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七章1話 九薙 ともか

「ユウヤ!何があった!」


リジル!罠にはまってたんだろうけど随分手間取ったみたいだな。


まぁ今はそれどころじゃない、現状はおそらくどんどん悪くなってる。


マリアさんにも不測の事態なんだろうな、戸惑いの満ちた表情で裂け目から離れようとしている。


「手短に説明する!マリアさんが今回の黒幕だった、マリアさんが斬空の英雄の物語の犠牲者(クリスって人)を斬空の心剣の力を使って助けるって、でも様子が変だ!」


「ちっ!そう言うことか!斬空の心剣には時空を、時を超える力も有る、それで恋人を助けようってことか!だが・・・斬空の心剣でクリスを助けるのは無理だ!早く止めさせねぇと・・・だぁあ!見た感じ手遅れじゃねぇか!何だこの気配、覚えが有るような気もするが・・・ユウヤ気をつけろ何が起こるか分かんねぇぞ!」


後に聞いた話で、斬空の心剣を創る過程でクリスって人の魂を使っている為、創剣の時にクリスさんが死んでいないと今の斬空の心剣は生まれないことになるそうだ。


それによって矛盾が生まれる為、斬空の心剣でクリスさんを助けることは出来ないらしい。


「リジル様!この気配!」


「ちっ!スノウも心当たりが有るか、ってことは間違いねぇな・・・やばい、来るぞ!」


人一人分くらいに広がった亀裂から何かが出てくる。


―ビシャ―


先程までマリアさんの立っていた位置に湿り気を帯びた縄のような物が加減無しに叩き付けられる。


それは床にぶつかると弾け血と肉片を辺りにぶちまけた。


何だ?!内臓?似ているけど・・・違う?


この世界に来て見慣れてしまったモノを思い出し気持ち悪くなるけど、ほんの一瞬だ、もう見慣れてしまった。


「ユウヤ!斬空の心剣はどこだ!この場であれをどうにかできるのは心剣ぐらいしかねぇ」


「っと、あれはマリアさんが持ってる!」



そう聞くとリジルはマリアさんに向かい駆け出した。


その間も亀裂から何か飛び出して来てるんだけど、最初は床に叩き付けられて弾けていたのが段々と攻撃的になってきている。


遂に床に突き刺さりだした。


リジルがマリアさんの所へ辿り着く、マリアさんたちとは10mくらい離れた位置にともかとレニィの姉さんがいるんだけど・・・亀裂からともかたちに向けて飛び出してきた!


神風(しんぷう)!」


見た瞬間加速した。レニィの姉さんはそれに反応して回避行動にでているけどともかが動かない!


僕はそれを追い抜きともかの元まで辿り着く、けど刀を抜いてる時間は無い、直ぐ傍まで来ているそれをともかを抱き転がって避ける!


床や壁が切り裂かれていた。あれを喰らったら唯じゃすまないな・・・


「神風!」


ともかを抱えての神風、さすがに普段通りの速さは出ないが・・・攻撃を避け元の位置に戻ってきた。


先程からの攻撃は亀裂の有る舞台中央からこの部屋の奥にかけて奮われているのでこっちに居る方がまだましだろう・・・


「・・・?」


ともかは状況が分かってないのか・・・操られてるんだったな、自ら回避行動に出ようとせず不思議そうにこっちを見ているだけ・・・なんとか解呪したいけど今はそれどころじゃない。


レニィにともかを託し、僕は2人を守る位置で刀を抜いた。



____________________________________



「マリア!心剣をかせ!」


次第に勢いを増す触手を叩き斬りながら叫ぶ、早くしないとあれが出て来る。


「リジル・・・違うの、私がしたかったのはこんなことじゃ・・・」


「分かってる!話は後だ、今は心剣をかせ!このままじゃ不味いのは分かるだろ!」


そうだ、このままじゃ不味いんだ、亀裂から感じる気配もさっきから続く攻撃にも覚えが有る、クリスと斬空の英雄(あいつ)が封印した厄災、何人もの精霊を飲み込んだ心剣と人の合成魔人、あんなもん復活させるわけにはいかねぇ!


マリアから斬空の心剣を受け取り亀裂を塞ぐ為の力を使う・・・んぁ!?


「鍔が無い・・・んなバカな!」


亀裂はどんどんでかくなるが心剣の力が旨く働かない、以前見たときと形が違うからか!?


華美な装飾の無い両手剣(ツーハンデッドソード)だが、以前見たときと違い鍔が無い・・・


どうなってる?



この時、疑問を抱き戸惑ってしまったことを俺は直ぐに後悔することになった。


拡大を止めた亀裂から不気味な塊が這い出して来た。


塊は時折周囲に攻撃を仕掛けながら形を変えていく。


塊は人の形をとり静止する。


「・・・長かった・・・」


亀裂は消え1人の男が残った。


「くそ!やっぱり奴かよ、どうする!?心剣は旨く機能してない、戦えるのは俺とユウヤにスノウ、レニィもか?」


前に戦った時と人数は同じだが決め手であった心剣がおかしい、駄目だ勝てねぇ。


「何も無い空間で過ごす日々が終わった。


・・・自我を取り戻してからどれだけの時が流れただろう?


・・・やっとだやっと出られた」


合成魔人、前に戦った時は力の大きさに耐え切れずに自我を無くした暴れるだけの魔物だった。


今の奴は自我を持っているようだが、元々狂った計画を実行するような奴だ何も期待できない。


「何なんだ!お前は!」


ユウヤそれは不味い今の奴は久々の自由に酔ってる、今はほっておく方が時間が稼げるはずだ。


「この気配・・・私を封印したものに似ている?」


声に反応して合成魔人はユウヤの方を向く。


「フッ、フハハハハハァァァ」


合成魔人、奴は腕から先に刃の付いた触手を延ばしユウヤを攻撃する。


「クッ!何だ!?」


もう余裕は無い、奴が本気で動く前に何とかしないと、けど俺にできるのは時間稼ぎぐらい・・・


考えている間も、ユウヤは奴の攻撃を凌ぎ続けている。


迷ってる暇はねぇ、やらなきゃ事態はどんどん悪くなる・・・


「スノウ・・・やるぞ・・・」



____________________________________


何なんだこいつ!声をかけたらいきなり笑い出して攻撃してきた、触手による攻撃は一撃一撃が重い、後にはレニィとともかが居るので避けるわけには行かない。


次々繰り出される攻撃を、流し、打ち払い、対処するが数が次第に増えていく。


手数が足りない!


双薙(そうなぎ)伍薙(いつなぎ)風薙(かぜなぎ)、持てる力を惜しみなく奮うがどんどん触手の数が増えていき捌ききれない物が僕の身体を傷つけていく、いまだ致命傷は無いが時間の問題だろう事が予想できる。


やばい、その時が来た。


更に数を増す触手、数的に無理、いくらかは捌けても何本かは僕の急所を貫くだろう・・・


触手が僕の身体に触れる・・・



「あっ!」



身体に触れる瞬間、僕は別の力で突き飛ばされた。








僕の居た場所から触手が肉を貫き断ち切る音が妙に耳に響く









振り向くと僕の代わりにともかが触手に貫かれていた。



「ともかぁぁぁ!!!」


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