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冬支度とコタツの魔力

1. 白い息と凍える妖精


「寒っ……!!」


ある朝、目覚めると部屋の空気が変わっていた。 窓ガラスに氷の結晶が張り付き、吐く息が真っ白になる。 森の冬は、予告なくやってくる。


「カイトぉ……お布団から出られないよぉ……」 シルフィが蓑虫みのむしのように毛布にくるまって震えている。 「ピコも……羽が凍って飛べない……」 ピコも暖炉の前で丸まっている。


暖炉だけでは、この底冷えは防げない。 俺は決意した。あの「最強の暖房器具」を作る時が来たようだ。


2. 悪魔の発明


俺は倉庫から資材を運び込んだ。


枠組み: 「アイアンウッド」の端材。


熱源: じんわりと熱を放つ「ヒート・ストーン(小)」。


掛け布団: 保温性抜群の「クラウド・シープの羊毛」を詰め込んだ特製布団。


天板: 木目が美しい一枚板。


【万能農具】を『ノコギリ』と『金槌』に変え、手際よくテーブルの骨組みを組み立てる。 中央にヒート・ストーンを安全な籠に入れてセット。 その上からフカフカの布団を被せ、最後に天板を乗せる。


「完成だ。……名付けて『コタツ』」


3. コタツムリの誕生


「何これ? 変なテーブルね」 シルフィが訝しげに近づく。


「騙されたと思って、足を入れてみな」


彼女は恐る恐る、布団をめくって素足を差し込んだ。


「……ん?」


一瞬の静寂。 次の瞬間、彼女の体が液体のようにズルズルと吸い込まれていった。


「はにゃぁぁぁ……! 何これぇぇ……! 足元からポカポカして、腰まで溶けちゃうぅぅ……!」


「ピコも入る!」 妖精も飛び込む。 「あったかーい! ここ、天国!?」


そこへ、視察(という名の暖まり)に来たエリシアが現れた。 「……貴女たち、王族としての矜持はないのですか? そんなだらしない格好で」


「お姉ちゃんも入ってみてよ。世界が変わるから」 「……仕方ありませんね。少しだけですよ?」


数分後。 そこには、首まで布団に埋まり、とろんとした目で虚空を見つめる第一王女の姿があった。 「……出られませんわ。これは、人を堕落させる呪いの魔道具です……」


4. 湯豆腐の誘惑


「さて、動きたくないだろうから、飯もここで食おう」


俺はコタツの上に、カセットコンロ(魔石式コンロ)と土鍋を置いた。 今日のメニューは、大豆から作った絹ごし豆腐たっぷりの『湯豆腐』だ。


鍋の中で、昆布(川で採れた『リバー・ウィード』)の出汁が沸き立つ。 フルフルと揺れる白い豆腐。具材はシンプルに、水菜と椎茸のみ。


「タレはこれだ」 柑橘類シトラスの果汁と醤油を合わせた『自家製ポン酢』。


「熱いから気をつけて」


シルフィが小皿に取り、フゥフゥと冷ましてから口へ運ぶ。


「はふっ……熱っ……! んん〜〜っ!」 「どうだ?」 「お豆腐がトロトロ! 味がしないかと思ったけど、この酸っぱいタレ(ポン酢)がすごく合う! さっぱりしてるのに、大豆の甘みがすごいの!」


エリシアも箸を伸ばす。 「……これは……。温かいお風呂に入っているような、優しい味ですわ。豆腐の滑らかな喉越し、出汁の香り……。コタツの温かさと相まって、意識が遠のきそうです」


外は寒風が吹き荒れているが、コタツの中は熱気と湯気で満たされている。 冷えたビール(麦酒)もいいが、今日は熱いお茶が最高に合う。


5. 冬の宝石


鍋が空になると、俺はポケットからオレンジ色の果実を取り出した。


『ゴールデン・マンダリン(黄金蜜柑):皮が薄く、甘みが凝縮された冬の果物』


「コタツといったら、これだろ」


「わぁ! デザートね!」 シルフィが手際よく皮を剥く。部屋に爽やかな柑橘の香りが広がる。


甘酸っぱい果汁が、熱った体に染み渡る。 もう誰も、この結界コタツから出るつもりはないようだ。


6. 完全敗北


「カイトぉ……おトイレ行きたいけど、出たくないよぉ……」 「我慢しろ」 「カイトさん……あとでお茶のおかわりを……」 「自分で淹れてくれ」


結局、その日は全員がコタツ周辺で一日を終えた。 高貴なエルフも、元気な妖精も、日本の冬の魔力には勝てなかったのだ。


俺はウトウトする彼女たちを眺めながら、みかんの皮でアートを作っていた。 この冬は、きっと騒がしくも暖かいものになるだろう。

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