サラ、日記を続ける
きんりょく石の月のこく
二人目の赤ちゃんが産まれたのだわ!
今回もカイさんがお産のお手伝いをしに行って、わたしはお留守番
わたしも、もっとお姉さんらしくお手伝いしたいのだわ!
そうしたらカイさんに「ロランを見ててくれ。」ってお願いされたのだわ
勇者さまの子どものロラン、まだこんなにちっちゃいのに、もうひとりで歩けちゃうから、目がはなせないんだって!
……わたしはお姉さんだから、今日だけは身体に登るのをゆるしてあげるのだわ
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こんごう石の月のこく
ロランが、五才のおたん生日をむかえたのだわ!
わたしは、ロランに魔法を教えてあげる券をあげたのだわ
弟のアーネもほしがったけど、まだ二才だからだめって言ったら、泣いて怒ったの
そしたらロランが「ぼくはお兄ちゃんだから、半分こできるよ」って券を半分、アーネに渡してたの!
そのあと、ロランが「おおきくなったら結婚してね」って言ってきて、とってもかわいかったのだわ!
そのあとカイさんが「サラにはまだ早い」ってロランを抱っこして、あやしてたの
ロランってば、まだ赤ちゃんなのに結婚って言葉を知ってるなんてすごいのだわ!
……人間のおたん生日って一瞬でおわってしまうから、少しさみしいのだわ
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そうぎょくの月のこく
勇者さまのところのロランがもう十一歳と、アーネが八歳になったのだわ
まだまだ小さいのに、剣術のおけいこをしてるんだって!
わたしもカイさんみたいに、魔法も剣も使えたらかっこいいと思うから習うことにしたのだわ
カイさんにお願いしたら「吾より勇者の方が適任だから、あとで声をかけるといい」って、言われちゃった
たしかに、カイさんって魔法のイメージが強いかも
そのあと、勇者さまにお願いしに行ったら「オレでよろしければ」って、言ってもらえたの!
これから剣術も覚えて、絵本の中のお姫様なのに、騎士みたいな人になるのだわ!
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こはくの月のこく
今回も街のみんなが、たくさんわたしのお誕生日をお祝いしてくれている
カイさんは「最近、頑張ってるから」って木でできた剣をくれたの!
前まで「サラが怪我をしたらどうする」ってお稽古の時以外は、触らせてくれなかったのに!
それから勇者さまの家族みんなで、わたしの顔ぐらいの大きさのクッキーをたくさんもらったのだわ
チョコチップも美味しいし、ナッツがたくさん入ったのも美味しいかったけれど
やっぱりバターたっぷりのクッキーが一番好きなのだわ!
あと、魔皇帝になったベルンさんもお祝いしに来てくれたの
「お前に似合う物はむずかしい。お前はなんでも似合ってしまうから」
そう言ってくれたのは、綺麗な“こはく色”のリボンだったの!
わたしの誕生日も、こはくの月のこくだから、こはく色なのかしら?
でも、ベルンさんの瞳の色と、角の色もキレイなこはく色なのよね
カイさん、わたしには「似合うぞ」って言ってくれたけど
ベルンさんには「サラには、まだ早い」って言ってたの
リボンを着けるのに、早いも遅いもあるのかしら?
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し水晶の月のこく
十三歳になったアーネから聞いたのだけれど
王都では、思いを寄せている人にチョコレートをあげるのが流行っているらしいの!
わたしも、みんなにあげたいのだわ
カイさんと勇者さま、ロランとアーネに……って指を折って数えていたら
カイさんに「そういうのは本当に大切な人、一人に渡すものだ」って言われたの
みんな本当に大切な人たちなのに!
わたしが「みんなの分を作りたい」って言ったら、カイさんはちょっと考えたあとに「仕方ない」っていっしょに作ってくれたの!
やっぱり、カイさんは優しいのだわ
チョコができたと同時に、ベルンさんが来て「甘い香りがしたから」ってお屋敷に遊びに来てくれたの!
