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第11話 巨大怪鳥ズーを倒してドワーフ族を救え

「断る」


 ドワーフ族の住処に着いて、魔王城再建のために力を貸してほしいと言ったところ、族長から返ってきたのはそんな言葉だった。


 ドワーフと言うから毛むくじゃらなおっさんをイメージしてたが、族長を名乗った魔族は意外にも若かった。


 年は俺より少し上というくらいだろうか?

 筋骨隆々とした大男で、鋭い眼光が覗くさまは獰猛な獣を思わせる。


 陽が暮れる頃、俺たちはドワーフ族の住処に到着し、早速族長と話す機会を得て今は卓に着いていた。

 住処と言っても、布で囲っただけの簡単なものがちらほら見えるくらいだったが……。


「あの、族長さん」

「ルドーでいい。それにかしこまらンで結構だ」

「ではルドー、と。協力できない理由を聞いても?」


 ルドーの目がギロリとこちらを向く。

 え、何? 怒ってる?


「まず姫さんを救ってくれたこと、オレからも礼を言わせてもらう」


 言って、ルドーは豪快に頭を下げる。

 良かった、怒ってるわけじゃなさそうだ。


 それにしてもこの男、いちいち迫力がある。


「だが、拠点を構えるってのには反対させてもらう。一つの場所にいて攻め込まれちゃ元も子もねぇンだ。それなら住む場所を転々としていた方が安全さ」


 ……そうか。それであの布で覆っただけの住処なのか。

 確かに移り住むには良いだろうが……。


「余が頼んだとしてもか? ルドーよ」

「……いくら姫さんの頼みでも聞けねぇことはある」

「……」

「分かってくれ。もちろん、オレも魔族全体のことは大事さ。ただ、最近ではなぜだか影の魔獣も活発化してやがる。今は野生のシャドウからガキどもを守るだけでも精一杯なンだ」


 そう言ってルドーは外の広場で遊んでいる子供たちに目を向ける。


「拠点を構えて一つの場所に落ち着けるってのは確かに理想だろう。ただ、先代の魔王様が討たれた時の戦で分かったろ? オレたち魔族じゃ人族には敵わねぇンだ」

「しかし、いつまでそんな暮らしを続けるつもりじゃ?」

「……っ、それは……」

「おぬしも分かっておるんじゃろ? 逃げ続けることと安寧の日々を送ることはまったくの別物じゃ。どこかで決意せねば、魔族はこの先も虐げられる存在になる一方じゃぞ?」


「……なら姫さんに聞くが、この人間に魔族を守るだけの力があると?」

「ああ、ある」


 即答かよ。

 俺は自信満々に言い放ったメルに思わずツッコミそうになる。


 ……でも、魔族が安心して暮らせるよう力になると俺はメルに言った。

 それは当然、魔族たちの生活を背に負うということだ。


 責任感というのももちろんあるが、メルが信じてくれているということは正直嬉しいことでもあった。


 ルドーは困惑した表情を浮かべながら、俺とメルとを交互に見やっている。


「……だが、口だけなら何とでも言え――」


 ――キャァアアア!


 ルドーが言いかけたその時、外の方から子供の悲鳴が聞こえてきた。


 ――っ!


 俺たちは慌てて外に駆け出す。


 見ると、そこに現れていたのは巨大な影の怪鳥、ズーのシャドウだった。


「クソがっ! なんでこんな大型のシャドウがここにいやがンだ……!」


 ルドーがそう声を張り上げるほどにズーのシャドウは大きかった。

 同じく巨大な両足にはそれぞれドワーフの子供が捕まえられている。


「うわぁ! 助けて、ルドー!」

「くっ……!」


 子供に助けを求められながらもルドーが動けないのは無理もなかった。

 ズーは子供たちを掴んだまま、遥か上空で旋回していたのだ。


 巨大な戦斧を持ち出していたルドーだったが、これでは攻撃が届かない。


 ――ガルァアア!


「――っ!」


 ズーのシャドウは大きくクチバシを開けて咆哮したかと思うと、大きく羽ばたき遠ざかっていく。


「いかんっ! ヤツめ子供たちを連れて逃げる気じゃ!」


 ――そうはさせるか……!


