11. インテルヌム
エフェリアの北端、過酷な自然環境ゆえに人々の知られざるところ。
エフェリア北部の鉱山都市を過ぎ、帝国の国境を越えると、広大なツンドラが姿を現す。
そしてそのツンドラ地帯をさらに北へ進むと、禁じられた地と呼ばれる場所がその姿を現す。
風さえも凍りつく極寒の大地に、そびえ立つ険しい山脈。
人だけでなく獣さえも近づくことをためらう、荒涼とした地域だった。
表面は氷のように硬く固まっていたが、その下では熱い溶岩が川のように煮えたぎって流れていた。
冷気と熱気が衝突して生まれた大地は、亀裂と蒸気が噴き出す巨大な息の穴で満ちていた。
その隙間から、溶岩が脈打つように絶えず鼓動していた。
誰も近づこうとしない、忘れ去られた場所だった。
空は暗く、青白く、太陽は地平線にとどまり、薄暗い光だけを放っていた。
この地では昼と夜の境界が曖昧で、時間は止まったかのようにゆっくりと流れているようだった。
そんな大地にそびえ立つ巨大な構造物は、まるで別の次元から落ちてきたかのように異質で、圧倒的な存在感を放っていた。
黒い石と濃い灰色の火山岩が絡み合い、空を突き刺すかのようにそびえ立つその建築物は、歪んだ曲線と鋭い尖塔で構成されていた。
外壁はまるで獣の低い唸り声のような深い振動を放ち、生きて呼吸しているかのようだった。表面を流れる不可解な文様は、光の加減で揺らめき、微妙なリズムを生み出していた。
その巨大な融合体は、荘厳でありながらも不気味な雰囲気を漂わせていた。
城の外壁は暗い色調を帯び、中央の尖塔は雲を突き抜けるかのように高くそびえ、その頂上には青みを帯びた紫の炎が絶えず揺らめいていた。
黒い鉄の装甲馬車が、巨大な建築物へと続くアーチ型の橋の前でゆっくりと速度を落とした。
橋はゴシック様式を思わせる、両側にそびえる塔と交差する石造りのアーチで構成されており、その幅は馬車五台が並んで通っても余裕があるほど広かった。
橋の下では溶岩が流れ、地下水が溶岩と出会って生じた蒸気が渦を巻きながら立ち上っていた。
鉄と石でできた巨大な門は、精巧かつ奇怪な浮き彫りで装飾されていた。
巨大な門の上の望楼では、黒い甲冑をまとった兵士たちが、沈黙の中で馬車を見下ろしていた。
馬車が橋の端にたどり着くと、門が重々しく響きながらゆっくりと開いた。
鉄の装甲馬車が先頭に立ち、黒い馬鎧をまとった馬に乗るノクティルの騎士たちが、マントをはためかせながらその後に続いた。
門をくぐると現れた内部は、暗い聖堂のような深い闇と濃い霧に満ちていた。
馬車から降りたアズレムは、悪魔の口のように大きく開いた城門を一瞬見つめた後、内部へと足を踏み入れた。
内部には黒い監視者たちがところどころに立ち、静かに彼らの侵入を見守っていた。足音が石造りの床にこだまのように響いた。
アズレムは正門から続く長い回廊を進み、黒い石造りの階段を登った。
外の溶岩と霜の風が混ざり合う混乱とは異なり、内部は静寂に包まれ、空気は重く沈んでいた。
壁と天井にはコルディウムで刻まれた文字が光を放ちながら流れ、その光はまるで生き物のように微かに脈打っていた。
アズレムが廊下を通るたびに、壁面の文様が反応するように揺らめいた。
やがて彼は巨大な門の前にたどり着いた。
門はまるで訪問者を認識するかのように、ゆっくりと開いた。
その中に入った部屋は、巨大なドーム型だった。床は黒く滑らかな石材で覆われ、アズレムの足音が大理石に響く低い音を生み出した。
天井は高く暗く、部屋には低く漂う霧が満ちていた。壁面を流れる文様は、血のようにゆっくりと流れ、止まり、また流れを繰り返し、心臓の鼓動のような不思議な光を放っていた。
入口の向かいには、半円形の裁きの場のような高い壇が構えられていた。
その中央には、すべてを貫くような強い気配を放つ存在が静かに座していた。
彼はほとんど動かなかったが、その存在感は息さえも圧する巨大な気配で、部屋全体を完全に支配していた。
彼は肉体の年齢を超えた存在だった。
全身は黒いマントに覆われ、顔は金色の文様が刻まれた黒い仮面で隠されていた。
仮面の目の穴は果てしない闇を宿し、深い深淵を覗き込むような感覚を与えた。
彼の年齢を知る者はおらず、彼が戦う姿を見た者もほとんどいなかった。
だが、インテルヌムの中でもベルダクの名を畏怖と恐れなしに口にする者はいなかった。
「ベルダク様。」
「その件はどうなった?」
ベルダクの声は低く柔らかだったが、構造物全体を揺さぶるかのように響き渡った。
空間が振動し、アズレムの頭の中まで圧迫感が押し寄せた。
しばらく沈黙していたアズレムは、まるで自分の言葉一つ一つが罪になることを恐れるように、ゆっくりと口を開いた。
「特異な事態が起きました。」
「特異な事態?」
アズレムは片膝をつき、イヒョンが持っていた物が入った箱を恭しく差し上げた。ベルダクが手を伸ばすと、指先からぼんやりとした光が広がり、箱がゆっくりと浮かんで彼の前に移動した。
箱を受け取ったベルダクは、ゆっくりと蓋を開けた。中にはイヒョンが持っていた紙の欠片、金属の枠、片面が鏡のように輝く掌サイズの物が入っていた。
「ふむ……」
「ご覧の通り、訪問者が来たようです。」
「続けなさい。」
