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木屋町ホンキートンク Ⅰ  作者: 鴨川 京介
第3章 世界を救う?冗談でしょ?
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47 祇園はシオン?

 ようやく代官はソファに座り俺を正面に促した。

 中の生活と家は洋風なんだな。土足で上がってきたしな。


 「改めて謝罪いたす、鴨川殿。」


 俺たちがソファに座った途端立ち上がり、頭を下げた。


 「いえ、もう謝罪は結構です。それよりこの街はどうなっているんですか?代官のあなたの指示でもなく兵が動いているなんて。」


 「面目ない…実は…」と、いきさつを語りだした代官。


 一月ほど前に、南の方から山賊のような集団がやってきて、俺たちが町を守ってやるから給金を払えと、押しかけ士官をしてきた集団らしい。この街にはそもそも常駐している兵というのがいないため、さっそく王城に使いを出したのだが、いつまでたっても返事が来ない。一人二人なら代官でも成敗できるが、それが100名ほどの荒事に慣れた男たち相手だと、多勢に無勢となってしまい、仕方なく雇用することになったそうだ。そうすると武官、文官のそれぞれトップと自称しだし、あっという間にこの街を乗っ取られてしまった。川の西での魔物暴動の際に作った城門と併せて、守りやすい街でもあるので、この街に居座り、今に至ってしまっていたという話だ。


 う~ん。終わってるな。


 あの猫田という男と、文官の長として出てきた斉木という男が、この街を好き放題にしていたらしい。住民はかどわかされたり、食料を強奪されたり、金銭をゆすられたり、店を壊されたり…。暴虐の限りを尽くしていたようだ。おかげで冬の潤沢な貯えがみるみる減っていき、あとひと月もつか持たないかという状況らしい。うん、やっぱりそうだったね。


 それにしてもこの代官。散々だったようだな。いきなりこの街の代官に指名され、意気揚々と着任したのが去年の夏らしい。元々ここは王城の城下町に荷を運ぶために、この土地での玄関口になっていて、商売で栄えていたので、自営兵といっても物の20名ほどで、城壁の外は国直属の部隊が巡回警備を行っていたらしい。それがあの100人ほどの野党たちが来るころに、ぱったりと来なくなり、今の惨状につながっているらしい。これって国から見捨てられた?王国ってどうなってるんだろう。もともと去年は作物も不作で飢饉の心配をしなければいけないほどだったそうだ。そこに加えて100人の野盗。大変だったね。同情するよ、中間管理職のつらさだね。


 確かに日本でも数年おきに不作に見舞われて、人口を減らせていた過去がある。

 結局、治水など人の手によって行う近代農業が発達していない弊害だろう。

 どんな方法で農業を行っているのか聞くと、日照りが続けば魔法師が魔法で水を出す。しかしすぐに魔力がつき休憩となる。その繰り返し。

 これじゃいつまでたっても農地全体に水は運べない。

 農奴といわれる人たちが、人力で桶を担いで水をまいているが、これも焼け石に水の状態。

 鴨川には満々と水をたたえてるのだが、城壁を作ったせいで汲みに行くこともできなくなっている。


 とりあえず王と話をするか。


 それでも目の前に飢えた人たちがいるので、これを何とかしなければいけない。

 そこまで大量の食糧は持ってきていないが、取り急ぎやらなけりゃ目の前の人たちが飢えて死ぬ。


 「この街はどれぐらいの人がいるんですか。」


 「ざっと5,000人程かと。しかし、この街が変り果てるのを見て取って、大手の商売人たちは早々に店を引き払い、出て行ってしまっておる。実際残っておるのは4,000人ほどかと…。商人もいないため、食料の調達もままならない現状でござる。」


 う~ん、ここで休憩して、明日にでも王城に向かおうと思ってたけど、かなりやばい状況のようだな。


 「徳田代官。それでは私から援助を行いましょう。しばらく食べれるだけの食糧を確保するために一度戻りますが、2~3日後にまた来ます。そのあと炊き出しなどをして、住民の食生活をまず満たしましょう。そのあと、王城に行ってどうなっているのか、状況を見てくることにします。」


 「おぉ。ありがたい申し出、かたじけない。」


 「それにうちの子たちを何人か置いていきます。周りの野生の動物など、食料となる肉などをとってこさせましょう。それと今ある物資だけでも置いていきますので、これで何とか急場を凌いでください。食材の調理の仕方は私の配下に聞いてください。彼女たちがどこか寝泊まりできるところがあればいいのですが…。」


 「それならこの屋敷をお使いくだされ。私の居室以外、大広間も開放しますので、そこ使ってくだされば。」


 「わかりました。では早速指示を出します。後のことはこのレティに任せますのでよろしくお願いします。レティ、頼むな。お前なら俺の知識が見れるだろうから『災害対策』を参照してくれ。」


 「お任せください、京介様」


 屋敷の玄関に早速向かい、愛たちと合流し、以降の手配を行っていく。


 「愛は俺に同行してくれ。日本でいろいろとやらなきゃいけないことができた。一度向こうに帰ることにする。それ以外のみんなはレティの指示を受けて、食事の炊き出しや環境整備を進めてくれ。特に人数の把握が早急に必要だ。ざっくりでもいいので人数を確かめてくれ。あと、家屋を失った人や住んでいる家がボロボロになっている人たちは、とりあえずどこかに一か所避難所を作って、収容してあげてほしい。服もボロボロみたいだったけど、今はまだ渡してあげるものもないしな。あと、毛布類は早急に届けさせるので、雨風がよけれて、みんなが横になれるような簡易家屋をできるだけ作ってやってくれ。少々畑をつぶそうが構わん。後でどうせ区画整理でもして作り直さないと、このままではこの街は死滅する。あとは落ち着き次第、住民台帳の作成だな。この街の人間なのか、よそから流れてきたのか。それらも調べてくれ。愛、すまんが印籠スマホにある食料や衣服類で出せるものは出しておいてやってくれ。あと調理器具なども。ワゴン車とバイクも置いていこう。みんなに活用してもらってくれ。今日中にもう一度こっちに帰ってくるけど、みんな頑張ってこの街の人たちを救ってやってくれ。では解散。」


 さっと、それぞれがすでに役割分担を済ませていたようで、方々に散っていった。

 俺と代官の会話を愛を通して聞いていたんだろう。


 この場には代官と俺と愛とレティだけが残った。


 「そういえばあいつらどうするかな。」


 「先ほどとらえた兵士でしたら、私に考えがございます。きっとお役に立てるよう再教育を施して、周辺警備及び食材確保の部隊としたいと思います。どうせ魔物に襲われても、価値のない命なら、それを有効活用いたしませんと。それにちょっと鍛えればすぐに優秀な兵士に生まれ変わることでしょう。」


 フフフ…って。代官が引いてるよ。俺もだけど。


 状況が分かったので、一度日本に帰ることにする。


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