1・魔物に侵攻されない平和な都市に必須の一族
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よろしくお願いします。
わたし、シルリア・ルサキーノが確か7歳になったばかりの頃。
お母様とのお出かけの為にメイドのメイファに準備をして貰って玄関に向かうと、そこには癒やし手時代の衣装に身を包んだお母様がいて、癒やしの杖を手に出かける寸前だった。
わたしに気付いたお母様が、小さなわたしに視線を合わる為に屈んで、申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ごめんねシルリア。お出かけは来週にしましょう」
「どうしたのお母様は……?」
「大きな商隊が王都近くの街道で魔物に襲われたらしいの。魔物の攻撃で怪我をした人がたくさん居るんですって。だから癒やしの教会の人手が足りなくてね。ママちょっと癒やしてくるわ」
そう微笑まれるともう何も言えない。
わたしがいってらっしゃいと手を振ると、良い子ねと頭を撫でたお母様はぱたぱたと出かけていった。
私はお付きメイドのメイファに尋ねた。
「ねえメイファ、王都の外ってそんなに危険なの?」
メイファはこのケノーランド王国の国境沿いの街から命からがら逃れてきた一家のお嬢さんだ。メイファのお父様が力仕事と料理を作ってくれて、お母様とメイファがお家の掃除や細々とした事をやってくれている。
「王都に逃れる際、魔物による危険は多々ありましたが、私が子供だった当時より今は更に命がけになっている様です。今し方ダリア奥様が癒やしに向かわれた商隊も、いつもは居ないはずの凶悪な魔物に襲われたとか」
「こわい……」
「大丈夫ですよお嬢様。魔物の群れはケノーランド王国騎士団の方々が討伐されたのですから」
「でももし王都が魔物に襲われたらどうしよう」
「それこそ心配無用です。王都や各都市は『蒼き堅固なる護り』によって護られていますからね」
「せるりあん……?」
「魔物が街の中まで入って人を襲わないのは、とある一族が結界の魔法で街をすっぽり覆って護っているからなのですよ。勿論ここ王都も。王都は特に強力に護っていると聞きますから、大丈夫ですよお嬢様」
「街はたくさんあるよ……? 結界の人、足りる?」
「ふふ。お優しいのですねシルリア様は。大丈夫ですよ。かの一族はとっても仲良しですから、子だくさんなんです。ほとんどの都市に大抵一人は居る、そんな一族なんですよ」
「そうなんだ。良かったぁ。それで、なんてお名前の一族なの?」
わたしとメイファの会話にお父様の声が重なる。
「おや、気になるのかな? 丁度良い。かの一族からシルリアにも招待状が来ている」
招待状だなんて貴族のご令嬢みたいって思って、それからウチって貴族の端くれだったと思い出した。
そう言えばお父様は男爵家当主だったわとその時おもった。だってお父様といえばお医者様というイメージしかなかったの。
お父様のお仕事は魔法医師。
魔法医マイシャー・ルサキーノと言えば王都でもちょっと有名なんだって。今もまた回復依頼に応えて外出しようと外套を羽織る所だった。
回復魔法医、魔法薬研究家、魔法医療具開発者として色んな結果を出しているお父様の仕事相手は、主に貴族だ。腕が良いと直ぐに貴族の人が独占したがるんだって。研究優先気味なお父様は、拘束時間が少なくて利の良い貴族を平等に癒やしているみたい。主に平民さんを癒やすお母様とは丁度逆。
でも結局貴族の人は、大した事でもないのにちょくちょく名指しで診て貰いたがるから、研究が捗らないって良くこぼしてる。
わたしもきっと、大きくなったら癒やしの魔法を使って怪我や病を治す人になるんだ。だってわたし、お父様とお母様の娘だもの。
その日もどこぞの貴族が用意した馬車が迎えに来ていて、お父様は出かけていった。
素敵な招待状をわたしに残して。
「セイウォル家……」
ピ、と差し出された招待状をじっと見つめた。
格好いいドラゴン印の豪華な空色の盾をあしらった紋章が付いている。つまり正式なものだ。ちゃんとわたしを大人扱いして貰えているみたいでドキドキした。
お誕生日会だって。
同じ歳の男の子。
招待状なんて生まれて初めて貰った。
「シルリア・ルサキーノ様へって書いてある……!」
「ふふ。いっぱい可愛くして行きましょうね」
「うん!」




