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コミカライズ決定【8位】ヴェリタスの最終定理7 番外編 THE ORIGIN  作者: 王璃月
●第24章:最終定理への道(事実の羅列)

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第4話:継承!

「とうとう死んだぞ!」


その日。社葬が行われている本社ビルの向かいのホールに、私の両親の怒声が響いた。


私の父は、祖父と、祖母が、ようやく亡くなったことに、歓喜していたのだ。


なぜ、実の両親が亡くなって、狂ったようにはしゃぐのか。理由は一つ。父の両親、つまり、私から見ての祖父母は、業界ではシェアトップの、錠前屋の社長である。父は、祖父母が亡くなり次第、自分が次期社長になれると本気で確信していたからだ。母も、旦那が社長になる日を夢見て、そのために若さと寿命を父に捧げてきたのだ。


私の両親2人は、祖父母の死という完全勝利を手に入れて、会社幹部を引き摺りながら、近くのおでん屋へ向かった。


私の両親は「社長になったらお金が入るし、相続でお金が入るから、お金をどう使おうかな」と、皮算用を始め、ニヤニヤとしていた。一方で、幹部たちも、ニヤニヤしていた。何故か。父は、横領と強姦と窃盗を日常的に社内外で行い、祖父の権限においてその蛮行をもみ消してきた、外道を超えた外道である。


祖父母という強力な後ろ盾がなくなったいま、正当に鬼畜たちに対して解雇と絶縁ができるからだ。やっと、社内が平和になる。


だが、頭の中がお花畑な両親は、会社幹部たちの微笑みを、「自身の社長就任確定への祝辞」と受け取っていた。父は、会社幹部たちに向かって、知的障害者なりに、高らかに叫んだ。


「お前ら、ぼくが社長になったら真っ先に挨拶しにこいよ。ありがとうか、ごめんなさいを言えば、許してやる。お前らの財布を握るのは、このぼくだからな。アッチモタッチーポーンターン!アッチモタッチーポーン!チュクチャンチュクチャンチュクチュクチュクポン!天皇家三代将軍、次期社長、おなーりー!……あ!ぼくの子供はね、全員馬鹿だから、自殺してほしいんだ!はい自殺しろ!ったーら自殺しろ!自殺しろったーら自殺しろ!自殺しろったーら自殺しろ!死ね!死ね!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!ピュン!…………ゅーーーーーーッ!!!!!!社長として命じる!!!!!!親も、子も、死ね!!!!!!──────────ワ。おしっこ発射するよッ!!!!!!」


母は、会社幹部たちに向かって、売春婦なりに、高らかに叫んだ。


「次期社長夫人として、あたくしも夫を支えていく所存で……ええ。今後はあたくし、海外に拠点を移し……ええ、マンションも新しく購入しようかなと。まあ、あなたたち貧乏人には買えないと思いますが……あなたもよ。貧乏人は話しかけないで」


私は……頭を抱えた。


……両親は……なんだろう……私をいじめたら、会社での立場がよくなるという、妄想を、なんだか、まだ、続けていたんだよ……私は……私はね、けして、人間を諦めたりはしない。私は、酔っ払いに恫喝されようとも、悪ガキに絡まれようとも、「この人にはまだ良い心があるかもしれない」と、希望を持つのだ。だが、目の前にいるケダモノ二匹は、一体なんなんだ。


こいつらは、もう……なんか……だめだ。


自分の親の死を喜び、自分の子供の死を願い、自らを天皇家だの社長だのと本気で確信している。


私が「人間」を見限ったのは、後にも先にも、この瞬間だけだ。


そして。まだ、両親は、社長になるたたかいを、している。父のお抱えの弁護士は老婆心で言う。


「旦那。もう、あなたは解雇されたんですよ。もう、会社には、新しい社長がいるんですよ。この話は……もう、終わりにしましょう」


だが。両親は、まだ、続けている。さながら、帰還兵のPTSDのように。父は叫ぶ。


「おわってないッ!頭を下げたら社長になってやる!ぼくは社長なんだよ!ぼくは社長になれるんだ!……まだぼくには、パパがいて、そうして……まだ、ぼくは幹部なんだッ!うーまいほッ!ぼくは……!?ぼくは?うーまいほッ!うーまいほッ!うーまいほッッッ!……WHOSE? MY HOME!(うーまいほ)」


