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木屋町ホンキートンク Ⅰ  作者: 鴨川 京介
第2章 驚くことが多すぎて、ちょっと放心してきます。
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29/79

29 結構いろいろいるもんだね

 気を取り直して、人目につかないところにワゴン車を取り出し、伏見稲荷に向かう。愛ちゃんはすでにスマホの中に戻っている。中年オヤジの部屋から女子大生ぐらいの女の子が出入りしたら、よからぬ噂が立つからね。え?配慮してる?出入りの際は『迷彩』をかけて認識できなくなってる?すごいね。そういうの使えるんだ。俺っていまだに魔道具以外での魔法って使ったことないんだけど。え?そうだよね。愛ちゃん自身が魔道具だった。

 たまに忘れるね。反省。


 ようやく伏見稲荷神社についた。

 駐車場にワゴン車を止め、境内を目指して歩き出した。そういえば前にここに来たのって小学生ぐらいの時だったろうか?

 結構歩いた記憶がある。しばらく歩くとたくさんの鳥居がある。よく京都観光などの紹介写真で写っているあの鳥居だ。それぞれ寄贈した人の企業名や個人名が書かれている。京都の老舗や大企業、政治家までずらっと名前が並んでいる。先のほうまで見ると少しくらっとする。あれ?この感覚。異界に引き込まれた?周りは相変わらず鳥居に囲まれている。気づくと周りに人がいなくなっていた。う~ん。異界にもこの鳥居があるのかな。


 しばらく登っていくと鳥居が途切れて、一軒の豪華な屋敷の前にたどり着いた。

 武家屋敷ってとこかな。こんなの伏見稲荷にはなかったはずだけど。

 見ると屋敷の門の前でケモミミをはやした女の子がこちらを見てお辞儀した。


 「ようこそ、京介様。猫又のおばば様がお待ちです。こちらにおあがりください。」

 と、俺を屋敷に案内する。

 屋敷に上がって案内された広間には猫のおばあさんはじめあやかしの皆さんが勢ぞろいした。猫又のおばばって言ってたな。これも初耳だ。涼子ちゃんも言ってたっけ?


 「よう来たの、まあそこに座れ。」と、ずらっと並ぶあやかしの真ん中に、一つぽつんと置かれた座布団を指さした。

 いやいや、こんなとこ落ち着かないんすけど。

 まあ、あきらめて座るか。


 俺が席に着くとさっきのケモミミっ子がお茶を持ってきてくれた。うんかわいいね。この子は猫の子かな?ケモミミの種類はよくわからん。

 お茶を一口啜る。うん、さっきから周りの視線は痛いほど感じてるよ。わかってる。けど現実逃避する俺をチョットは見逃してくれてもいいじゃない。だって左右に並んでるのって猫のあやかし、狐のあやかし、鷹、天狗、赤鬼、青鬼、鼠・牛・虎・兎・龍・蛇・馬・羊・猿・鶏・犬・豚(猪)…。

 周り見回して、笑顔がひきつったのは許してほしい。仕方ないって、初めて見たんだもの。


 「さてそろそろいいかの?」

 猫又のおばばが話しかけてきた。


 「はい。これって何の会合です?てっきりおばば様と二人で話すものとばかり思ってました。」


 「まあ、二人っきりでもよいんじゃがの。どうしてもこやつらがお(ぬし)に会いたいと申しての。せっかくじゃから京都の主だったあやかしの長を集めて検分してもらおうと思うての。」


 「検分?俺をですか?」


 「お(ぬし)もそうじゃが、おぬしに渡した万眼鏡と無限収納印籠じゃよ。」


 すると横の青鬼が突然しゃべりだした。


 「おばば様。このような男にあの万眼鏡を渡したのですか。得体の知れん男によくも…。」


 「お(ぬし)も見て、気づいておるじゃろ。こやつはあやかしの血を引いておる。魔力も膨大に持っておるしな。これは人族ではあの一族以外では初めてじゃな。恐らくは先祖であやかしの血を引いておるんじゃろうが。それが先祖返りしたんじゃろうな。」


 すると天狗が


 「それにしてもおばば様。この方の魔力はわしらより多いぞ。」


 「そうじゃ。そこも不思議なところなんじゃ。」


 「『鑑定』はされたのですか?」


 「いや、まだじゃ。」


 「それではさっそく…。」


 「まあ、慌てるでない。ぼちぼち行えばよい。それよりも京介。お(ぬし)に託した万眼鏡と無限収納印籠を見せてくれんかの。」


 言われてポケットからスマホを取り出し、かけていた眼鏡も合わせて座っている前に置いた。

それを、猫っ子が丁寧に三方に置き、そのままおばば様のところまで持っていった。

 俺が座っているのは、大広間のど真ん中でおばば様までは優に5mぐらいある。


 「う~ん、これは…。」とおばば様が唸りだした。

 それまで黙って見ていたあやかしたちも、どんな変化が起こっているのか興味津々のようで、わらわらとおばば様の周りに集まって眼鏡と印籠を検分しだした。


 おれは広い空間にぽつんと取り残されていた。


 ズズズ…。お茶がうまい。


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