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160. 一次試験

縮れ毛の男が「バン」と扉を閉めて出ていくと、重苦しい沈묵が再び待機室を支配した。


イヒョンがゆっくりと首を巡らせて室内の様子を窺っていた時、向かい側に座るエマ(エマ)を見て、自身の目を疑わざるを得なかった。


つい先ほどまで猛虎のごとき殺気を放ち、人を食い殺さんばかりに荒れ狂っていた女戦士の姿は、どこにもなかった。 そこには世間知らずの深窓の令嬢のように、膝を揃えて両手をしとやかに重ねた一人の女性が座っているだけだった。


奇妙を通り越して、寒気がするほどの光景だった。


怒りで赤く火照っていた肌は、いつの間にか血の気が引き、透明な大理石のように蒼白になっていた。 長いまつ毛の下に覗く瞳は、静かな湖のようだった。 その中には、先ほどの激情や殺気といった感情の澱が、塵ほども残っていない。 まるで精巧に造られた人形が定位置に戻ったかのような、奇妙な異質さであった。


『単なる性格の変化ではない。感情の起伏がこれほどまでに機械的であるはずがない』


イヒョンは彼女の蒼白な顔色を観察しながら、内心で舌を巻いた。 思い当たる節は一つしかなかった。


『あれは、エマという女のコールディウムに違いない』


あの穏やかでか弱そうな仮面の裏に、怒りを原動力とする彼女の能力が隠されているのは明白だった。


そうしてどれほどの時間が流れただろうか。 重苦しい静寂を破り、再びドアノブが動く音が聞こえてきた。


ギィィィ。


古い蝶番が鳴らす摩擦音と共に、まずライサが姿を現した。


彼女の口元には先ほどと変わらぬ、まるでこの状況のすべてをチェス盤上の駒のように見下ろすかのような、余裕のある微笑が浮かんでいた。 だが、イヒョンの瞳孔が開いたのは、ライサに続いて入ってきた人物たちのせいだった。


先ほどまで顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていた縮れ毛の男。 彼がライサの後ろから、この上なく真剣で沈着な表情で歩いてきたのだ。 その顔に、先ほどの乱暴者のような面影は微塵もなかった。


『やはり……演技だったか』


そして彼らに続き、ギルド本部の高官と思われる人物が姿を現した。


歳月の風波に耐え抜いたような深い皺、そして霜が降りたような総白髪の老紳士であった。 かなりの高齢に見えたが、床を踏みしめる足取りの一つ一つに宿る重厚感は、決して侮れるものではなかった。


落ち窪んだ眼光は深く静かであり、ただの老人と片付けるには、身に纏った気品が尋常ではなかった。 ライサは老人を中央の上座へと恭しく案内した。


つい先ほどまで不平不満をぶちまけて部屋を出ていった縮れ毛の男は、何事もなかったかのように軍人のごとく姿勢を正して老人の左側に立ち、ライサは扉を守るかのように右側に陣取った。


中央に座った老人から放たれる威圧感が、会議室の空気を重く押し潰していた。


着席が済むと、ライサが志願者たちに向かって丁寧に腰を折った。


「長くお待たせして申し訳ありません。ですが、この待ち時間もまた検証過程の一部であったことを、何卒ご理解ください」


彼女の声は丁寧であったが、その中には拒絶しがたい力が込められていた。 ライサは視線を転じ、中央に座る老人へと手を向けた。


「ご紹介いたします。 旅人ギルド本部の副本部長であり、現存する伝説――『アルカディウス』級の旅人、ベルダン・ロシュケル様です。 今回の試験の総監督官を務めていただきます」


瞬間、室内の空気が真空状態のように止まった。


『ベルダン・ロシュケル……!』


志願者たちの目つきが変わった。 1級旅人であり伝説的存在として語り継がれる『アルカディウス』の称号を持つ大物が、すぐ目の前にいた。 名前を聞くだけで戦慄が走るような存在が直接試験官として立ったという事実は、今回の「上級旅人試験」の重みがどれほどのものかを如実に物語っていた。


ライサの紹介が終わると、ベルダンがゆっくりと席から立ち上がった。 六十は優に超えているであろう年齢だったが、彼から老いさらばえた様子など微塵も感じられなかった。 むしろ大地を貫いて聳え立つ巨木のように、歳月の風波にもびくともしない強靭さが感じられた。


歳月をのみで刻んだ彫刻のように角ばった顔、そしてライオンのたてがみのように立派に整えられた髭が顔を覆っていた。だが、何よりも座中を圧倒したのは彼の瞳だった。深い琥珀色の瞳は、獲物を狙う猛禽類のごとく鋭く光り、座っている者たちの魂まで見透かしているかのようだった。