……断言する。私には、両親が、いない。いや……生まれながらに、私に両親は、いなかった。


私の心が休まる場所は、重く深く、暗い闇の中だけだった。


そう。


私の心は、休まることがない。

あの日から、ずっと。

父が、叫んだ。


「ぼくが与えたお小遣いで買ったものは、すべて僕のものだ。だから、ぼくが壊してもいいじゃねえか!」


父はそう言うと、私の漫画を、当時小学生だった私に投げつけた。漫画は、床にばらまかれた。父は、私の顔色を伺いながら、男性器を立たせた。父は、私が泣き出すかとニヤニヤ期待しながら、漫画本を踏みつけた。


「あれー。本当にやられたくないなら、抵抗するはずだよねえ。ホントは踏みつけられたいから、止められないんだろ。ヒャハハハハ」


父は、私の漫画をビリビリにやぶき、こう言った。


「ほーら、まだ使える。拾えよ。本棚に詰めろ。賽の河原だ。お前が何度直そうと、ぼくはお前を一生苦しめてやる。一度お前を苦しめると決めたから、死ぬまで苦しめてやる。初志貫徹。ギャハハハハ」


そうして、父は漫画本に小便をばらまいた。気分を良くした父は、いつものように、歌い出す。


「さー始まりましたこの戦い。ぼくはぁ、お前をぉ、徹底的に苦しめぇ、犯し尽くしことをぉ、ここに宣言しまぁす。つーたかたった、ぴー、ったーら、つーたかたったー、ぴー。チュクチュン、チュクチュン、チュクチュンチュン」


そして、父は「戦いごっこ」を私に仕掛ける。大人、対、児童。父は、これを「平等」と言った。


「さあ立て。戦いだ。かかってこい。…………ウラ!パンチ一発で倒れるのか。弱いな。立て。…………ウラ!ウラ!ウラ!ウラ!デュクシ!ブクシ!ズクシ!苦しめ!苦しめ!苦しめ!お前の幸せを奪ってやる!地獄に落ちろ!…………はい弱いー。はい雑魚ー」


以上のセリフは、正確ではない。正確ではないならデマやウソと言いたくなるだろう。だが。父は、間違いなく「こういったこと」を叫びながら、毎日私を殴っていた。何月何日何時何分に何発殴られたかを言えと言われたら、そりゃあ言えない。


これは、ニュアンスなのだ。私は、命すら、かけていい。誓って、父は、毎日私を殴っていた。たまに、父は私に小便をかけたり、男性器をくわえさせたり、ゲロを吐きかけたり、大便をまき散らしては、私に片付けさせていた。本当に、誓って、父は私に毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日、こんなよーなことをしていた。毎日だ。基本的に、毎日だ。父は、これらを「趣味」と、はっきりと断言していた。弱い者に社会の道理を教えるために、いたぶり尽くしてやるのが「趣味」だと。だから、これは「コーチング」だと。これは、高校時代まで続いた。…………私は、普通の人生が、分からなくなった。


それから10年以上が経過した。私は東京を離れ、北海道は札幌へ移り住んだ。私は、未だに本やグッズを買えない。怖いのだ。……怖いんだよ!母が、私を羽交い締めにした!父が、本を破いた!母が、私を羽交い締めにした!父が、私に男性器を咥えさせた!母は、風邪を引いた私に冷水をかけ続けた!私は受験の前に大風邪をひいた!父は、私の受験票を隠した!私は遅刻した!そうして、「当たり屋」を生業とする両親二人はこう言った!


