋭い決意が宿っていた。
彼は深いため息をついてから、低い声で口を開いた。
「イヒョン。計画は簡単だ。俺がわざとニルバスの兵士たちに捕まるよ。」
その言葉が落ちると、部下たちは息を潜めた。
誰もベルティモの顔をまともに見られず、拳を握りしめているだけだった。
「あいつらが俺を捕まえたら、きっと死刑を下すだろう。大体一週間くらいかかるはずだ。その間に俺がどんな奴か、何の罪を犯したか、都市全体が大騒ぎになるよ。」
ベルティモの口元が上がった。
その表情には、恐怖の代わりに奇妙な期待感が漂っていた。
「そして死刑は広場でやるはずだ。ニルバス、あのクソ野郎、二つの商団の頭領たち、そして数百、数千の目が俺を見に集まるだろう。それがお前が望む舞台になるよ。」
イヒョンはベルティモの言葉を聞いても、しばらく何も言えなかった。
ただ重い息を整えながら、彼の目を直視した。
その瞳には、長年抑え込んできた憎しみと怒りが、海のように揺らめいていた。
だが、その奥深くには、確かな希望と信念の炎が生き生きと動いていた。
「親分……」
部下の一人が声を整えて口を開いた。
「本当にそこまでする必要があるんですか……危なすぎますよ。」
ベルティモはゆっくりと首を回して彼を見た。
大きな手で部下の肩を叩いた。
「大きな魚を釣るには、ちゃんとした餌が必要だ。俺がその餌になってやるよ。中途半端なのは役に立たない。」
彼の荒々しく割れた声が壁を伝い、隠れ家の隅まで広がった。
「イヒョン。その次はお前に任せるよ。」
読んでくれてありがとうございます。
読者の皆さまの温かい称賛や鋭いご批評は、今後さらに面白い小説を書くための大きな力となります。




