ピクニックと巨大な豆の木
1. 【異変】空を貫く緑の塔
「……暗いな」
朝、目を覚ますと部屋の中が薄暗かった。 窓の外を見ると、そこには壁――いや、巨大な「茎」がそびえ立っていた。
「な、なによこれぇぇぇ!?」
外からシルフィの叫び声が聞こえる。 慌てて飛び出すと、畑の隅、ピコが管理していた区画から、直径数メートルはある極太のツルが、雲を突き抜ける高さまで伸びていた。
「ご、ごめんなさい! 森で拾った珍しい種を植えたら、一晩でこんなことに……!」 ピコが空中でオロオロと飛び回っている。
俺は【植物鑑定】を発動した。
『スカイ・ビーン:雲の上まで成長する豆の木。頂上には絶景と、美味な豆の鞘がある』
「……よし、登ろう」 「えっ、正気!?」 「上には美味しい豆があるらしい。それに、今日は天気もいい。ピクニック日和だ」
2. 最強のサンドイッチ
出発の前に、お弁当作りだ。 ピクニックといえば、やはりサンドイッチだろう。
昨晩焼いておいた「ゴールデン・ウィート」の食パンを厚めにスライスする。耳まで柔らかく、黄金色に輝くパンだ。
具材は二種類。 一つは、『コカトリスの卵と特製マヨネーズの黄金サラダ』。 濃厚な黄身を粗く潰し、昨日のマヨネーズと和える。隠し味にブラックペッパーを少々。
もう一つは、『厚切りベーコンとシャキシャキレタス』。 燻製小屋(第5話の廃材で作成)で作った自家製ベーコンを軽く炙り、朝採れのレタス、トマトと共に挟む。
「ついでに、これも揚げておくか」
俺は「オリジナル素材図鑑」にあったジャガイモを取り出した。
『バッファロー・ポテト:牛肉のような旨味を持つジャガイモ』
これを薄くスライスして、高温の油へ。 ジュワワワワ…… 香ばしい匂いが立ち上り、黄金色のチップスが出来上がった。
3. エレベーターで雲の上へ
「でもカイト、これを登るの? 私は飛べるけど……」とピコ。 「エルフは木登りが得意だけど、流石にこれは……」とシルフィ。
「大丈夫。【万能農具】……『ゴンドラ』!」
俺は農具を変化させ、豆の木のツルに巻き付くような「自動昇降機」を作り出した。 ふかふかのスライム・クッション付きだ。
「さあ、快適な空の旅へ」
ゴンドラは滑るように上昇していく。 森がジオラマのように小さくなり、やがて白い霧(雲)を抜けた。
4. 天空のランチタイム
「うわぁ……!!」
そこは、一面の雲海だった。 突き抜けるような青空。太陽が近い。 豆の木の巨大な葉がパラソルのように広がり、絶好の日陰を作っている。
「ここでお昼にしよう」
俺はバスケットを開けた。 美しい断面のサンドイッチと、山盛りのポテトチップス。
「いただきまーす!!」
二人は競うようにサンドイッチに手を伸ばした。
シルフィは『たまごサンド』をガブリ。
「んんっ〜〜〜!」 足をバタバタさせて悶絶する。 「パンが……雲みたいにフワフワ! その中から、濃厚な卵とマヨネーズがトロトロ溢れてくるの……! 卵のコクが凄すぎて、まるでクリームを食べてるみたい!」
ピコは『BLTサンド』に顔を埋めている。 「トマトが甘いー! ベーコンの塩気とマヨネーズが最高に合うよぉ……!」
そして、箸休めの『バッファロー・ポテトチップス』。 パリッ、サクッ 「……! 何これ、お肉!? ジャガイモなのに、噛めば噛むほどステーキみたいな肉汁の味がするわ!」
5. お昼寝と収穫
お腹がいっぱいになった後は、巨大な葉の上でゴロゴロと寝転がった。 風は涼しく、太陽はポカポカと暖かい。
「あー……幸せ……」 「カイト、ずっとここに住みたい……」
「降りる時に、晩ごはん用の『空豆』を収穫して帰ろうな」
俺の言葉に、二人は幸せそうな寝息で答えた。 スローライフにおける「贅沢」とは、金を使うことじゃない。 こうして誰にも邪魔されず、美味いものを食べて昼寝することだ。
俺は雲海を眺めながら、ゆっくりと目を閉じた。