ちょうど良かったから、ベルンさんとお茶をしてたら渡したかったみんなが来てくれて、みんなとお茶会をしたの
とっても楽しかった!
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金ごう石の月のこく
ロランが十八歳になって、王都の騎士さま候補生になるんだって!
しばらく会えなくなるなんて、さみしいのだわ
ロランに「本当に行っちゃうの?」って聞いたら「父さんみたいに、色んな人を助ける人になりたいから」って言われちゃった
勇者さまにそっくりな笑顔だったの
本当は泣きたかったけど、わたしはお姉さんだからちゃんと笑顔で「お手紙書いてね」って言えたのだわ
まだ子どもなのに、ちゃんと夢があってかっこいいなって思ったの
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紅玉の月のこく
ロランが王都の騎士さまになって八年
アーネも街のけいび隊に入隊して五年たったのだわ
二人から『赤ちゃんができました』ってお手紙をもらったの!
カイさんに「ロランとアーネもまだ子どもなのに、赤ちゃんができるの?」って聞いたら
「ロランもアーネも、人間種で見たらもう大人だ」って教えてもらったの
人間種って大人になるのが早い!
猫ちゃんとかドラゴンみたいに一年で七歳、年をとるのかしら?
とにかく、赤ちゃんが見られる!
またお姉さんになれるのだわ!
でも、わたしはロランとアーネのお姉さんだから
ロランたちの子どもちゃんから見たら、おばさまになるのかしら?
あとでカイさんに聞いてみよう
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そう玉の月のこく
勇者さまの奥さんが、流行病にかかっちゃった
みんな口を揃えて『おばあちゃんだから』って言うの
なんだか、変な感じ
たしかにちょっと前に比べたら、髪も白くなってるし、少し小さくなった気がする
でも、奥さんはずっとかわいいままなのに!
もしかしたら、長くはないかもって言って、子どもたちを御屋敷に呼んだんだって
お手紙のやり取りはしていたけれど、久々にロランとアーネを見たわ
勇者さまくらいの大きさになってて、ちょっとびっくりしちゃった
ずっとずっと子どもだと思ってたから……
病気に効くお薬は、まだ見つかってないらしいの
こんな時、薬草のおばさまがいてくれたらな……
そうだ、ベルンさんに「何か良いお薬はないですか」ってお手紙を出してみよう
薬草のおばさまのところでお仕事してたんだから、何か知ってるかもしれないのだわ
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るりの月のこく
勇者さまの奥さんがお空に旅立ってから、十年が経った
最近、勇者さまも寝たきりになっちゃったのだわ
ロランから「父さんも、もう長くはない」と言われて、つい「そんな悲しいこと言わないでっ!」って大きな声を出しちゃった
ロランもアーネも、二人の子どもたちも、そんなこと本当は思いたくないはずなのに、なんでそんな事が言えるの!?
薬草のおばさまや、勇者さまの奥さんがいなくなった時を思い出して、お部屋でたくさん泣いちゃった
カイさんが「勇者は人間種の中では長く生きた方だ」と言っていたけれど
だったら、もっともっと生きていてほしいのだわ!
わたしはまだ、剣術を習いたいし、お茶会もたくさんしたいのに!
