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木屋町ホンキートンク Ⅰ  作者: 鴨川 京介
第3章 世界を救う?冗談でしょ?
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41 魔法の実験

 あくる日、朝から猫又のおばばにスマホで起こされ、早々に支度して伏見稲荷の武家屋敷まで行くことになった。何でもまた長達を集めたらしい。よっぽど昨日のことが気になってるんだろうな。あの魔法理論。まあ、気にしても仕方ないんで、実際に魔法使ってみることから始めないとな。なんせ俺はまだ自分で魔法を発動させたことがないんだからな。キリッ。


 アメリカンバイクを走らせて、伏見稲荷に向かう。最近このバイクも乗ってなかったからな。バイクを走らせることって結構楽しい。特にこのゆったり感がいいな。そのうちハーレーでも買ってみるか。取り回しが大変だろうけどな。やっぱり日本じゃ大きすぎるか。

 そんなことを考えながらバイクを走らせていく。駐車場にバイクを止め、鳥居をくぐっていつもの武家屋敷に。途中で異界に入ったような感じが今日もしたけど、あれって結界なんじゃないだろうか?


 「ようきたの、みんな待っておるのじゃ。はよう修練場に来い。」


猫又のおばばからスマホを通して指示された。もうこのおばば、携帯機器を使いこなしてんな。電話をかけてくるってこともしなくなった。まあいいか。


 俺は屋敷の横を抜け、屋敷の裏手にある武道場に向かった。ここが修練場のようだ。

 引き戸を引いて開けると、そこはまた空間魔法で拡張してるんだろうけど大きな広場となっていた。小学校のグランドぐらいは優にあるよな。表から見たら意外に小さく見えたのに。


 「さっそく魔法を使ってみるのじゃ。」

 猫又のおばばから催促が入る。


 「ちょっと待てって。俺はまだ一度も自分で魔法を使ったことがないんだぞ。大体どうやって魔法を使うことができるかも、よく分かってないんだからな。」


 「理論は完ぺきなのに実戦が伴ってないってことじゃの。それならまず身体の中にある魔素を動かすことから初め無いといけんのじゃな。おい涼子。こやつに魔法の使い方を教えてやってくれ。」


 「はい、おばば様。それでは京介様、私が教えさせていただきます。」


 おっと、久しぶりだね涼子ちゃん。元気?ゴブリン討伐以来だね。え、話より手を動かせ?

 そんなにせかすなよ。今から教わるんだから。


 「まずは私の手を握ってもらえますか?」と、両手を差し出してくる。


 あやかしといえど女の子の手を握るっていつ以来なんだろう。いろんな目がこっち見てる中、女の子と手をつなぐのって恥ずかしいな。


 「ごちゃごちゃ考えるな。とっとと手をつなぐのじゃ。」


 はいはい。わかりましたよ。そんなに怒らなくてもいいのに。ちょっとしたおじさんの茶目っ気なんだから。

 俺はふぅっとため息をつき、涼子ちゃんの手を握った。両手が繋がった状態になった。


 「今から京介様の右手に魔素の流れを送り込みます。同時に左手からは京介様の魔素を吸い出すような流れを作っていきます。まずはそれを感じ取ってください。」


 そういうと涼子ちゃんは目を閉じ、ゆっくりと俺の右手に魔素を流し込んできた。

 ズズズ…ズズズって感じで何かが流れ込んでくるのが分かる。これが魔素なのか。

 同時に左手からは魔素が引き出されていく。しばらくどこか引っかかりながら流れていくものを感じてじっとしていた。身体の中の魔素の動きに注目していく。これって、もっとスムーズに流れないかな。このズズズって感覚がえらく不快だ。もっとスムーズに…。そうそう、血液が流れるようなイメージでもっとスムーズに…。おぉ、結構すんなり流れるようになってきた。もっとスムーズに、もっともっと…。だんだん流れが速くなってきた。おぉ、これは面白いな。もっと早くできないかな?お、できるな。もっと早くスムーズに…。


