出逢い
季節は冬。
神木ミヤコは雪に埋もれていた。コート越しでも感じる雪の冷気に、頭の中が真っ白になっていく。しかしミヤコの心はやや濁っており、ちょうど空の色と同じ灰色であった。
ポツリ、ポツリと、ミヤコの頬に雪が降り落ちていく。呆然としているミヤコは、いつしか過去の記憶をよみがえらせていた。
それは春の季節。風に乗って桜の花びらが舞う道。周囲には見知らぬ生徒達がミヤコを通り過ぎ、新たな校舎へと進んでいく。
見知らぬ少女達の中に、ミヤコの幼馴染である羽田リリの姿があった。彼女とは小学生になる前に引っ越して泣き別れて以来の再会であった。高校生らしく成長しているが、内気な雰囲気は変わっていない様子。雰囲気で彼女が羽田リリであると確信出来る程、ミヤコはリリとの再会を夢見て、そして渇望していた。
だが、リリの視線はミヤコではなく、別の少女に向けられていた。それはただ【見ている】にしては熱を帯びており【眼差し】と言うのが適切であった。
その眼差しが向けられている相手は、校舎の玄関前で新入生を出迎えていた三年の霧島レイ。長い髪ばかりの少女達とは違い短髪で、小さい頃に見上げていた大人のように背も高く、何より凛々しい王子のような女性であった。
ミヤコは瞬時に理解した。リリはあの先輩に一目惚れしてしまったのだと。再会の喜びを分かち合う前に―――否、例え後だったとしても、リリは一目惚れしてしまっただろう。そう思ってしまうのは、一目惚れという運命の魔力をミヤコは既に経験しているからだ。
悲しみとも怒りとも違う憐れみに襲われながらも、ミヤコはもう一度だけレイの姿を見た。自分が恋焦がれていたリリを射止めた相手がどんな容姿なのかを再確認する為。そしてあわよくば自分とすり替えられないか、と。惨めでありながらも、引き下がれない想いが成す対抗心であった。
そうしてミヤコは気付く。レイもまた、リリと同じく熱を帯びた眼差しを向けていた。その相手はあろうことか、自分なのである。
「ミヤコちゃん……?」
レイの眼差しを追うようにして、リリはミヤコを見つけた。何故レイがミヤコに視線を向けているのか。どうして他と違い、彼女にだけ長く視線を向けているのか。リリは分からずにいた。分からずとも、なんだか嫌な気がした。
「ミヤコ……」
普段なら聞こえないはずの他人の囁き声がハッキリとレイの耳には届いていた。レイもまたリリの視線を追い、自分をときめかせた新入生の名前がミヤコであると知った。理由は分からないが、ミヤコの姿を一目見た瞬間、長く閉ざされていたレイの乙女心を呼び覚まさせた。
こうして、三人の少女は出逢った。
そしてこれが、一方通行な三角関係の始まりであった。