「西の荒野で捕らえた男から奪った物です。この世界に存在しない素材で作られており、表面にはエフェリアでは見られない記号が刻まれています。何よりも、その男のコルディウム測定結果が0でした。」
見知らぬ素材、読めない文字、エフェリアに存在しない物。ベルダクの視線がその物の上を滑るたび、仮面の亀裂文様が反応するように揺らめいた。
しばらく沈黙していた彼が口を開いた。
「……地球か。実に久しぶりだ。」
彼の言葉に、部屋中のコルディウム文様が一斉に光を止めた。
「地球から来た訪問者が、また別の鍵を持ってきたに違いない。」
アズレムは黙って頭を下げた。
ベルダクは顔を上げ、彼を見つめた。
「それだけか?」
「そして、その訪問者と一緒にいた少女がコルディウムの暴走現象を引き起こしました。特異な点は、彼女の暴走が周囲のすべてのコルディウムを消滅させたことです。」
「ふむ……おそらくコーデックス・コルディウムに関係する事象だろう。」
ベルダクの声は静かだったが、断固とした響きを帯びていた。
「その訪問者はこの世界の秩序を揺さぶる変数になり得る。我々が長年準備してきた計画に予期せぬ妨害となる可能性が高い。」
彼は一瞬言葉を止め、再び続けた。
「今度はその訪問者を連れてこい。できれば生きている状態で。」
彼の声は一層強い響きを帯びた。アズレムは再び頭を下げた。
「すでに措置を講じました。」
「もう二度の失敗は許さない。」
「はい、ご命令の通り……」
アズレムは礼を尽くした後、巨大なホールから退出した。
朝日が昇り始めた早朝、イヒョンは地図を広げた。太陽が地平線の上にゆっくりと姿を現していたが、風は依然として冷たかった。地図の印や線を丁寧にたどっていた彼の視線が、ある一点で止まった。それは現在地から北東へ半日ほどの距離にある小さな村だった。
「ここが一番近い村みたいですね。」
「ひとまずそこへ行きましょう。あなたの故郷に行く前に、準備が必要そうですから。」
イヒョンの言葉に、リセラは頷いた。エレンは枯れ草で作った即席の寝床で、かすかにいびきをかきながら眠っていた。
一行は簡単な朝食を済ませ、旅に出た。風景は次第に変わり、草や低木が増え、大地は活気を取り戻しているようだった。
どれほど時間が過ぎた頃だろうか。リセラは突然、奇妙な気配を感じ取った。彼らが向かう村の方向、遠く地平線の向こうから、説明できない不吉な気配が漂っていた。風は静かだったが、空気は微かに震えていた。
「イヒョンさん、なんか…変です。」
イヒョンが顔を上げた。
「あの空から、妙な気配が感じられるんです。」
リセラが指した方向を見たが、イヒョンには何も感じられなかった。
「そうですね。僕には何も感じられないんですけど。ハハ。」
やがて、遠くに村のシルエットが現れた。低い屋根が徐々に近づいてきた。しかし、何かがおかしかった。昼時が近づいているのに、村から煙が立ち上っていない。人々の気配はまるで感じられなかった。
リセラは村の入口で荷車を止め、周囲を見回した。彼女の眼差しが曇り、一瞬、戸惑いの色が浮かんだ。
「イヒョンさん…この村、暗くて不吉な気配が強く感じられるんです。」
「暗い?」
「自然じゃないんです。今まで感じたことのない気配です。怒りや悲しみのような感情ではなく、もっと深くて濁った何かがあるんです。腐った膿のような感覚が村全体を覆っています。」
イヒョンは周囲を見渡した。村は静まり返り、人の気配は見当たらなかった。扉は固く閉ざされ、窓のほとんどはカーテンや板で覆われていた。
「ちょっと待ってください。」
イヒョンは荷車から降り、一番近い家に近づいて扉を叩いた。反応はなかった。もう一度叩くと、中から何かが引きずられるような音がしたが、返事はなかった。誰かが中にいるようだった。
イヒョンは慎重に扉を開けて中に入った。
「どなたかいらっしゃいますか?」
扉を開けた瞬間、家の中からひどい悪臭が漂ってきた。イヒョンは顔をしかめながら、慎重に中へ進んだ。部屋の中には男が床に倒れていた。彼の肌は青白く、干からびており、口元と顎には黒く固まった嘔吐の跡が鮮明だった。床のシーツは吐瀉物と汚物で汚れ、空気は下痢と嘔吐の臭いで覆われていた。
男は体を震わせ、激しい痙攣に苦しんでいた。息は短く浅く、瞳は濁って揺れていた。彼はすでに生と死の境界にいた。
「リセラ! こちらに来てください!」
リセラが駆け寄り、扉を開けると、思わず手で口を覆った。
「うっ! これは何!?」
イヒョンは彼女を振り返り、言った。
「他の家も確認しないと。」
彼は躊躇せず、次の家に向かった。村の路地は静まり返り、足元には散らばった物が引っかかった。扉を叩いたが、やはり返事はなかった。扉を開けると、また別の患者が目に入った。
床に倒れていたのは中年女性だった。すでに意識を失っているようで、口と鼻の周りには乾いた吐瀉物の跡が残っていた。服は汚物で濡れ、体は脱水でやつれていた。額は熱く火照っていた。
イヒョンはさらに別の家、そしてまた別の家へと向かった。ある家では家族全員が倒れていた。父親はすでに息絶えており、子は微かにうわ言をつぶやきながら身をよじっていた。母親は壁にもたれて座り、目を開けたまま動かなかった。
病が村を席巻しているのは明らかだった。
読んでくれてありがとうございます。