動くたびにほのかな光沢を放つ濃紺のローブ、その下に見える実用的な服装と、土埃の代わりに年輪が染み付いた革のブーツ。彼は単に机に座ってペンを転がすだけの官僚ではなかった。生涯を荒野で過ごしてきた「本物」であった。


「よく来た、旅人たちよ。ここまで辿り着くのは容易ではなかったろう。ベルダン・ロシュケルだ」


短く重厚な挨拶だった。彼はそれ以上の余計な言葉を排し、再び席に座った。その簡潔な挨拶一つで、この空間の支配者が誰であるかが明確になった。


続いて、ベルダンの左側に立っていた縮れ毛の男が一歩前へ出た。先ほどまでの神経質で堪え性のない乱暴者の姿は、どこにもなかった。彼は綺麗にかしつけた髪と同じくらい余裕のある微笑を浮かべ、口を開いた。


「今回の試験の実務進行を任されました、アンテオ・セルカンです。等級は2級、ルミナールです」


部屋の中がざわついた。少し前まで一緒に閉じ込められ、不平をぶちまけて机を叩いていたあの「厄介者」が試験官だったとは。ライルは顎が外れんばかりに口を開けて呆然とアンテオを見つめ、エマもまた興味深げに目を細めて彼を観察した。


アンテオは受験生たちの反応を楽しんでいるかのように、口元に密かな笑みを浮かべていた。やがて、彼の視線がイヒョンに留まった。彼はイヒョンに向かって片方の眉をわずかに上げ、にやりと笑ってみせた。


『干し肉と酒、大変美味しくいただきました』


声には出さなかったが、その眼差しは明白に感謝を伝えていた。イヒョンはその図太い微笑みを見て、内心で苦笑を漏らした。不平分子を演じ、受験生たちの忍耐力と危機対処能力をすぐ隣で採点していたのだ。彼が扉を蹴って出ていったのは、抗議するためではなく、演技を終えて本来の任務に復帰するためだった。


茶目っ気が消えた彼の瞳には、鋭い試験官としての知性が光っていた。アンテオの言葉が終わると、ライサが再び軽快で明瞭な声で自己紹介をした。


「ご存知の通り、私はライサ・ベロスチンです。3級オブシディアです。アンテオ・セルカン様を補佐し、上級試験の実務を担当しております」


紹介がすべて終わると、ベルダンが再び口を開いた。彼の声は低く響き、部屋の隅々まで隙間なく満たすような重厚感があった。


「まずは、この場所まで辿り着き、第一次関門を通過した四人に祝辞を述べよう」


短いが重みのある宣言だった。その一言に、イヒョンは生唾を飲み込み、胸の奥から込み上げる安堵の溜息を押し殺した。毒の入った茶、仕組まれた寸劇、そして息の詰まるような待ち時間という見えない圧迫。そのすべての過程が無駄な時間ではなかったと証明された瞬間だった。


しかし、イヒョンは表情を緩めなかった。シャンパンを空けるにはまだ早い。本当の試験はここから始まるのだから。


その時、張り詰めた緊張の糸をぷつりと切るような、軽薄な声が飛び出した。


「ちょっと待ってください! あの、質問があるんですけど!」


ライルだった。


彼は依然として状況が読めていないのか、好奇心に満ちた瞳を輝かせながら、勢いよく手を挙げた。ベルダンの濃い眉がぴくりと動いた。最初から多弁で軽はずみな言動を繰り返し、神経を逆撫でしていた男だった。


ベルダンは不快感を隠さなかったが、ライルは構わず言葉を続けた。


「第一次試験っていうのが、正確にどこからどこまでだったんですか? それに通過基準は? 正直、僕たちはただぼーっと座っていただけなのに、何を見て合格させたのか理解できなくて」


ベルダンは顎髭を撫でながら、冷たく一蹴した。


「試験の詳細な項目と採点配分表は機密だ。すべての過程が終われば総合的な評価が下される。今はただ、第一次関門を越えたという事実だけを知ればよい」


並の受験生ならば、この鋭い老将の気迫に押されて口を閉ざすところだった。しかし、ライルの空気の読めなさは想像を絶する領域にあった。彼は納得がいかない様子で唇を尖らせ、再び口を開いた。


「えー、でも基準がわからないと、この試験が公正かどうかなんて僕たちにはわからないじゃないですか。監督官様の気分次第で適当に選んだ可能性だってある。そう思いませんか?」


瞬間、会議室が凍りついたようだった。ベルダンの琥珀色の瞳が獲物を捉えた猛獣のごとく鋭く光った。皺の寄った顔に濃い影が落ち、今にもライルを一喝しそうな殺気立った怒りが立ち上った。ライルはそこでようやく、自分が触れてはならない逆鱗に触れたことを察知した。彼の肩が本能的にびくりと震えた。