言いたいことを全部言ったあと、カイさんの顔を見たの
そしたら、カイさんも今まで見たこともないくらいに悲しそうな顔をしてたの
この時、初めて「カイさんも本当はとっても悲しくてさみしくて、泣きたいんだな」って思ったの
泣かなかったのは、カイさんが大人だからなのだわ
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ざくろ石の月のこく
勇者さまが、天国に行っちゃった
あっちで、奥さんと出会えてるといいのだけれど
お葬式には、ロランやアーネとその家族たち
それから騎士団で一緒だったっていう人たちと、仲の良かった魔王のラオムさん
そして、ベルンさんもいた
あんなに悲しそうな顔のベルンさんを初めて見た
思わず近くまで行ったけれど、なんて声をかけたらわからなくて、ただそばに行っただけになっちゃったのだわ
勇者さまの顔をちゃんと見たの
真っ赤だった髪は真っ白になってて、顔もシワが増えてた
勇者さまと出会って、七十年ちょっと
カイさんがよく言ってる
「人間は生き急いでいる。もう少し、ゆっくり生きればいいものを……」
その言葉の意味が、なんとなくわかった気がするのだわ
***
勇者さまが天国に行って、五十年くらい経ったのだわ
ロランもアーネも、もうおじいちゃんになっちゃった
きっと、二人もいつか天国に行っちゃうのかしら
……お姉さんをおいて行くだなんて、とんだ姉不幸者なのだわ!
この前、ベルンさんに「結婚を前提に付き合わないか」って言われちゃった
すぐ、カイさんが来て「サラにはまだ早い!」ってベルンさんを追い返してたのだわ
ベルンさんが帰ったあと、カイさんが頭を優しく撫でてくれて
「あやつの手前ではああ言ったが……サラのしたいようにすればいい」
って言ってくれたの
わたしのしたいこと……
わたしは、どうしたいんだろう?
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金緑石の月のこく
外公務のついでに遊びに来た、第六区域の魔王のユニちゃんとお茶をしたの!
ユニちゃんにベルンさんのことを聞いてみたの
「ベルン様のことでぇすか?」
「ベルン様が魔皇帝になってからめちゃくちゃ働きやすいでぇすよー」
「めっちゃオススメ!優良物件!」
「女の子で処女なら、ユニがお嫁にもらいた……」
そう言ったあと、ユニちゃんはカイさんにゴチンって頭を叩かれてたのだわ
カイさんに叩かれたところを撫でながら
「いやでも本当に、口は基本悪いですが、なんだかんだで部下は大切にしてくれまぁすし」
「みんなの要望をちゃんと聞いて、すぐ動いてくれてありがたいでぇすよ!」
出会った最初は、ちょっといじわるな人だなって思っていたけれど
ユニちゃんの話を聞いていると、素敵な魔皇帝さまらしい
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「ベルンさんは、どうしてわたしを選んでくれたの?」
とある控え室で、真っ白なドレスを着たサラがベルンに尋ねた。
同じく、白いタキシードを着たベルンは少し照れくさそうに頬をかき、口を開く。
「最初に会った時のことを覚えてるか?」
もちろん覚えている。
サラにとって、かけがえのない思い出のひとつだからだ。
「ベルンさんがわたしのことを『デカチビ』って悪口言って、薬草のおばさまに諌められて、勇者さまと三回勝負した時のこと?」
サラは、くすくすといたずらっぽく笑った。
ベルンはすこし顔を赤くしながらも言葉を続ける。
「あの時、初めて年下の女の子を泣かせちまったんだ。」
サラは『昔はよく泣いていたな』と目を細め、懐かしんだ。
「そのあと薬草の魔女に『泣かせたんなら、次は笑わせてこい』って言われてな。」
ベルンはまっすぐサラを見る。
「あれからずっと、どうやったらお前を笑顔にできるか考えてたんだ。」
ベルンはふわりと浮かび、サラとの距離を縮めた。
「それがいつの間にか、“お前を幸せにしたい”に変わってたんだ。」
そっと二人の唇が触れようとした瞬間。
「誓いの口付けは、まだだろうが。」
カイサルが、ベルンの頭に手刀を下ろした。
「痛っ!!っにすんだ!」
「あまりにも遅いので様子を見に来た。人前式のくせに二人で勝手に誓おうとするな。」
ベルンとカイサルのやり取りを見て、サラは嬉しそうに笑う。
『今日の日記は、いつも以上に長くなりそうなのだわ!』
マジの最終回です!
お付き合いいただきまして、本当にありがとうございました!
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