表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/250

第85話 魔物退治


「シン、まさかだと思うけど、あの山越えるのって歩いて行くつもりじゃないよね?」


メアが北にあるアイスベルク山脈を指差して言った。


「ああ、国の乗り物を使わせてもらう」


「国の乗り物?」


セシルが首を傾げながらそう聞いてくる。


「エボルゼブラ、ソフィア王国が作り出した生物だ。バタリアにも居たんだが、メアたちは見ていないか?」


「ええ、見ていないわ。だけどエボルゼブラは私も知ってる。天の星砂漠を横断している時に乗ったことがあるから」


「タイプⅢか」


「そうよ。早くて強い。天の星砂漠の魔物も逃げて行くんだもの。私たち勇者にとって心強い味方よ」


バタリアではタイプⅠのエボルゼブラを見たが、これから向かうアイスベルク山脈の登山の手助けをしてくれるのはタイプⅡ。

大きさもバタリアで見たエボルゼブラとは比べ物にならないほどの巨体。


この世界には魔物が溢れてしまっているが、物資の輸送や補給手段の確保は必要不可欠。

シ-ラ王国を始め、世界の国々は物資の製造や輸送を途絶えさせないべく協力し合う。

表立ては対立し合う国同士もあるが、ただ一つ、人類存続の為という共通の課題を持っているが為、自国のわがままが通るはずもない。

そんなことをすれば、たちまち世界の国々から反感を買うことになるだろう。

ましてやこの魔物時代、物資の循環を途絶えさせるということは、人類の終焉に片足を突っ込むことを意味している。

その為、最も力のある国であるシ-ラ王国が世界の国々を取りまとめ、共通意識を深く説いているというわけだ。


兵団は日夜魔物と戦っている。

そして兵団の中には物資を安全に、かつ確実に隣国や街に届ける為の部隊も存在している。

だが、いくら優秀な国の兵団でも魔物に敗れる時は敗れてしまうことがしばしば起きているらしい。


その為、そうした事態を組んでソフィア王国で生み出された生物がエボルゼブラだ。

エボルゼブラはタイプⅠ、タイプⅡ、タイプⅢが存在しており、そのどれもが強靭な肉体を持ち合わせている。

また、どのタイプにおいても気温の変化には対応しているが、タイプⅠのみ極端な差には対応はしていない。

タイプはそれぞれが持つ特徴を表しており、タイプⅠは陸専用、主に物資の運搬などに使われる小型のエボルゼブラ。と言っても馬の2倍以上もある。

そしてタイプⅡ。このタイプが今回アイスベルク山脈でお世話になる乗り物だ。

体長およそ20メ-トルから26メ-トル、推定体重およそ40トンから50トン。

魔物のレベルに換算すると120はあると言われている。

レベル120ともなると、魔王の城周辺にでも行かなければ立ち向かって行く魔物はそうはいない。


魔物も馬鹿ではない。いくら知能指数が低い魔物でも、野生の勘、魔物の勘とでも言うのだろう、弱肉強食の世界が魔物にも存在している。


そしてタイプⅢのエボルゼブラは主に高気温の地域で活躍する。メアが言ったのはこのタイプⅢのエボルゼブラ。

タイプⅠとタイプⅡに比べて動きも早い。


「そうだな。ソフィア王国のそういう技術は心底凄いと思うよ」


ソフィア王国の技術を持ってすれば、人々の需要と供給を満たすことが出来る生物さえも誕生させる。

勇者の持ち物に必須である黒の紙を始め、情報を伝達させる黒柱の開発を中心となって動いたのもソフィア王国。

シーラ王国が第一に信頼を寄せる国であり、シーラ王国の次に無くてはならない国だと世間からは言われている。


「セシルも早く会ってみたい!」


「じきに会える」


そうしてアイスベルク山脈を目指して進んでいると体感する温度も低くなって来る。

アイスベルク山脈ーー標高4312メートル、大地を大きく分かつ連なる山脈は夏の暑い季節でも雪が残る。

今は冬の手前、肌寒い季節だが、アイスベルク山脈に到着していなくても流れてくる冷気は付近の気温を低下させる。


そんな時、また別の村が見えてくる。

太陽はとうに登っているのだが、薄っすらと朝霧っぽいものが辺りを漂う。

そして道の視界先の脇道には3人の子供が屈んで何かをしているようだ。


「やっ!」


と、必死な様子で脇道にあった草を摘んでいた少年2人と少女1人にセシルが声をかける。


「で、で、出やがったな魔物! これでもくらえ!」


少年の1人が地面に落ちていた石ころを拾ってセシルに投げる。


