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第61話 大会前夜


ボルティスドラゴンと遭遇してから4日後、俺たちはギルドのサル-フにいた。


この4日間、サル-フで引き受けた魔物討伐案件をこなし、フィールドで出くわした魔物も数多く討伐した。

最初の二日間は俺とメア、セシルの3人で魔物討伐依頼をこなして、残りの二日間に関しては俺は単独で、メアはセシルと行動を共にした。

この間に俺は勇者ランク7となって、メアは勇者ランク6になる。


そして気になるラフマの剣だが、試しにラフマの剣が3段階目の状態で、死なないであろう+1の撃技を乗せた技を魔物に放った。

反動は明らかに撃技を乗せた分と3段階目のエネルギーが溜まった分が俺に返って来た。

致命傷というほどではなかったが、直ぐに持って来ていたエリクサーで回復した。

さらにもう一つ、3段階目の状態で+1の撃技を乗せた斬撃を巨木に放ったが何の反動も来なかった。

これは大会に出る為の実験だった。

実際に大会で相手にする人間にはどうなるのか、それは正直ぶっつけ本番しかない。

メアかセシルを相手にできるはずもなかった。


そして現時点での俺のステータスはこうだ。


ATK.128

DEF.96

AGL.143


これに加え、技を発動すれば大きく上昇することになる。


メアのステータスの状態は俺より低いが、それを補えるだけのスキルがある。

具現化される氷を自由自在に操る様は芸術。

ただ、無論たんなる芸術ではなく魔物に有効打を与える。

一部、炎属性を持つ魔物には弱点となってしまうが、それもレベルの差があれば属性を超えた攻撃性を持つスキル。

加えて俺やセシルでは出来ない遠距離攻撃を可能としている。


そしてセシルだが、スキルこそ持ち合わせていないが格闘技が全てにおいて強力だ。

的確に魔物を弱らせていく打撃技は、獣人族ならではとも言える。


俺たちは今、魔物の討伐案件を受けて来てサル-フにあるテ-ブル席で休んでいるところ。


「そんなに強いのに捕まったなんて闇の商人もやることが酷いわ」


セシルが捕まってしまった経緯を聞いてメアがそう言った。


「金儲けの為ならなんだってするさ、奴らはな」


セシルが捕まってしまったのは、鼻の効く相手に有効な昏睡草を使われたからだった。

昏睡草は獣人でなくともひと嗅ぎでもすれば瞬く間に眠ってしまうというのに。

国でも魔石配合ポーションと同じく使用を禁止するほどのもの。

そこら中に生えているわけでもなく、人間が近寄れない場所にあると聞く。

闇の商人ならば、いろんなつてがあるのだろう。


「もう油断しない!」


そう言ってくれるのはいいのだが、闇の商人はいつ何処から狙ってくるか分からない。

今は俺たちが側にいるから大丈夫だとしても、大人の獣人より高く売れる子供の獣人は狙われやすいと聞く。

大人の獣人は警戒心がとても強く、子供の獣人はまだそれほど持ち合わせていない。

それは経験的に知っていくもので、セシルはまだ子供の獣人。


「セシルは強いけど、本当に危ないと感じたらいつでも私やシンを頼るのよ」


「うん!」


そう素直に聞き受けてくれるだけで、俺としても助かる。

自分の力を過信し、高レベルの魔物に挑み負け戦になった勇者は多い。

それよりも現時点での自分の力を潔く認めて、素直に引くことの出来る者の方がずっと賢く、それ以降の成長に雲泥の差が出る。



その日の夜は宿屋の1階で食事をし、俺1人でセンヴェントと話をしていた。


「シーラの王女は、またとんでもないことをシン坊に頼みよったな」


「断れる場面じゃなかったからな」


センヴェントに旅の目的を話した。


「シン坊、これだけは言うておくが、魔王の城の秘宝を盗むということは世界を滅ぼす力を持っている魔王と対峙することを意味するんじゃぞ? 魔王の城にあるなら、間違いなく魔王自身か近くに置いておくじゃろう」


「分かってる。だから俺はこうして旅をしながら勇者ランクを上げて技を磨き、任務を果たせるように努力しているんだ」


乗った船だ、出来ることは全てしておく。

勇者ランクを上げたり、技を磨くのは当たり前のこと。


「シン坊、お主も長く勇者をしているから分かっておるじゃろうが、魔王とはすなわち闇の王。その闇の力で過去、一度世界が滅びかけたことで、我々人類が出来る最善の策は現状の維持しかないんじゃ。何故、魔王が大きく動き出さないのか……儂には不思議でならんわい」


確かに魔王自身が地上に降りた話は聞かない。

それでも俺の生まれていない時代に一度世界が滅びかけたことは多くの人々が知っている事実。

魔王の力というものはそれほど強大で、それが魔物の親玉たる所以だとも言われている。

魔物を討伐する勇者の多くも戦死し、魔物戦争よりも大きかった戦だったらしい。


だが、それでも世界が滅びずに済んだのは宝剣ーー神剣となった武器を持つ勇者の活躍があったからだと言われている。


「ーーセンヴェント、また話そう」


「ああ、いつでも来い」


その後、部屋で待つメアたちの元に戻った。





「セシルってば力強い!」


「メアには負けない!」


部屋に戻ると、メアとセシルは呑気に腕相撲をしていた。

俺が入って来たことにも気付かずに夢中でしている。


「あ、シン戻ったのね。どう? 何か話は聞けた?」


「まずまず、だな」


センヴェントなら魔王の城に眠る秘宝が何か知っているかと話してみたが、やはり知らなかった。

実際に魔王の城に行ってこの目で確かめる。それしかないようだ。


セシルはメアに「もう一回やる!」と言って腕を回す。

メアは渋々といった様子でセシルの相手をしているが、あっけなく負けている。


「私じゃあセシルには勝てないよ! そうだ! シンやってみてよ!」


「俺が?」


「やるやる!」


ふんっと鼻息を鳴らすセシル。

獣人と腕相撲か。まあこれもセシルの力を見る為だな。

そう思ってセシルと手を交わらすとググッと引っ張る力はなかなか強い。

これではメアは勝てないだろう。能力や技ではメアが優っていても、地のステータスはセシルも高い。


「はじめっ!」


そうメアが合図を出した瞬間、互いに力が入る。


強いな。この短い4日の間に随分と成長したようだ。

セシルが俺の目を力強く見て腕を倒そうとしてくる。

だが、俺にはそれを見て感じ取るだけの余裕がまだまだあった。

グッと力を入れてセシルの腕を倒す。


「ああっ! 負けた! シン、やっぱり強い……」


「セシルも十分過ぎるくらい強いよ」


もしもセシルが撃技を発動して入れば俺は負けていたかもしれない。

撃技はこういったことにも使える。

要するに、身体を使ったエネルギーを加算させる。


その後、明日のテクニック・ザ・トーナメントのこと、それが終れば次の旅に出かけることを話して、メアとセシルは隣の部屋に戻った。


俺は今日討伐した魔物の特徴などを黒の紙で確認して、明日開かれるテクニック・ザ・トーナメントの優勝賞品が手元に戻ることを強く思って、間も無く眠りに就いた。


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