嵐が吹き荒れる直前、氷の上を歩くような沈黙を破ってアンテオが割って入った。


「ふむふむ」


彼はひどく不機嫌な表情を浮かべているベルダンとしばし視線を合わせると、軽く頭を下げて無言の許しを求めた。 ベルダンが短く鼻で笑って視線を逸らすと、アンテオは特有の図太い微笑を浮かべてライルを見つめた。


「はははは。疑問を抱くのも無理はありません。疑うことこそ旅人の徳目ですからね」


アンテオは机の角に両肘をついて指を組み、余裕たっぷりに言葉を続けた。


「旅人の試験は毎回変わります。時代が変わり、依頼の内容も変化しますからね。ですが、絶対に変わらないものがたった一つだけあります。それが、この第一次試験です」


彼は人差し指を一本立てると、ライルの目の前で振ってみせた。


「第一次試験は、旅人が備えるべき基本中の基本、すなわち『資質』を見る過程です。退屈に耐える忍耐力、些細な変化を見逃さない観察力、突発的な状況への対処能力、そして口がどれほど堅いかまで。あなたたちが息をし、瞬きをするすべての瞬間が採点の対象だったということです」


アンテオの瞳から茶目っ気が消え、鋭く光った。


「これまで数多くの高位の旅人がこの過程を経てきましたが、その公正さに疑問を呈した者は一人もいませんでした。なぜなら、彼らは知っていたからです」


アンテオはにやりと笑って釘を刺した。


「基本ができていない者は、どうせ任務に出て野垂れ死ぬだけだということを。死体が公正さを説くことなどできないでしょう?」


穏やかな口調ではあったが、刺のある言葉だった。 ライルは反論しようと口をもごつかせたが、ベルダンの殺気立った表情を再び確認すると、貝になったように口を固く閉ざした。 これ以上騒ぎ立てれば、第二次試験どころかこの場で追い出されるかもしれないという生存本能が、警告を発したようだった。


アンテオの説明が終わると、ベルダンの右側に立っていたライサが穏やかに進み出た。 彼女の手には古風な紋様が刻まれた小さな木箱が握られていた。


「今後の予定をご案内いたします」


ライサの落ち着いた声が、乱れていた場の空気を整えた。


「第二次試験は今から三日後に始まります。任務については後ほど個別に通知する予定ですので、それまで各自休息を取り、最善のコンディションを維持してください」


彼女はテーブルの上に箱を慎重に置いた。


カチャリ。


軽快な機械音と共にロックが外れ、箱の蓋が開いた。 ライサはその中から品物を一つずつ取り出し、テーブルの上に並べた。 清らかな金属音を立てて置かれたのは、四枚の銀色の円盤だった。 表面にはいかなる紋様も文字もなく、ただただ滑らかな無地の金属板であった。


「これが皆様の新しい身分証となります」


ライサはイヒョンと他の旅人たちに円盤を一枚ずつ手渡した。 イヒョンが円盤を受け取った瞬間、掌を刺すような冷気とずっしりとした重量感が伝わってきた。


「従来の旅人認識票に代わるものです。第二次試験において非常に重要な品ですので、決して紛失しないよう注意してください」


イヒョンは手の中の銀色の円盤をじっと見つめた。 直径はおよそ10センチメートル余り。 縁は鋭く仕上げられており、中央に向かうほど緩やかに厚みを増す形状だった。 上部に首紐を通すための小さな穴が一つ開いているだけで、装飾の類は一切ない。


『単なる金属の塊か?』


イヒョンは眉をひそめ、円盤をあちこち裏返してみた。 鏡のように滑らかな表面は、イヒョンの顔を映し出すだけだった。 隠された継ぎ目や操作できそうなボタン、あるいは魔力の痕跡のようなものは全く見当たらなかった。 爪で表面を引っ掻いてみたり、耳元で振ってみたりもしたが、重厚な鉄の重み以外には、何の情報も読み取ることができなかった。


「これじゃあ、ただの鉄屑ではないか」


沈黙を破ったのは、隅で黙々と本を読んでいたむさ苦しい髭の放浪戦士だった。 彼は不格好な指で円盤をカチカチと弾き、不満げな声を漏らした。


「いかに試験とはいえ、印一つないこんな平べったい板切れを持って、カレオストラの検問所を通れるはずがなかろう。警備兵たちに狂人扱いされなければ御の字だ。一体これで誰を納得させようというのだ」



読んでくれてありがとうございます。


本業の都合により、小説の投稿時間が不規則となっております。

ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。


読者の皆さまの温かい称賛や鋭いご批評は、今後さらに面白い小説を書くための大きな力となります。


お読みいただき、楽しんでいただけましたら、ブックマークやコメントをお願いいたします。


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