 「きょ、京介。お前何をやっておる。すぐにそれをやめえ。涼子が倒れてしまうぞ。」


 魔素の動きに集中するために閉じていた眼を開けると、目の前の涼子さんが息を荒げて座り込んでた。なんかちょっと色っぽい。


 「京介様の魔力の量がすごすぎて、私では持ちません。もっとゆっくりしていただかないと。でももうすでに京介様は魔素を感じることも動かすこともできたみたいですね。」


 ハアハアと息を整えながら、涼子ちゃんは立ち上がった。ちょっと目がうるんでる。俺のせい?うん、俺が調子にのって早く魔素を動かしたせいみたいだね。申し訳ない。


 「あとはその魔素の流れを体の外に出すことで、魔法の発動の初期段階になります。人差し指に魔素を集めて指先から線が出ていくような感じで出してもらえますか?」


 俺は言われた通り、身体の中の魔素の動きを意識して、それを右手の指先に集めてみた。すると右手の指先がほんのり光りだした。これを線のように指先から出すのか?俺の身体には魔素が多いって言われてるんだから力加減は考えないとね。指先からその外へそっと押し出すように力を込めてみた。力を込めるといってもどこかの筋肉を動かしてるんじゃなくて、指から出ていくイメージを少し強く込めた感じ。これって身体の魔素を感じてるからできるイメージだな。たとえるなら心太(トコロテン)をゆっくり押し出す感じなのかな。うまく表現できないな。

 すると指先からゆらゆらと、魔素の線が出てきた。これって…。


 「そうです。それで結構です。それが『魔力線』になります。今、京介様は魔素を『操って』身体の外に出している状況です。これがつまり『魔素を魔力に変える』ということです。そしてその魔力を使って魔法を発動させるのです。具体的には『火』や『水』をイメージしてその魔力を置き換えるようなイメージでしょうか。実際には『事変を書き換える』または『物質化する』ということになるのですが、わかるでしょうか。」


 俺はそう言われて『水』を頭に思い浮かべた。丸い宙に浮いてる水球のイメージ。水は空気中にもあるだろうから、物質化もしやすいんじゃないだろうか。そう考えているとはじめはごくごく小さな水滴がどんどん大きくなり、やがて直径1mほどにも膨れあがっていった。


 「こ、これ、京介。もっと加減せんか。もっと小さいものでええんじゃ。」


 「そういわれても出すのに集中して加減なんてまだできねーよ。」


 俺はこれ以上大きくなるのを防ぐために、意識して魔力が身体から出ていくのを切った。途端に物質化した水がその場に落下し、バシャッと水たまりを作った。あ、涼子ちゃんごめん。下半身水浸しにしちゃった。俺も同じ状況だ。


 「ご、ごめん。制御がまだできなくて…。」と涼子ちゃんに謝る。


 さっきまで手をつないでいて、魔法発動のために一歩引いててくれたけど水浸しだな。


 「いいえ、お気になさらず。これで京介様は魔法の発動の第一段階はクリアしました。あとは修練を重ねて、五行それぞれの物質化、魔力線の操作などを会得していくことで自由自在に魔法が発動できるようになると思います。」


 そう言ってぺこっと頭を下げて、そそくさと修練場から出ていった。着替えに行ったんだろうな。この寒い時期に申し訳ない。俺もびしょ濡れだけど着替えなんか持ってきてなかったな。お、そういえば無限収納に買ってあるやつを入れといたのがあるかな…。まてよ。どうせならこの濡れてる服を乾かすように水だけを集めるってことできないもんかな。…おぉ、できた。やればできるもんだな。


 ん?またババ様の目が見開かれて点になってる。最近その顔よく見るね。


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いつもお読みいただきありがとうございます。

本日7時からサイドストーリーの『こちら魔道具開発工房』を始めます。

よければ見てやってください。

そちらは一日1回更新です。

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