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醤油と味噌、そして豚汁

1. リュックの底の宝物


「さて、お米は手に入った。次はこれに合う『おかず』だが……」


俺はポン太のリュックを(許可を得て)漁らせてもらった。 行商人である彼の荷物には、世界中の植物の種や苗が眠っている可能性がある。


「……あった」


ガラクタの底から、変哲もない豆が出てきた。


『大いなるダイズ:加工次第で変幻自在の味を生み出す、東方の奇跡の豆』


「ポン太、これも交換だ! トマト1カゴ分でどうだ!」 「ええっ? そんな豆、煮ても硬いだけですよ? ボクとしてはボロ儲けですが……」


俺はニヤリと笑った。 「見てろよ。これを『魔法の調味料』に変えてみせる」


2. 時を超える発酵


俺は【万能農具】を『圧力鍋』と『樽』に変化させた。 大豆を柔らかく煮て、麦麹(ゴールデン・ウィートで作成)と塩を混ぜる。 本来ならここから半年は熟成が必要だが、俺にはチートがある。


「【生活魔法:熟成タイム・アクセラレーション】!」


樽の中で、時間が圧縮される。 微生物たちが猛スピードで働き、豆のタンパク質を旨味成分(アミノ酸)へと分解していく。


ポコッ、ポコッ…… 樽から芳醇な香りが漂い始めた。 蓋を開けると、そこには黒蜜のように艶やかな**「味噌」と、底に溜まった琥珀色の「醤油」**が完成していた。


3. 具だくさんの豚汁


「この匂い……何? 嗅いだことないけど、すごく食欲をそそるわ」 シルフィが鼻をクンクンさせて寄ってきた。


「今日はこれを使って、最高の汁物を作るぞ」


鍋に「アイアンウッドの削り節(※注:風味付け用)」で出汁を取り、一口大に切ったダイコン、ニンジン、ゴボウ(森で採取)、そして「ワイルド・ボア(猪)」の薄切り肉を投入する。 野菜が柔らかくなったら、最後に先ほどの「特製味噌」を溶き入れる。


フワァァ…… 味噌の香りが立ち上ると同時に、鍋の中が黄金色に染まる。 最後に香り付けの「醤油」を数滴。 刻んだネギを散らせば、**『具だくさん豚汁』**の完成だ。


4. 五臓六腑に染み渡る


「さあ、炊きたての『塩おにぎり』と一緒に召し上がれ」


俺たちは食卓を囲んだ。 湯気を立てる豚汁と、真っ白なおにぎり。


まずは豚汁を一口。


「はふっ……ずずっ……」


「……ぁぁぁ〜〜……」


全員から、ため息のような声が漏れた。


根菜の甘みが溶け出した優しい出汁。 そこに味噌の力強いコクと塩気が加わり、猪肉の脂の甘みを極限まで引き立てている。 複雑で、奥深くて、どこまでも懐かしい味。


「美味しい……。体が芯から温まるですぅ……」 ポン太が涙を流しながら器を抱えている。


「このスープ、すごいわ。野菜だけだとアッサリしすぎるけど、この茶色いペースト(味噌)が入ると、味が『深い』の。おにぎりを食べた後にこれを飲むと、口の中がリセットされて、またお米が食べたくなる……無限ループよ!」 シルフィはおにぎりと豚汁を交互に口に運び、止まらなくなっている。


5. スローライフの完成


「おかわり!」 「ボクもです!」 「ピコもー!」


空になった椀が次々と差し出される。 俺は鍋の底をさらいながら、確信した。


米、味噌、醤油。 これらが揃った今、この異世界での食生活は、前世の日本を超えたと言ってもいい。


「ポン太。この味噌と醤油も商品になるか?」 「なるなんてもんじゃないです! これは世界を変える調味料です! カイト様、一生ついていくです!」


森のログハウスに、賑やかな咀嚼音と笑い声が響く。 日本のソウルフードは、異種族たちの心も胃袋もしっかりと温めたようだ。

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