「本当にやられたくなかったら、抵抗したでしょ?抵抗しないってことは、やられたかったんでしょ?やられたってことは、そういう運命だったんだよ。あー気持ちよかった」


ちがう!抵抗した!しかし。私の両親はコンビニや居酒屋で「じゃあ髪の毛入っていたからタダにして」などと被害者ぶることでカネを稼いできた悪魔だった。だから、父はこう言った。


「じゃあ、何年何月何日の、何時何分何秒に強姦されたか言ってみな。それが言えないならお仕置きだ。ぼくは、生まれてから一度も嘘をついたことがない。ぼくは、生まれてから一度も悪いことをしたことがない。ぼくは、暴行してないもん。……暴行されたと言ってカネを稼ぎたいから、暴行されたんだろ?」


父は、暴行してないと言いながら、暴行されたほうが悪いと言う。


そうして、父はお仕置きとして私を殴った。父は、私をひとしきり楽しむと、こう言う。


「……気持ちよかったよ……ふひひ」


何度足掻いても。何度抗っても。本が、文章が、数字が。父の、性欲に塗れた手で、汚されていく。私はノイローゼになり、だんだん、頭が悪くなってきた。私はとある大学に入学したが、そこが、私の知能のピークだった。数字が。そして、文字が。ついに、「読めなく」なったのだ。今、文章を書けているだろうって?「読む」と「書く」は別だ。私は、明らかに、高校時代より、文字を「読めなく」なっていった……


私は、完全に何も読めなく、何も出来なくなる未来を察した。私は、私が「知的障害者」になる未来が見えた。私は……私は、頭の機能が完全に停止したとき、はたして、一体どうやって生きていけばいいのか。私は、最も残忍な、しかし、絶対に自分を救うことができる生存方法を、自分のボロボロの身体と心から見いだした。


自分の可能性を、選択するのだ。


これは何も、捨てろというわけではない。


例えば、暗くいうならこうだ。歴史学者になりたくても、地歴科目が苦手ならば、理系に進むしかないということ。例えば、明るくいうならこうだ。オリンピックに出たくても、身体に障害があるならば、パラリンピックを目指す方がいいということ。もしくは、スポーツウェアの企業を目指したり、大会関連の会社を目指すということ。取捨選択というわけだ。私の身体は、両親から蹂躙された記憶をいつまでも覚えていた。私は、ふと、思いついた。


完全に、「学」が頭から抜けおち、言葉や数字を読めなくなったとしても、「武」のように、身体で覚えた技術を仕事にすれば、私は生きていけるのではないか。


私は、最後の賭けに出た。私は、学を、わきに置いた。そうして、技術を……つまり、音楽とイラストを始めた。まあまあ、稼げていた。


ところがである。父が、私に嫉妬しはじめたのだ。父は、私の活動を、言葉で、平手打ちで、妨害してくる。なんと、東京から北海道に飛行機でわざわざ飛んできたのだ。それだけではない。父は、突如として「イラストレーター」として誰かから仕事を高額で請け負い、私にタダで丸投げしたのだ。全く、まったく、意味がわからなかった。父は、いつか、必ず私を、また、壊しにくる。いや。「壊しに来るかもしれない」……と思ってしまうんだよ。トラウマってやつだ。だから。だからね。


だから……私は、何かを集めることが、怖い。アニメグッズも、漫画も。参考書も、小説も。CDも、フィギュアも。買おう、所有しよう。そう思ったとき…………恐怖で、吐いてしまうのだ。そして、いつしか私は、ついにある境地へ達した。目の前の美しい自然を、ありのまま受け止めるように。ただ、視る。目の前の、美しい本を、美しい漫画を、美しい映画を、美しい音楽を、見つめるのだ。


そう。


ただ…………「視る」のだ。


全ては、記憶のなかに、あればいい。


私は、普通の人生を、生きたかった。


私にはもう、何も、言いたいことはない。


ただ、強いて、伝えたいことといえば。


いま、平和な人生を生きている人は、その平和を継続して、皆とその平和を分かち合い、次の世代へと「継承」してくれたら……私はとても嬉しいです。

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