=====================

【禁呪・チートマジック一覧】

●強化魔法

・対象:スライム

・対象:獣人族

・対象:自分自身(二倍強化(ダブルフォース)

    自分自身(三倍強化(トリプルフォース)

●攻撃魔法

極大黒炎魔法(ヘルフレイム)

=====================


 俺は魔法の使用を念じ、表示された青白い文字列の中から一つを選択する。


三倍強化(トリプルフォース)!!」


 自分自身を強化するチートマジックを唱えると、凄まじい力が湧き上がるのを感じた。


「メル、足場を!」

「……任せろぬし様っ! 氷造形魔法(フロストメイク)!」


 メルが魔法を唱えると地面から氷の柱が飛び出した。

 俺は階段状に並べられたその上を一息に駆ける。


「ンなっ……!?」


「どぉりゃあああああ!」


 そして、最後の氷柱に足をかけると思い切り跳躍して上空へと舞い上がった。


 ――ガルァ!?


 影だから表情は分からなかったが、たぶん驚いていたと思う。

 声を上げて振り返るズーの頭が手の届く範囲にまで迫る。


「子供たちを、返しやがれ……ッ!!」


 ――ガルァアアアアアアアア!!


 俺が強化した拳を思い切り叩きつけると、ズーはのたうち回った後、霧散し消滅した。


「タット、シリル! 子供たちをっ!」

「「はい、ベゼル様!」」


 俺が叫ぶとタットとシリルがそれに応じ、投げ出された子供たちを空中で抱きとめることに成功する。


 ――やった、上手くいった……!


 俺も地面に着地した後、子供たちの無事を確認して一息ついた。


「な? 言った通りじゃろ?」


 メルがニヤリと笑いながら視線を向けたその先で、ルドーは目を見開いていた。


   ***


「やれやれ、どうやらニイちゃんは新しい魔王として十分みてぇだ。これは姫さんと同じで信じるしかねぇな」

「それじゃあ……」

「ああ。魔王城再建の話、ドワーフの長として協力させてもらう」


 ルドーは俺に向けて大きな手を差し出してきた。


「ありがとう、ルドー! 恩に着るよ」

「ポヨポヨ!」

「ったく、感謝するのはこっちなンだがな……」


 俺が差し出されたルドーの手を握って言うと、ルドーはどこか照れくさそうにしている。

 ルドーだけじゃなく、他のドワーフにも散々お礼を言われたばかりだから気にしなくていいのに。


「しっかし、アンタは姫さんのいいパートナーになりそうだな」

「え? ああ……。メルは戦闘でも手助けしてくれるし、ありがたいよ」


 俺は周りにいるドワーフたちと談笑しているメルを見やった。


「……いや、そういうことじゃねぇンだがな」

「……?」


 ルドーはなぜか頭をボリボリと掻いていたが、すぐに切り替えるようにして顔を上げた。


「まあいいや。とにかく、よろしく頼むぜ大将!」


 ルドーはニカっと笑い、俺の背中をバンバンと叩いてくる。


 何はともあれ、これで魔族が安心して暮らせる場所を築けるといいな。


 そんなことを考えていると、俺の前には見慣れた青白い文字列が浮かぶ。


=====================

ドワーフ族の信頼を得て新たなチートマジックを会得しました。


【禁呪・チートマジック一覧】

●強化魔法

・対象:スライム

・対象:獣人族

・対象:ドワーフ族 【※新規】

・対象:自分自身(二倍強化(ダブルフォース)

    自分自身(三倍強化(トリプルフォース)

●攻撃魔法

極大黒炎魔法(ヘルフレイム)

=====================


 また新たに魔法を習得したようだ。


 そういえば、【精霊魔法】を習得した弟のマーベルはどうしているんだろうか?

 最後に言葉を交わすこともできずに別れることになってしまった王女、リリアのことも気になった。


 こうして魔族たちと関わってきて感じることがある。

 みんな、いい奴らばかりなのだ。


 今になってみれば、人族の間で広まっている「魔族は悪である」と決めつけた教えは、明らかに間違っていたと思う。


 幼い頃から仲良くしていたリリアであればきっとこのことを理解してくれると思うし、王族からの働きかけで何か状況を変えられるかもしれない。



 ――といっても、王都のことは知る術もないしな。まずは魔族たちが安心して暮らせるような環境を作らないと。


 俺は浮かんだ文字列に目を通しながらそんなことを考えていた。


 その頃、王都ではまったく予想外の事態が起きているとも知らずに……。


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