六章4話 状況は最悪
ここが記憶の遺跡の最奥か?
レニィと僕は今までで一番広い部屋にたどり着いた。
部屋の中央に20m×20mくらいの一段高くなった舞台のようなのが有る。
ここって何かの儀式にでも使われてた部屋なのかな?
「やっと来たわね、あれ?レニィも一緒みたいね?
あんたがこんなに速く抜けてくるとは思わなかったわ」
レニィの姉と縛られたマリアさん、ともかも一緒に居るのか・・・こっちに見えるように白と赤の心剣の欠片を持っている、白いのは前に取られたやつ、赤いのはマリアさんの持っていたものか?
そういえば青龍が青龍に対抗できる神獣をともかが出した、って言ってたな。
欠片をともかが持っているってことは、青龍の力でマリアさんを助けるのは無理か・・・
「姉さん、どうしても止める気は無いんですか?」
「ここまで来たんだもの、止まる気は無いわ!」
説得も無理だろうな・・・
「さぁ、人質と心剣の欠片、交換と行きましょう!」
仕方ないか・・・悪いなアキラ、君の心剣を悪用させないって目的は分かってるけど今は従うしかない。
「分かった、どうすればいい?」
「欠片を舞台の中央に置いて元の位置に戻りなさい、あんたが戻ったらマリアを解放する。
そしてマリアがそっちに戻ったら心剣の欠片を回収するわ」
「ともかは解放してもらえないのかな?」
「うん、無理、この子まで返したらあんたたち大人しくしてないでしょう?」
まぁそうだな、人質さえ無くなれば僕も黙って従ったりしない。
「レニィはここで待ってて、行って来るよ」
指示された通りに舞台の中央に心剣の欠片を置く。
「これでいいか?」
「ええ、それじゃ元の位置まで戻りなさい」
彼女達から目を離さないようにしてレニィの居る所まで戻るとマリアさんが解放された。
拘束を解かれこちらに向かってくるマリアさん、今丁度舞台の上に上がった所。
「ごめんね、ユウヤくん・・・」
マリアさんの謝罪、最初は捕らわれたことを言っているんだと思った・・・
マリアさんは舞台の中央で心剣の欠片を拾った、どういう・・・こと?
「ユウヤさん!欠片が!」
!さっきまでともかが持っていた心剣の欠片をいつの間にかマリアさんが持っている、ってことはマリアさんの手に全ての欠片が揃ったってこと・・・
「小さき欠片は力を隠す仮初めの姿
分かたれし力の欠片は全てここに
私は心剣本来の力を求める
その剣の名は『斬空の心剣』」
青龍を召喚する時のような、いや、それ以上の強い光が部屋を満たす。
眩し過ぎて直視できない、どうなってるんだ!?
混乱する頭を落ち着かせようと思っても状況が理解できない・・・
ふと何かが肩に触れる感触・・・手?レニィか?
何故かその手の感覚で頭が落ち着いていく、同時に光も収まっていく。
光の収まった先、鍔の無い両手剣を手にマリアさんが立っていた。
「動かないでね」
剣を僕たちに向けてマリアさんが言う、頭は落ち着いたけど状況に付いて行けていないので動くに動けないんだけど・・・
「マリアさん?」
「あなた達がエルリオールに来てくれたおかげでやっとここまで来れたわ、ありがとう」
「マリアさん、どういうことです?」
「今回のことは全部私が仕掛けたことってことよ、フルールに心剣の欠片を持たせた盗賊を仕向けたのも、ランドにローラを通して指示を出してたのも、トモカさんを確保するように支持したのも私。
ただ、ユウヤくんあなたの存在だけは予定外だったわ、夢見にも分からないことは有るから仕方ないけどね・・・」
何言ってるんだ?今回のことは全部マリアさんが仕組んだ?ずっと僕たちを騙してたってことなのか?
「まぁ、おおむね予定通り。後は斬空の心剣でクリスを助けるだけ・・・あなたたちは大人しくしててね、そうすれば危害は加えないから、トモカさんにもね」
ともかの傍にはレニィの姉、僕らが変な動きをしたら直ぐに対応できる位置・・・か。
どうにかしようにも状況は最悪、今できることが無い僕らは見てることしか出来ないのか!?
状況はどんどん流れていくマリアさんが舞台の上で心剣を掲げ何か始めた。
「さぁ!斬空の心剣、時空を切裂き彼をここに!」
心剣が輝き次第にその強さを増していく、光が最高潮に達したのか?マリアさんが心剣を振るう。
斬空、剣の軌跡に沿って空間が切れたのかな?
僕たちがこの世界に来たときに飲み込まれた裂け目に似た亀裂が生まれた。
「・・・そんな、今の状況、私の夢見とほとんど変わらない・・・このままじゃ、悲劇がおきる・・・」
裂け目はどんどん広がっていき、やがて裂け目から黒い霧のようなものが出始めた。
「なんだよ、あれ?」
黒い霧は僕でも分かるくらいに禍々しい気配を放っている、これで本当にクリスって人を助けることができるのか?
「っ!
天より来る紫の輝き
天より降る剣、その閃きは刹那
紫電の刃は大地を穿つ」
レニィ!?なにする・・・
「『サンダーボルト』!」
裂け目に向けて雷が放たれる、裂け目は雷を飲み込むけど変化はなく広がり続けている。
「・・・・・・ォォォ・・・・・・・・・」
ん?裂け目から何か聞こえたこっちまで飲み込まれそうな低く暗い声?
「そんな・・・手遅れ?」
レニィが僕の隣で膝をつき呆然とする。向うもともか以外は似たような状態みたいだ。
「どうして!こんなこんなの、私は呼んでない!」
「マリア!駄目、試みは失敗よ、何が起こるかわからない!そこから離れて!」
くそ!どうなるんだ!?僕はどうすれば良い!
「なんだよ、どういうことだ何が起きてる!?」
背後から声、この声はリジル!?
振り返るとスノウと共にリジルが駆け寄ってきていた。
2人の表情は共に険しいが、この状況に2人が来てくれたことで僕も少し落ち着くことが出来た。
状況はどんどん悪くなる・・・早く何とかしないと・・・
レニィの言う悲劇がホントに起きちゃうってことだよな。
駄目だ!レニィを悲劇の預言者って呼ばせない為にもこの状況、何とかしなくちゃ!
続く!!