「よっと! こらっ! 危ないよ!」


だが、軽く躱したセシルは石ころを投げて来た少年の頭をこつく。


「マルスやめて! この子は獣人……魔物じゃない」


マルスーーセシルが頭をこついた少年の名。マルスは頭をこついたセシルの方を睨むように見る。


「魔物じゃない!? これが!? 毛むくじゃらで、爪なんてすごいぜ!?」


セシルが「むむ」と言ってまた少年の頭をこつきそうになったところを俺は腕を掴んで止める。

少年のその様子じゃあ、獣人を見たことはおろか知ってもいなかったのだろう。


「これなんて失礼だろ。この子はセシル。俺の仲間なんだ」


「獣人が仲間? ……お兄さんたち、まさか僕たちの村襲う気じゃないよね?」


そう言うのはもう1人いた少年。凛々しい顔だ。


「俺たちがそんな風に見えるか?」


俺がそう言うと少年2人が大きく頷いた。


過去、ヘリオスの村を襲った魔物を引き連れていた3人の勇者。

これも、その3人の勇者たちが残していった悪い影響なのだろうか。

本当に迷惑だ。

魔物が村を襲う。別に何ら不思議なことでもない。魔防壁の張られていない魔物生息域に住む人々は数多くいる。


「はぁ……。いいか、よく聞け。俺たちはお前らの村を襲うつもりなんて全く無いし、ただこの道の先を行きたいだけだ」


「この道の先? そんなの、行ってもあの山があるだけだぜ? ……登る気なのか?」


「ああ。ーーじゃあ、俺たちは先を急ぐんでな。草摘み、邪魔して悪かったよ」


少年2人と少女を後にして歩き出した。


「待って!」


とすれば、少女が俺の元に駆け寄って来て服の袖を掴む。


「何だ?」


「あの……」


少女が何かを言おうとした、その時だった。


少年少女らが草を摘んでいた脇道側。

唸り声を上げながら近づいて来る一体の魔物。

頭は獅子、胴体はヤギ、尾は蛇の形を成している。


俺の袖を掴む少女の手が大きく震え出す。


「メア、この子を頼む。お前らも死にたくなかったらこっちに来い」


「ま、魔物だああああ!!!」


「メルク! 声出すなって!」


魔物は声を大きく上げた少年の方に向かって走り出した。


「ちっ!」


少年少女らが魔物を恐れているのは分かった。

だったら、魔物が出る場所に居るなって話だが。


「グオオオオウ!!」


獅子の口が大きく開き、鋭い牙がびっしり生えている。

俺やメア、セシルは噛まれても致命傷になることはないだろうが、見たところ村人の少年少女らは即死。



キマイラ

LV.67

ATK.80

DEF.67



レベルは67。俺1人で十分だ。

向けられた牙をさっと躱し、十字に斬りつける。が、やはりダメージはそれほど入っていないようだ。

キマイラの持つ逆立つ剛毛は密集すると鉄のように硬い。本体の防御力はそれほどないとしても、その剛毛が攻撃の邪魔をする。


キマイラは怒りの雄叫びを上げ、「シャー!」と声を上げる蛇の尾で攻撃をしてくる。

真っ直ぐに伸びた蛇の尾。

そこをアスティオンで斬り落とす。ここは逆立つ剛毛ほど硬くない。


キマイラはややバランスを崩したようだったが、振り向き火炎弾を吐き出した。

火炎弾が通り過ぎる草むら周辺が燃える。


「火事になるだろ! ーー!」


5秒。

撃技+3を解放してからアスティオンにエネルギーを流す。

そして放った破鎖の斬撃は、キマイラの獅子の頭に直撃し貫いた。

その一撃でキマイラは絶命の声を上げることなく倒れた。

いくら鉄の剣も弾く剛毛を持っていたとしても、0.1秒ごとに加わる斬撃の力には耐えられなかったみたいだ。

魔物特攻特性を失ったアスティオンでこの威力。アスティオンの神剣化が楽しみだ。


「シンー!」


セシルが駆け寄って来る。


「さすがね。じゃ、後は私が」


メアが燃える辺り一体を凍らしていく。

キマイラの火炎弾によって燃えていた草はみるみる凍りづけになった。


「あの……さっき言いかけたことだけど、私たちの、いえ! 村のお願いを聞いてくれないかな!?」


「……話を聞こう」


真剣な眼差し。

ここで少女の必死の訴えを無視して行っていいものだろうか。

もちろん俺はアリス王女から受けた任務を優先する必要はあるが、人の良心を無視することは出来ない。


その後、少女と少年2人の了承を得て、少年少女らの村へ行くことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